級化層理

神奈川県三浦市で見られた級化層理

級化層理(きゅうかそうり、英語: graded bedding)は単層[注釈 1]内において、砕屑物が下位から上位に向かって細粒化する構造のことで、堆積構造の一種である[1]:136級化構造とも呼称されることがある[2]:101

正級化と逆級化

流水中において堆積する粒径の垂直的な変化のことを、総称して級化: grading)と呼ばれる。その中において下位から上位にかけて粒径がより小さくなることを「正級化」(: normal grading)といい、反対に下位から上位にかけて粒径がより大きくなることを「逆級化」(: inverse gradingもしくは: reverse grading)と呼ぶ。また、このような変化が見られない状態のことを「非級化」(: non-grading)もしくは「塊状」(: massive)という[2]:101-102

形成と活用

級化層理は周期的に繰り返される堆積イベントによって形成される。これによって形成されるそれぞれの層理の大きさは1ミリメートルから数メートルまで幅広い[3]

タービダイト混濁流の研究においては級化層理が活用される。例えばBouma (1962)においてのバウマシーケンスなどの設定において、A区分においては級化層理が存在することがその設定条件の一つになっている。また、保柳, 公文 & 松田 (2004)によれば混濁流によって形成された地層はバウマシーケンスと級化層理が特徴であるとしている。しかし、同時に堆積物の粒径がもともと揃っている場合や、バウマシーケンスのA区分のみで形成されるような急激に堆積した地層の場合においては不明瞭であるともしている[2]:127-128

研究史

years to realize that graded bedding and currentbedding are the distinguishing marks of twodifferent sandstone facies, the one facies as im-portant as the other. — エドワード・ベイリーOkada2004[注釈 2]

エドワード・ベイリーは、Bailey (1910)Bailey (1936)において級化層理と斜交葉理などの堆積構造に注目し、地層の上下判定に有効であることと、斜交葉理と級化層理は同時に存在しないことから堆積環境英語版の解析に有効であるとした。フィリップ・ヘンリー・キューネンは、ベイリーがBailey (1930)において唱えた級化層理の原理に興味を抱き、実験的に密度流混濁流の存在を明らかにした[4]:55

脚注

注釈

  1. ^ 層理面で区切られた地層のこと[1]:136
  2. ^ Bailey (1930)からの引用。

出典

  1. ^ a b 天野一男、秋山雅彦 著、日本地質学会フィールドジオロジー刊行委員会 編『フィールドジオロジー入門』 1巻、共立出版〈フィールドジオロジー〉、2004年。ISBN 978-4-320-04681-8NCID BA66873107OCLC 61181118OL 30402958M 国立国会図書館書誌ID:000007329920 全国書誌番号:20585031 
  2. ^ a b c 保柳康一、公文富士夫、松田博貴 著、日本地質学会フィールドジオロジー刊行委員会 編『堆積物と堆積岩』 3巻、共立出版、東京〈フィールドジオロジー〉、2004年4月。ISBN 978-4-320-04683-2NCID BA66873242OCLC 676428748OL 30536648M 国立国会図書館書誌ID:000007329924 全国書誌番号:20585030 
  3. ^ Dennis, John G. (1987-08-01). Structural Geology. William C Brown Pub. ISBN 978-0-697-00133-7. LCCN 86-71296. OCLC 848779401. OL 2746133M 
  4. ^ 岡田博友「堆積学を拓いた人々 (7):級化層理から混濁流学説への発展」『堆積学研究』第59巻、2004年、55-61頁、doi:10.4096/jssj1995.59.55ISSN 1882-9457NAID 40006422473国立国会図書館書誌ID:70905832020年12月26日閲覧 

関連文献

関連項目

  • 地層
  • 層理 - en:Bed (geology)も参照。
  • 葉理 - 堆積学などにおいて地層を扱う際の単位の一つ。
    • 斜交葉理 - : cross-bedding。規模によっては斜交層理とも呼ばれる、層理面と斜めに交わっている構造。
  • 覆瓦構造 - : imbrication。流水などによって形成される構造。
  • タービダイト - 海底において混濁流により形成された堆積物の総称。
  • 底痕 - : sole mark。泥岩上に形成された溝などを、その上位にあたる砂岩層などが、それに合わせて形成されることによって作られる模様のこと。
    • 荷重痕
      • 火炎構造 - 凝固していない細粒層の上に粒径の大きい砂岩などが堆積した場合などに形成される、下位の層を形成する粒子が上位層に食い込む堆積構造のこと。
  • 漣痕 - 流水などによって形成された波状の構造のこと。
  • 河川作用 - 河川によって行われる地質作用の総称。
    • 堆積作用 - 流水などから粒子などが沈殿するする作用のこと。

外部リンク