第一屋製パン株式会社 (だいいちやせいパン)は、東京都 小平市 に本社を置く製パン 会社。一般には商標 の「第一パン (ロゴ 上では『㐧一パン[ 注 1] 』)」で知られる。
概要
製パン業 界では山崎製パン 、フジパン 、敷島製パン に次ぎ、2022年 -2023年 度の売上高は第4位である[ 1] 。
ただし、2023年 度売上首位である山崎製パンの売上高が1兆1,755億62百万円[ 2] 、3位の敷島製パンの売上高が1,617億4百万円なのに対し[ 3] 、第一屋製パンの売上高は264億42百万円[ 4] と、上位三社とは大きな差がある。豊田通商 グループ会社[ 5] 。
主力商圏 は競争の激しい関東 ・関西 が中心であるが、北は北関東 ・新潟県 から西は中国・四国地方 まで商圏がある。沖縄県 那覇市 にも「第一パン」は存在するが[ 6] 、こちらの「第一パン」の正式名称は「株式会社第一パン」であり、関連性は特にない。
連結売上高 に占める比率は2017年 (平成29年)現在、パン 部門(菓子パン 含む)75.5%、和菓子 部門13.6%、その他部門10.9%[ 7] 。かつては米飯事業にも手を出していたが、現在は撤退している。なお、2023年 (令和5年)の販売実績は、パン 部門73.9%、和洋菓子部門16.7%、その他部門8.7%、不動産事業0.6%となっている[ 8] 。
子会社は主にクッキー などを生産するスリースター製菓[ 9] 、もともとは第一屋製パンの物流・ルート配送部門であったファースト・ロジスティックスなどがある[ 10] 。2007年 (平成19年)までは米飯・調理パン部門であるフレッシュハウスという子会社が存在していたが、当部門の業績悪化のためにカネ美食品 などに譲渡・撤退しており[ 11] 、現存しない。冷蔵生地を供給していた子会社のベーカリープチは、後述の横浜工場閉鎖に伴い2022年 12月に事業活動を停止している[ 12] 。
1947年 (昭和22年)6月、京浜電気鉄道(現在の京浜急行電鉄 )雑色駅 前の大田区 仲六郷 にて「第一屋菓子店」創業[ 13] 。新潟県 六日市村 (現在の新潟県長岡市 六日市町)出身の創業者 ・細貝義雄 は、尋常小学校 卒業後の1928年 (昭和3年)からパン職人としてのキャリアを積んでいたが[ 14] 、当時は配給制度 下で自由にパンを製造できる環境になかったこともあり、創業時の「第一屋」はアイスキャンデー店であった[ 13] 。同年9月食糧営団 のパン代位販売店となる[ 13] 。
1948年 (昭和23年)よりパンの委託加工販売を開始し、同年8月合資会社 第一屋設立。1949年 (昭和24年)には東京都指定パン工場となり、配給 パンの製造を開始している[ 15] 。食糧配給公団が解散し、パン販売が自由化された1952年 (昭和27年)には新工場に中種法(ファシー法)[ 16] を導入するなど、当時最先端の製パン技術が用いられていた[ 17] 。
パン食の普及とともに、積極的に大規模工場の増設や国内外で同業他社の買収を行う一方、1955年 (昭和30年)の株式会社化の後も資本金 を継続的に増強し、東証 、大証 へ上場[ 18] 。
業績とともに会社規模を拡大し続け、1966年 (昭和41年)には細貝社長が社団法人 日本パン工業会 の副会長に就任するなど、製パン業大手にまで成長した第一屋製パンであったが、昭和40年代に入り、食品流通・小売の主流が従来の小規模小売店から大手スーパー中心へと大きく様変わりしたことにうまく対応できなかったことに加え[ 19] 、国内パン市場も飽和したかのごとき状況[ 20] になったところに第二次石油危機 が起こり、以後長く続く構造不況型のジリ貧に陥ることになる。
昭和50年代、同じく原価高騰を受け、値上げした山崎製パンとは当時ほぼ同じシェアで並ぶこともあったが、その後、山崎製パンは価格高騰を吸収して利益を出しており、両社の明暗を表している。
1971年 (昭和46年)にはアメリカ・マクドナルド 社、藤田商店 とともに日本マクドナルド の設立時の出資者になり、日本マクドナルドの使用するバンズ を100%提供するなど先見的な取組を行っていたが、日本マクドナルド社から工場のバンズ専用化(工場建屋の分離)を要求されたことをきっかけとして、1973年 (昭和48年)には日本マクドナルド社の持株全部を藤田商店に売却し、関係を絶っている[ 21] 。
創業以来独立を貫いていたが、2009年 (平成21年)12月22日、豊田通商 を引受先とする第三者割当増資 の新株発行 を行うことを発表。翌年から豊田通商の持分法適用会社 となった[ 22] 。
創業者・細貝義雄 の息子の細貝理栄 が2014年 (平成26年)1月1日に会長となって以降、代表取締役社長や取締役は大株主の豊田通商 より招聘していたが、2019年 1月1日より細貝理栄 の息子の細貝正統 が代表取締役社長である。2023年 1月1日付で細貝理栄 は代表権のある会長の座を退いて名誉会長になっている[ 23] 。
