『窓際のスパイ』(まどぎわのスパイ、原題: Slow Horses)は、2022年から配信されているイギリスのスパイスリラードラマシリーズである。
概要
傲慢で悪名高いチームリーダーに率いられるMI5(英国情報局保安部)の落ちこぼれエージェントたち、通称スローホース。 本部から離れた古びた建物スラウハウス(泥沼の家)に集められ、普段は暇をかこつが、時に応じて危険でいわくつきの仕事を押し付けられる。スパイの世界の策略と組織内部の陰謀をかいくぐり、 イギリスと自分たちを守る彼らの姿を、ダークなユーモアを効かせて軽快に描く。
シーズン1は2022年4月1日[1]、シーズン2は2022年12月2日[2]、シーズン3は2023年11月29日[3]、シーズン4は2024年9月4日[4]よりそれぞれApple TV+にて配信開始された。シーズン5の製作も決定している[5]。
登場人物とキャスト
※括弧内は日本語吹替。
メインキャスト
- ジャクソン・ラム
- 演 - ゲイリー・オールドマン(安原義人)
- MI5のベテランエージェントで落ちこぼれ(スローホース)たちを集めたスラウハウス(泥沼の家)の責任者。ヘビースモーカーで体からは悪臭を放ち、悪名高く普段はやる気を見せないが、その観察眼と思考力は他のエージェントを圧倒する。リヴァーの祖父デイビットとともに大きな秘密を抱えており、それが原因で自らスラウハウスへと異動して来ている。
- リヴァー・カートライト
- 演 - ジャック・ロウデン (櫻井トオル)
- リージェンツ・パークにあるMI5本部の若手エージェントだったが、友人に訓練での失敗の原因をなすりつけられ、スラウハウスに左遷されている。父親を知らず、母親には幼い頃に捨てられた。祖父は引退したMI5の実力者のデイビッドである。
スラウハウスの仲間たち
- キャサリン・スタンディッシュ
- 演 - サスキア・リーヴス (幸田直子)
- ラムの世話係を兼ねる事務員。一時期深刻なアルコール依存症に陥っていたが、当時のMI5長官チャールズ・パートナーに治療を勧められ依存症を断ち切る。チャールズが自宅の浴室で拳銃を片手に死んでいるのを発見する。
- シドニー・"シド"・ベイカー
- 演 - オリヴィア・クック(伊瀬茉莉也)
- ラムが実力を認める若手エージェント。スラウハウスへ異動になった経緯の裏にダイアナが関係する (シーズン1)。
- ロディ・ホー
- 演 – クリストファー・チョン(英語版)(時永ヨウ)
- 優秀なハッカーであるエージェント。自己陶酔的で仲間を見下す癖があるが、本人はスラウハウス送りにされた理由に一切心当たりがない。
- ストルアン・ロイ
- 演 – ポール・ヒギンス(英語版)
- 仕事中に不適切な内容のメールを送信し、スラウハウス送りになるエージェント。左遷後も、家族にはリージェンツ・パークの本部に勤める優秀なエージェントであると嘘をつく (シーズン1のみ)。
その他
複数シーズン
- デイヴィッド・カートライト
- 演 - ジョナサン・プライス (小室正幸)
- リヴァーの祖父で引退したMI5の有力者。ロンドン郊外で一人暮らしをする。かつてラムと極秘のミッションを実行している。
- イングリッド・ティアニー
- 演 - ソフィー・オコネドー
- MI5長官で副長官のダイアナとは緊張状態にある。保身の為ならばスローホースであろうがなかろうが容赦なく捨て駒として使う。
- ジェームズ・"スパイダー"・ウェッブ
- 演 - フレディ・フォックス (須藤翔)
- MI5本部勤務のエージェントでダイアナの部下。訓練の失敗の原因を友人だったリヴァーに擦り付けて仲たがいする。スパイダーと呼ばれることを激しく拒む(シーズン1-3)。
- モリー・ドーラン
- 演 - ナオミ・ワイスナー
- MI5本部の記録保管庫職員。まだ足を失う前、任務でラムと踊った逸話があるほか、リヴァーの祖父デイビットとも面識がある (シーズン2-)。
シーズン1のみで登場
- ラリー
- 演 - デヴィッド・ウォルムズリー
