CpGアイランド(英語: CpG island)とは、シトシンの次にグアニンが現れるタイプの2塩基配列(ジヌクレオチド)であるCpGサイトの出現頻度が、ゲノム中で他と比べ高い領域のことである。CpGの “p” の文字は、シトシンとグアニンの間のホスホジエステル結合を表している。哺乳類の遺伝子のうち40%近く[1]が、プロモーター内部もしくはその近傍にCpGアイランドを含んでいるとされる(ヒトの遺伝子のプロモーターでは約70%)。
定義
「少なくとも200塩基対の長さを持ち、GC含量が50%以上で、存在するCpGの割合がGC含量から期待される量の60%以上 (CpG observed/expected > 0.6)」[2]という定義がよく用いられる。しかし、ゲノム中には長さ約300塩基のAlu配列など、他にもGC含量が高い配列が存在する。これらを除外できるように、「少なくとも500塩基対の長さを持ち、GC含量が55%以上、CpG observed/expected > 0.65」という新しい定義が提唱されている[3]。
その他の性質
CpGアイランドでは、CpGジヌクレオチドの出現頻度が確率的に期待できる6%(16分の1)と同じか、それよりも多い。CpGアイランド以外では、CGサプレッション(抑制)のためCpG出現頻度は1%以下となっている。
CpGアイランドの長さはおよそ300から3000塩基対である。遺伝子コード領域のCpG配列とは異なり、CpGアイランドのCpG配列は遺伝子発現中はメチル化されていない。この事実によって、プロモーター領域のCpG配列のメチル化は遺伝子発現を抑制することが分かった[4]。
遺伝子は、一部の組織に特異的に発現する遺伝子と、多くの組織で発現するハウスキーピング遺伝子に分けることができる。プロモーター領域にCpGアイランドを持つ遺伝子の多くは、後者のハウスキーピング遺伝子により偏っている[5]ことが知られている。
脚注
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Fatemi, M; Pao, MM, Jeong, S, Gal-Yam, EN, Egger, G, Weisenberger, DJ, Jones, PA. (November 2005). “Footprinting of mammalian promoters: use of a CpG DNA methyltransferase revealing nucleosome positions at a single molecule level”. Nucleic Acids Res 33 (20). PMID 16314307. http://www.pubmedcentral.gov/articlerender.fcgi?tool=pubmed&pubmedid=16314307.
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Gardiner-Garden M, Frommer M (July 1987). “CpG islands in vertebrate genomes”. Journal of molecular biology 196 (2): 261–82. PMID 3656447. http://www.pubmedcentral.gov/articlerender.fcgi?tool=pubmed&pubmedid=3656447.
- ^ Takai D, Jones PA (2002). “Comprehensive analysis of CpG islands in human chromosomes 21 and 22.”. Proc Natl Acad Sci USA 99 (6): 3740–5. doi:10.1073/pnas.052410099. PMC 122594. PMID 11891299. http://www.pnas.org/cgi/content/full/99/6/3740.
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佐々木裕之 (2005). エピジェネティクス入門. 山口昭男. p. 31-33. ISBN 4-00-007441-5
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Saxonov, S; Berg, P, Brutlag, DL. (January 2006). “A genome-wide analysis of CpG dinucleotides in the human genome distinguishes two distinct classes of promoters”. PNAS 103 (5). PMID 16432200. http://www.pubmedcentral.gov/articlerender.fcgi?tool=pubmed&pubmedid=16432200.
関連項目
外部リンク