製パン会社の中ではキャラクター 商品の先駆者であり、ポケモン、スーパー戦隊シリーズ 、プリキュアシリーズ [ 注 2] など数多く手がけている。
1998年 (平成10年)6月 に発売したポケモンパン シリーズはロングラン・ヒット商品で、看板商品となっている。当初は山崎製パンが手がける予定だったが、1997年 (平成9年)12月 にテレビ東京 にてポケモンのアニメ の放映中にてんかん 事故(ポケモンショック )が起き、それを理由に山崎製パンが撤退したことにより、手がけることになった。
2011年 秋より、『クロスファイト ビーダマン 』の販売権を同社が担当しており、キャラクター商品を発売していた。その後は『メタルファイト ベイブレード ZEROG 』から撤退した山崎製パンに代わり、『ビーストサーガ 』のキャラクター商品から販売権を譲り受けた。これにより、山崎製パンは『ベイブレードバースト 』シリーズからキャラクター商品の販売権を復帰した。
第60期(2001年 (平成13年)1月 - 12月31日)から継続して営業損失を計上するなど、業績は長期間続けて赤字で低迷しており、2007年 (平成19年)には米飯・調理パン 部門から撤退[ 11] 。
その上で2009年 度までに営業所を全て閉鎖し、閉鎖した営業所が担当している配送エリアについては他社との共同配送で対応し、物流コストを削減する予定であった[ 24] (実際に静岡営業所を2007年 (平成19年)3月 に閉鎖して同業他社との共同配送を開始している。)。
2008年 (平成20年)6月 末現在で単体ベースで従業員数が994人と、一般に「大企業 」と呼ばれる従業員数の1000人を割り込み、かなりの規模を縮小している[ 25] 。同年ハワイにある子会社「第一屋ラブスベーカリー・インコーポレイテッド」を現地法人 に譲渡[ 25] 。これにより事業は海外から撤退し、国内のみとなる。
2009年 (平成21年)1月1日 付で仙台工場を白石食品工業 に売却し[ 26] 、東北地方での製造と販売から撤退した(ただし、ポケモンパン については、第一パンからの委託製造〈エリアフランチャイズ〉を受ける形で引き続き製造している[ 注 3] 。このため、第一パンが実施しているポケモンパンのデコキャラシール封入やプレゼントキャンペーンへの応募なども行われている。)。同年6月 、賃借料の削減のため、本社を小平工場の敷地内に移転[ 27] 。
2010年 (平成22年)1月27日 、豊田通商の持分法適用会社 となる[ 22] 。それに伴い生産方式として採用されたDPS(Daiichi-pan Production System。TPS(トヨタ生産方式 )を置き換えたもの)など生産現場のカイゼン の効果もあって、72期(2013年 )に黒字化してから76期(2017年 )までは連続して営業利益を出していた[ 28] 。
しかし、77期(2018年 )以降は一転して81期(2022年 )まで赤字が続き、80期(2021年 )からは継続企業の前提に関する注記 が決算短信 に記載されるに至った[ 29] 。
2022年 (令和4年)12月31日 、生産拠点集約に伴い横浜工場を閉鎖[ 30] 。横浜工場閉鎖に伴い、同地に所在していた子会社のベーカリープチも事業活動を停止している[ 12] 。横浜工場跡地は、工場建屋解体後ヤマダデンキ に事業用定期借地 の形で賃貸し[ 31] 、ヤマダデンキのTecc LIFE SELECT[1] New 横浜本店(鉄骨造4階建て、敷地面積13,754㎡、延床面積29,843㎡[ 32] 。2025年春開業)となる予定である[ 33] 。
横浜工場閉鎖による生産拠点集約化、配送コースの再編、遠方エリアにおける共同配送の推進による配送費の抑制・効率化を進める一方、低採算製品の販売抑制、高採算製品の販売促進等により、売上原価・販管費の大幅な削減を達成したことで、82期(2023年 )になってようやく黒字化に成功[ 34] [ 35] [ 36] 。後述の賃貸用不動産売却による財務改善効果もあって、2023年 12月期決算短信では継続企業の前提に関する注記がなくなっている[ 37] 。
2023年 (令和5年)1月1日 、神奈川県横浜市都筑区に横浜営業所を開設。同日、細貝理栄 代表取締役会長が代表権のない取締役名誉会長になる[ 23] とともに、これまでの本部制を廃止し、細貝正統 代表取締役社長及び小山一郎[ 38] 取締役副社長(豊田通商から出向)[ 39] 直下に各部門が位置する文鎮型に組織変更した[ 40] 。
2024年 (令和6年)5月31日、所有していた賃貸用不動産(松戸市 松飛台)を売却[ 41] 。これにより有利子負債 の大半を返済している[ 42] 。