- 「アルビオンの息子」のメンバー。
シーズン2のみで登場
- ケリー・トロッパー
- 演 - タムシン・トポルスキー
- アップショットのパブのバーテンダー。アレックスとダンカンの娘。
シーズン3のみで登場
- ショーン・ドノヴァン
- 演 – ソープ・ディリス(英語版)
- アリソンと交際するイスタンブール駐在の英国大使館警備員。アリソンの死の原因となった「足跡」の行方を追う。
- ダグラス
- 演 - シオン・ヤング
- MI5の本部外の書類保管庫の職員。
- スライ・モンティス
- 演 - ギャビン・スポーク
- 民間警備会社チーフテンの経営者
あらすじ
シーズン1のあらすじ
スローホースたちは、自分たちを犠牲にして保守派の力をそごうとするMI5副長官ダイアナ・タヴァナーの陰謀によりもたらされた、国際問題になりかねない誘拐事件を解決する。
MI5の別棟スラウハウス(泥沼の家)には「スローホース(遅い馬)」と呼ばれる、失敗を犯したエージェントたちが左遷されて、上司のジャクソン・ラムの下で暇をかこつ。スローホースたちが極右に繋がるジャーナリストであるホブデンの調査を命じられたと同時に、移民を敵視する極右のグループ「アルビオンの息子たち」がパキスタン情報機関ナンバー2の甥の学生ハッサンを誘拐し、斬首すると宣言する。実は誘拐と救出を演出して保守派の力を削ぐと同時にパキスタンとの関係を改善しようとする、MI5副長官ダイアナの「偽旗作戦」であり、失敗した場合にはスローホースが責任を課せられるはずとなっている。陰謀に繋がる証拠写真を撮ったゆえに、リヴァーが訓練で故意に失敗させられてスラウハウスに左遷されたことが分かる。偽旗作戦は失敗しかけ、スローホースはMI5に追及される。ラムは写真を入手してダイアナを逆に脅迫する。スローホースは「アルビオンの息子たち」の車を追跡し、ハッサンを解放する。MI5は事件の真相を知るホブデンを暗殺して口をふさぐ。スラウハウスの事務を執るキャサリンがかつて仕えたMI5長官のチャールズは、外国情報機関の工作員だったが故に、リヴァーの祖父デイビットの指示でラムに殺され自殺に見せかけられたことが分かる。
シーズン2のあらすじ
スローホースたちは亡命した元KGBらによる陰謀と戦う。
スラウハウスのミンとルイーザは、本部のウェッブにより、有力なオリガルヒのネフスキーとダイアナの会談準備を手伝わされる。引退したMI5エージェントが元KGBの暗殺者チェルニツキ―の姿を目撃したのちに殺されて、ラムの注意を引く。ミンは事故を装って殺される。リヴァーはチェルニツキ―を追跡するうちにロンドンでの爆弾テロの可能性を知り、テロ警戒警報の発令を求める。
ラムは、イギリスに亡命した元KGBカチンスキーの陰謀に振り回されていたことを知る。カチンスキーは、自分の工作員であったチャールズを殺した復讐のため、実行者のラムと命令者のデイビットの名前をFSBから聞き出し、見返りにネフスキーの金をモスクワに送金する手助けをする。ラムの注意を引きながらスラウハウスに屈辱を与えようとし、潜伏工作員を使って爆弾テロを偽装してロンドンに誤りのテロ警戒警報を出させ、混乱を利用して送金を行わせる。だが陰謀に気づいたラムがデイビットに連絡し、暗殺に来たチェルニツキ―を返り討ちにさせる。失敗を悟ったカチンスキーは自殺する。ダイアナと内相のジャドは種々の不手際を隠すために事件を隠蔽する。
シーズン3のあらすじ
スローホースたちは、MI5の長官の座を争うダイアナとティアニーによって引き起こされたキャサリンの誘拐事件を解決しようとし、危険な銃撃事件に巻き込まれる。
