2023年のマラソングランドチャンピオンシップは2023年10月15日に2024年パリオリンピックマラソン日本代表選考会として開催された[1][2]、2回目のマラソングランドチャンピオンシップ(Marathon Grand Championship、略称:MGC)。
概要
2019年9月15日に2020年東京オリンピックマラソン日本代表選考会として開催された2019年大会が好評を博したことを受け、翌大会のパリオリンピックの代表選考においても同様の手法を採ることになったもので、2021年11月10日に大会の開催と指定競技会(MGCチャレンジ)が公表された[1]。
本大会は第107回日本陸上競技選手権大会を兼ね2023年10月15日に国立競技場を発着とするコースで開催された。東京レガシーハーフマラソンと同日に開催される[2]。
また、今大会では新たに賞金が設定された。優勝者には1000万円、2位に500万円、3位に250万円が与えられる[3]。
大会要項
出典:[4]
コース
2023年2月9日発表。前年開催された東京レガシーハーフマラソンのコースに、上野広小路 - 内幸町間約10kmの周回区間を加えたものとなっている。折り返し地点が6ヶ所設けられたほか、終盤5kmが上り坂となる。日本陸連強化委員会シニアディレクターの高岡寿成は「強い選手を派遣するためにもタフなコースで勝負を重視したレースになる」と話した[5]。
- 国立競技場発着マラソンコース
- 国立競技場 → (外苑西通り) → 富久町西交差点 → (靖国通り・外堀通り) → 飯田橋交差点 → 水道橋交差点 → (白山通り) → 神保町交差点 → (靖国通り) → 小川町 → 須田町交差点 → (中央通り) → 上野広小路《第一折り返し》 → 須田町 → (中央通り) → 日本橋 → 銀座四丁目交差点 → (晴海通り) → 日比谷交差点 → (日比谷通り) → 内幸町《第二折り返し》 → 須田町 → (靖国通り) → 小川町《第三折り返し》 → 須田町交差点 → 上野広小路《第四折り返し》 → 須田町交差点 → 内幸町《第五折り返し》 → 須田町交差点 → (靖国通り) → 神保町交差点 → (白山通り) → 平川門交差点 → (内堀通り) → 大手門《第六折り返し》 → 神保町 → 水道橋 → 飯田橋 → 富久町西 → 国立競技場
選考過程
前回大会同様、指定競技会(MGCチャレンジ)においてタイムと順位をクリアした選手がMGC本大会出場権を得る。また、MGCチャレンジ以外の競技会を対象としたワイルドカードのシステムも導入されている(但し、前回大会から基準が変更されている)。
MGCチャレンジ対象レース
2021年から本格スタートするジャパンマラソンチャンピオンシップシリーズ (JMCシリーズ) の第1期(2021-22年)、第2期(2022-23年)加盟のG1・G2レースが対象とされた[6][7]。
このレースで以下のいずれかの条件を満たすとMGCに進出する[7]。
- 日本人上位3位以内(G2は日本人トップ)かつ男子2時間10分00秒・女子2時間28分00秒以内
- 日本人上位6位以内かつ男子2時間09分00秒・女子2時間27分00秒以内
ただし、夏に開催される北海道マラソンは以下の条件となる。
- 日本人上位3位以内かつ男子2時間14分00秒・女子2時間32分00秒以内
- 日本人上位6位以内かつ男子2時間12分00秒・女子2時間30分00秒以内
MGCチャレンジ対象レース(女子)
JMC |
グレード |
大会 |
開催日
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第1期
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G1
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第41回大阪国際女子マラソン大会 |
2022年1月30日
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東京マラソン2021 |
2022年3月6日
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名古屋ウィメンズマラソン2022 |
2022年3月13日
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G2
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第10回大阪マラソン・第77回びわ湖毎日マラソン統合大会 |
2022年2月27日
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第2期
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G1
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北海道マラソン2022 |
2022年8月28日
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第42回大阪国際女子マラソン大会 |
2023年1月29日
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東京マラソン2023 |
2023年3月5日
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名古屋ウィメンズマラソン2023 |
2023年3月12日
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G2
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大阪マラソン2023 |
2023年2月26日
|
ワイルドカード
以下の条件を満たすと、ワイルドカードとして出場が可能となる[7]。
- 2022年開催の国際陸上競技大会での上位入賞[注釈 1]
- 2021年11月1日から2023年5月31日までのJMC加盟大会(G1・G2・G3[注釈 2])又はワールドアスレティックス(世界陸連、WA)ラベル大会のエリートラベル以上の大会[注釈 3]で以下の指定タイムをクリア
- 男子は2時間08分00秒以内、女子は2時間24分00秒以内を記録
- 出場2大会の平均タイムが男子は2時間10分00秒以内、女子は2時間28分00秒以内を記録
- 男女それぞれ各期のJMCランキングで上位8名(第1期と第2期で同一人物がランクインしても重複繰り上げは行わない)