1996年 (平成8年)12月期を最後に無配 が続いており[ 43] 、2021年 からは株主優待 制度も廃止されている[ 44] 。
年表
1947年 (昭和 22年) - 創業者・細貝義雄が東京都大田区東六郷に第一屋菓子店 開業。創業当時は主にアイスキャンディーを製造・販売。
1948年 (昭和23年) - 合資会社第一屋 設立。
1955年 (昭和30年) - 第一屋製パン株式会社 設立。
1957年 (昭和32年) - 第一屋製パン労働組合が発足。
1958年 (昭和33年) - 長期のアメリカ、ヨーロッパ視察。アメリカでは連続製パンプロセス[ 45] に強い関心をもつ一方、フランスパンそのものはともかくフランスの製造設備には見るべきものが少なく、むしろドイツのパンとケーキに見るべきものがあったという[ 46] 。
1959年 (昭和34年) - 初めてテレビCMを放映。
1962年 (昭和37年) - 東証二部に上場。新横浜製パン工場建設に際し、アメリカ式の連続製パンプロセス導入を断念する。ヨウ素酸カリウム の添加が必須であったにもかかわらず、我が国では許可されていないことが理由だという[ 47] [ 48] 。
1970年 (昭和45年) - 東証一部に指定替え。
1972年 (昭和47年) - 日本タンパク工業(のちのフレッシュハウス)を日商岩井より買収。
1974年 (昭和49年) - 小平工場完成。三鷹工場閉鎖。子会社スリースター製菓株式会社設立。資本金9900万円。
1977年 (昭和52年) - 金町食パン工場完成。
1980年 (昭和55年) - 仙台工場完成。
1981年 (昭和56年) - 米・ハワイ の「ラブスベーカリー」を552万ドルで買収。「第一屋・ラブスベーカリー」(のちの「第一屋ラブスベーカリー・インコーポレイテッド」)設立。
1985年 (昭和60年) - 細貝理栄が2代目社長に就任。創業者の細貝義雄は会長に就任。
1990年 (平成 2年) - 日本タンパク工業で調理パン製造開始。バラエティストア(現:アウトレット・イフ)本社店開店。
1996年 (平成8年) - 従業員100人希望退職。この年より業績低迷。
1998年 (平成10年) - ポケモンパン発売開始。
1999年 (平成11年) - 工場直営店の「バラエティストア」を「アウトレット・イフ」に変更。
2000年 (平成12年) - 本社を大田区南蒲田に移転。本社工場は閉鎖。
2007年 (平成19年) - 米飯 事業撤退のため、大阪工場、松戸工場閉鎖。子会社の株式会社フレッシュハウスを閉鎖。
2009年 (平成21年) - 仙台工場を白石食品工業に譲渡。東北地方から撤退。本社を小平工場の敷地内に移転。
2010年 (平成22年) - 豊田通商に対して第三者割当増資を実施、豊田通商の持分法適用会社となる。
2014年 (平成26年) - 豊田通商より招聘した門脇宜人 が代表取締役社長に就任。細貝理栄 は代表取締役会長に就任(以後2022年 末まで代表取締役会長)。
2016年 (平成28年) - 豊田通商から派遣された前川智範(マッキンゼー 出身[ 49] )が代表取締役社長に就任。
2019年 (平成31年/令和元年) - 1月1日 細貝正統 が代表取締役社長に就任。
2022年 (令和 4年) - 4月 東京証券取引所 の市場区分の見直しにより市場第一部からスタンダード市場 へ移行。12月31日 生産拠点の集約に伴い、横浜工場閉鎖。
2023年 (令和5年) - 1月1日 横浜市都筑区に横浜営業所開設。同日、細貝理栄 代表取締役会長は代表権のない取締役名誉会長になる。
歴代社長
事業所
旧横浜工場とベーカリーアウトレット iF 横浜店
工場
直売店
「ベーカリーアウトレット iF」という名称で展開。規格外品・形に難がある商品等を値引き販売。
金町店 - 金町工場敷地隣接
小平店 - 小平工場隣接
高崎店 - 高崎工場隣接
大阪空港店 - 大阪空港工場隣接
閉鎖された工場(子会社は除く)
営業所
かつて存在していた営業所
主な商品
食パン
モーニングシェフ
モーニングセレクション
ホテルの朝
発芽玄米食パン - ファンケル発芽玄米を使用
菓子パン
アップルリング
アップルリングミニ
マロンリング
手包みシリーズ(メロンパン ・クリームパン ・ジャムパン ・北海道 あんぱん ・こしあんぱん・栗 あんぱん)
ホテルカレー
横浜あんぱん物語(小倉・こしなど)
一口包みソーセージ
白玉&小倉5個入
アップル&カスター5個入
食卓ロール
バターロール
レーズンバターロール
トーストするだけメープル風味
キャラクター
それ以外のタイアップもの
※同社は製パン業界のキャラクターシリーズの先駆者である。
過去に発売していた商品(現在は終了)
その他
脚注
注釈
出典
外部リンク