落下傘連隊のトレードマークである赤いベレー帽を被り、ロンドン市長就任パレードで行進する空挺兵士(2006年)
イギリス陸軍落下傘連隊 (イギリスりくぐんらっかさんれんたい、英語 : Parachute Regiment )は、イギリス陸軍 第16空中強襲旅団戦闘団 隷下の空挺 部隊。パラシュート連隊 と表記することもある。
イギリス軍 の精鋭とされる空挺連隊 であり、特殊作戦 の補助を行う1個大隊 と、通常の空挺部隊である2個大隊、予備役 1個大隊によって構成されている。第二次世界大戦 、北アイルランド問題 、シエラレオネ内戦 、イラク戦争 とイギリスが関与した戦争の多くに参加した。
歴史
第二次世界大戦
ノリッジ にて訓練を行う落下傘連隊の兵士(1941年)
創設
1940年頃にドイツ国防軍 降下猟兵 の成功を受け、ウィンストン・チャーチル 首相 の命令によって5,000人の空挺兵が編成された[ 1] 。そうして創設された第2コマンドー部隊 は、イタリアのコロッサス作戦に参加した後、第11特殊空挺大隊(11th SAS Battalion)と改称され、最終的に第1空挺大隊に再編された。第1空挺大隊は第1空挺旅団の隷下に置かれ、同旅団には第2空挺大隊、第3空挺大隊が所属していた。
1942年には第2空挺旅団が設立され、義勇兵による第4空挺大隊のほか、第6クィーンズオウン・キャメロン・ハイランダーズ出身の第5空挺大隊、第10ウェールズ・フュージリア連隊出身の第6空挺大隊が所属した。これらの拡大により、イギリス軍には最終的に17大隊編成の空挺部隊[ 1] が存在するようになった。
また、イギリス領インド帝国 には、第50インド人落下傘旅団[ 注 1] が設立された。同旅団は第151空挺大隊(イギリス兵)[ 注 2] 、第152空挺大隊(インド兵)、第153空挺大隊(グルカ兵 )により構成されていた[ 2]
。
参戦
1942年 2月のビッティング作戦で落下傘連隊として初めて実戦に参加。同年11月 にはモロッコ 、アルジェリア に派遣。1943年 にはチュニジア 戦線やイタリア でのスラップスティック作戦 、1944年 ではフランス でのトンガ作戦 に参加するなど、数々の重要な作戦で戦った。
また、この頃から暗い赤色 のベレー帽を着用しており、「赤い悪魔(the Red Devils)」というニックネームが付けられた[ 注 3] 。
冷戦時
アデンでの任務に参加する落下傘連隊(1956年)
植民地紛争
大戦終結後の1945年 、落下傘連隊は第16落下傘旅団に編入される。その後は植民地 解放紛争に次々と直面し、パレスチナ ではユダヤ人 の極右レジスタンス 「レヒ 」と交戦し、1951年 には第二次中東戦争 に投入された。その他、1960年代 にはイエメン でのアデン危機 や、マレーシア ・インドネシア 間紛争に投入された。
北アイルランド問題
1970年代 、落下傘連隊は北アイルランド にてIRA暫定派 とのゲリラ戦に直面した。1972年 、第1大隊はロンドンデリー で発生したデモを鎮圧する任務に従じたが、その際発生した混乱から大隊は群衆を銃撃し、アイルランド系住民14人を射殺してしまう結果となった(血の日曜日事件 )。
さらに1972年の2月、血の日曜日事件の報復としてアルダーショット に存在した落下傘連隊の拠点がIRA暫定派に爆破され、拠点にいた一般人7人が死亡[ 3] 。また1979年にはワーレンポイントにて、第2大隊が他のイギリス兵らと共にIRA暫定派に奇襲され、隊員6人が死亡した[ 注 4] 。
フォークランド紛争
1982年 にはフォークランド紛争 に投入。グース・グリーンやワイヤレス・リッジでの戦いに参加した。特にグース・グリーンではアルゼンチン軍 との激しい攻防の果てに第2大隊のハーバート・ジョーンズ中佐ら18人が戦死した(ジョーンズ中佐は死後、ヴィクトリア十字章 を受勲)。
冷戦終結後
コソボ紛争
イラクで活動している落下傘連隊第3大隊の兵士
1999年にはコソボ紛争 にて他のNATO 諸国の部隊と共にコソボ軍の支援を行った。落下傘連隊はマケドニア に拠点を置き、プリシュティナ にて紛争状態の鎮圧に当たった。
シエラレオネ内戦
2000年、シエラレオネ におけるイギリス軍の軍事介入に参加。ルンギ国際空港 を拠点にし、同年6月には落下傘連隊のパスファインダー小隊がRUF と交戦し、これを退けた。さらに同年10月、あるゲリラのグループがイギリス軍パトロール部隊の兵士を拉致して人質に取ったことから、第1大隊が陸軍特殊部隊SAS と共に投入され、人質救出を成功に導いた(シエラレオネ人質救出作戦 )。
イラク・アフガニスタン戦争
2003年にはイラク戦争 に送られ、6月24日にAl-Majarで発生した戦闘に従事したゴードン・ロバートソン軍曹が、コンスピキュアス・ギャラントリー・クロス を受勲した[ 4] 。
2006年にはアフガニスタン紛争 でも戦い、8月の戦闘で死亡したブライアン・バッド伍長がヴィクトリア十字章 を受勲[ 5] 。同じ戦闘で死亡したマーク・ライト伍長がジョージ・クロス を受勲した。
編制
特殊部隊 の支援を任務とする。現在は特殊部隊支援群 の一部となっている。
空挺歩兵大隊。
空挺歩兵大隊。
予備役空挺大隊。
パスファインダー小隊(Pathfinder Platoon )
落下傘連隊の兵士より選抜され、連隊の一部として見ることもできるが、正確には第16空中強襲旅団戦闘団隷下の独立部隊という扱いであり、落下傘部隊の着陸地帯の確保及び周辺地帯の偵察を任務とする[ 6] 。小隊 は特殊部隊と同様の専門性と隠密性を持ち、隊員は過酷な環境における生存術、パトロール、爆破の訓練を受けている。
脚注
注釈
^ インド独立後はインド陸軍 第50落下傘旅団 (英語版 ) に再編
^ 後にイギリス軍第156空挺大隊に再編
^ ドイツ軍降下猟兵が「緑の悪魔」よ呼ばれていたことに対抗したもの
^ イギリス陸軍全体では18人が死亡
出典
参考文献
ヒュー・マクマナーズ 著、村上 和久 訳『特殊部隊』朝日新聞出版、2005年。ISBN 4022500344 。
Guard, Julie (2007). Airborne: World War II Paratroopers in Combat . Oxford, England: Osprey Publishing. ISBN 1-84603-196-6
Harnden, Toby (1999). Bandit Country . London, England: Hodder & Stoughton. ISBN 0-340-71736-X
外部リンク