MGC出場権獲得者
番号はMGCのエントリーナンバーで、多くの大会で採用されている記録順(持ちタイム順)ではなく出場権獲得順に付される[9]。記録が2つ記されている者はワイルドカードでの出場権獲得。
レース概要
前日までの秋晴れから一転して、気温は14.5℃と低く、強い雨が降りしきる悪条件の中でのレースとなった[16]。
男子
日本マラソン界の「底上げ」もあって、参加者が61名と倍増した今大会[17]、スタート直後から自身130回目のマラソンとなる川内優輝が先頭に立つと、2位集団を徐々に引き離していく。その一方で、有力候補と見られていた日本記録保持者の鈴木健吾が11.9kmで、ブダペスト世界陸上代表の其田健也が14.4kmで途中棄権[18][19]。同じくブダペスト世界陸上代表の山下一貴は22km手前で、オレゴン世界陸上代表の西山雄介も25kmで集団から脱落[20]。さらにMGC出場権獲得第1号でダークホースとも目された細谷恭平が27.9km地点で転倒し途中棄権する[21]など、レースはサバイバルの様相を呈した。
川内は25km通過時点で後続との差を41秒まで広げ、独走態勢を築く[22]。一方の2位集団は29kmで大迫傑がペースを上げると集団がばらけはじめ、30km地点で28人いた集団は35km地点で6人まで絞られた。25km以降ペースの鈍った川内に対し、堀尾謙介が引っ張る2位集団が徐々にその差を縮めていき、ついに35.2kmで川内を捉え、川内・大迫・堀尾・赤﨑暁・小山直城・井上大仁・作田直也の7名で先頭集団を形成する[23]。
残り4kmを切って小山がペースを上げると、大迫・赤﨑・川内の3人が追走するものの、小山は3人を振り切って独走。そのまま国立競技場のゴールテープを切り優勝を果たした。2位争いは40kmの上りで赤﨑が抜け出し、大迫・川内の実力者2人を振り切りパリ五輪の出場内定を決めた[20]。大迫は前回大会に続いてまたも2位と5秒差の3位で涙を呑んだ[24]。川内は序盤の大逃げから追いつかれるも粘って4位入賞[25]。悪条件にもかかわらず上位8人がサブテンを達成する高速レースとなった。
女子
男子から10分遅れてスタートした女子は、1kmを過ぎて集団が2つに分かれると、前回のMGCを制した前田穂南が15人の先頭集団を引っ張る展開となる。その後はほとんど隊列が変わらないまま15kmまで進むが、第2集団から追い上げてきた松下菜摘が17.5kmで先頭に立つとペースが上がりはじめ、さらに23.2kmで一山麻緒がスパート。ただ一人反応した細田あいとともに後続を突き放す[26]。3位争いは27kmで鈴木亜由子が脱落、松下も27.6kmの内幸町折り返し点で転倒し後退。前田穂南も29.3kmで遅れ、加世田梨花と鈴木優花という出場選手中最年少の2人に絞られた[27]。
先頭争いと3位争いの差は30km地点で10秒まで開いたものの、33km地点では3秒まで接近。再び4人の集団になるかと思われたが、33.3kmで一山が再びスパートし単独先頭に立つ。2位争いは鈴木が加世田を引き連れながら36.4kmで細田を逆転。さらに鈴木は程なくして加世田を振り切ると、38.4kmで一山に追いつき、39kmで一気に突き放した。
終盤のアップダウンも力強い走りで駆け抜けた鈴木優花は、自己記録を53秒上回るタイムで優勝。3回目のマラソンでパリ五輪の出場を内定させた[28]。2位争いは終盤失速した一山に対し、37.9kmで加世田を再逆転した細田が猛追を見せたものの、一山が7秒差で逃げ切りパリ五輪の出場内定を決めた[27]。
結果
男子
女子
中継
テレビ・ラジオ放送
- テレビでは、男子のレースをTBSテレビ系列、女子のレースをNHK総合テレビで生中継。男女ともレース中継点の一部でテレビカメラや中継車をTBSテレビとNHKが共同で運用している関係で、レース中には、相互のレース映像を用いた中継を各局独自の実況とタイミングで挿入している。
- NHKでは、メインチャンネルでの中継と並行しながら、サブチャンネル(副音声)で実況トーク企画を独自に放送。
- ラジオでは、TBSラジオが関東ローカル放送で男子のレース、NHKラジオ第一が全国放送で女子のレースを中継。
テレビ
男子
女子
- 放送時間:7:45 - 11:00
- 解説
- 実況(NHKアナウンサー)
- スタート地点リポート:宮本真智(NHKアナウンサー)
- スタート・フィニッシュ地点リポート:小林祐梨子(2008年北京オリンピック5000m日本代表)
- 副音声
- ゲスト:増田明美、藤川球児(NHK野球解説者)、小林祐梨子
- 進行(NHKアナウンサー):冨坂和男、宮本真智
- 小林はメインチャンネルでのリポートの合間、宮本はスタート地点からのリポート後に出演。
ラジオ
男子
女子
- 放送時間:8:00 - 10:54
- 解説:金哲彦(プロランニングコーチ)
- 実況:三輪洋雄(NHKアナウンサー)
インターネットでの配信
- 男子のレースについては、TBSテレビ系列での中継動画をTVerを通じてリアルタイムで配信。U-NEXT内の「Paraviコーナー」では、伊藤隆佑(TBSテレビアナウンサー)の独自実況による中継動画をマルチチャンネル方式で配信(見逃し配信対応)。また、TBSラジオの中継を、関東地方以外にもradikoプレミアムのエリアフリー/タイムフリー聴取サービスを通じて配信。
- 女子のレースについては、NHK総合テレビでの中継動画をNHKプラスを通じてリアルタイムで配信(見逃し配信対応)。また、NHKラジオでの中継をNHKネットラジオ らじる★らじるで配信(聞き逃し配信対応)。
MGCファイナルチャレンジ
2023年6月7日発表。男子は3大会、女子は2大会が対象となった。MGCファイナルチャレンジ設定記録をクリアした最上位が代表に内定する。クリアした者がいない場合はMGC3位の選手が内定となる[35][36]。
MGCファイナルチャレンジ設定記録
- 男子:2時間05分50秒
- 女子:2時間21分41秒
JMCシリーズ第2期(2022年4月~2023年3月)の最高記録(男子:2時間05分51秒、女子:2時間21分42秒)が基準となっている。なお、MGCファイナルチャレンジ対象大会は女子単独レースとなるため、女子の設定記録は女子単独レースの記録を基準としている。
MGCファイナルチャレンジ(男子)
設定大会
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開催日
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有資格者最上位
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タイム
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備考
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福岡国際マラソン2023
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2023年12月3日
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細谷恭平(4位)
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2時間07分23秒
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派遣設定記録に届かず[37]
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大阪マラソン2024
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2024年2月25日
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吉田祐也(4位)[注釈 19]
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2時間06分37秒
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派遣設定記録に届かず[38]
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東京マラソン2024
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2024年3月3日
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西山雄介(9位)
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2時間06分31秒
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派遣設定記録に届かず
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- 派遣設定記録を誰もクリアできなかったため、大迫傑(MGC 3位)がパリオリンピック代表に内定した。
MGCファイナルチャレンジ(女子)
設定大会
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開催日
|
有資格者最上位
|
タイム
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備考
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第43回大阪国際女子マラソン大会
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2024年1月28日
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前田穂南(2位)
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2時間18分59秒
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派遣設定記録をクリア 日本新記録
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名古屋ウィメンズマラソン2024
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2024年3月10日
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安藤友香(1位)
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2時間21分18秒
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派遣設定記録をクリア
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- 派遣設定記録をクリアした選手で最も速いタイムを出した前田(MGC 7位)が東京オリンピック代表に内定した。
備考
MGC出場権獲得者のほとんどが実業団所属であるが、大会後に全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)と全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝)の予選会が開催されるため、チーム及び選手への負担が懸念されていた。それを受けて日本実業団陸上競技連合はMGC出場資格を持つ選手が所属するチームは当該選手の出走有無を問わず予選会を完走することで本大会の出場権を得られる特例を設けることになった[39]。
脚注
注釈
- ^ 杭州アジア大会で3位入賞も対象となったが、2023年に延期されたため対象から外れた。
- ^ G3グレードは第2期(2022-23年シーズン)から導入。女子の防府読売マラソン、男子の延岡西日本マラソン、男女のとくしまマラソンが該当。
- ^ 日本国内で開催される大会でJMC非加盟かつWAエリートラベルの大会として神戸マラソンがある[8]。
- ^ 2022年9月1日に移籍。
- ^ 2023年4月1日より所属。
- ^ 2022年10月1日よりチーム名変更。
- ^ 2023年4月1日に移籍。
- ^ 2023年4月1日に移籍。
- ^ 2023年4月21日に移籍。
- ^ 2023年4月1日より所属。
- ^ 当時の所属は東京陸協。
- ^ 当時の所属はトヨタ自動車。
- ^ 2022年4月に移籍。
- ^ 2022年4月1日に移籍[13]。
- ^ 2022年4月1日より所属。
- ^ 2022年10月1日より所属。
- ^ 出場権獲得時の登録名は西田美咲(旧姓)。
- ^ 同じく杭州アジア大会マラソン代表に選出された和久はエントリーしている。
- ^ 優勝した平林清澄(國學院大學)は初マラソンであるため、MGCファイナルチャレンジ参加資格を有しない。日本人2位は既にパリ五輪出場権を獲得している小山直城(Honda)。
出典
外部リンク