ジャドはMI5への支配力を強め、かつ民間警備会社チーフテンを経営する学友モンティスにセキュリティの仕事を与えるため、チーフテンの「タイガーチーム」にMI5のセキュリティを破らせようとする。チーフテンにキャサリンを誘拐させ、リヴァーを脅迫して本部に侵入させてセキュリティ破りが成功する。だが誘拐犯として雇ったドノヴァンは、チーフテンに勤めていたウェッブを殺し、キャサリンを解放せずに脅迫を続け、MI5の外部の保管庫にあるファイル「足跡」を入手しようとする。ドノヴァンは、1年前にイスタンブールで「足跡」を公開してティアニーの失墜につながるMI5の大失敗を暴露しようとしてティアニーに殺された、恋人アリソンの仇を撃とうとする。ティアニーの地位を狙うダイアナが密かにドノヴァンを助ける。リヴァーとルイーザはドノヴァンと保管庫に入り「足跡」を見つける。ティアニーは実戦部隊「犬」とチーフテンを使い、スローホースともども秘密を知る人間を皆殺しにしようとして銃撃戦となるも失敗する。リヴァーが「足跡」をリークしてティアニーとジャドは辞職し、ダイアナが長官となる。敬愛していたチャールズがラムに殺されたと知ったキャサリンはスラウハウスを辞職する。
エピソード
シーズン概要
シーズン1 (2022)
シーズン2 (2022)
シーズン3 (2023)
シーズン4 (2024)
製作
シーズン
シリーズは2019年10月にApple TV+のオリジナルシリーズとして製作が開始され、ゲイリー・オールドマンが主演を務めることが発表された[6]。当初は2シリーズ構成で制作が予定されていたが、その後2022年6月にシーズン2の公開に先立ち、シーズン3・4の製作が決定、発表された[7]。さらにシーズン5の製作も決定している[5]。なお各シリーズの内容は原作のSlow Horsesシリーズのストーリーに基づくが、ドラマ向けに一部ストーリー内容が変更されている箇所がある[8]。
キャスティング
- 本作主演のゲイリー・オールドマンは同作をもって引退することを検討している旨の発言をしている[9]。
評価
批評
出典
- ^ “Trailer for new Apple Original espionage drama “Slow Horses,” starring Academy Award winner Gary Oldman, debuts ahead of global premiere on April 1, 2022” (英語). Apple TV+ Press. 2023年12月21日閲覧。
- ^ “Apple’s hit espionage drama “Slow Horses” debuts season two trailer” (英語). Apple TV+ Press. 2023年12月22日閲覧。
- ^ “Apple’s acclaimed espionage drama “Slow Horses,” starring Academy Award winner Gary Oldman, unveils trailer for season three” (英語). Apple TV+ Press. 2023年12月22日閲覧。
- ^ Schwartz, Ryan (2024年8月13日). “Slow Horses Gets Season 4 Premiere Date at Apple TV+ — Watch Trailer” (英語). TVLine. 2024年9月4日閲覧。
- ^ a b Schwartz, Ryan (2 January 2024). “Slow Horses Renewed for Season 5 at Apple TV+; Season 4 Premiere Date TBA”. TVLine. 2 January 2024閲覧。
- ^ White, Peter (2019年11月15日). “Gary Oldman To Star In Spy Drama ‘Slow Horses’ For Apple With ‘Justified’s Graham Yost Exec Producing” (英語). Deadline. 2023年12月22日閲覧。
- ^ Porter, Rick (2022年6月1日). “‘Slow Horses’ Renewed Through Season 4 at Apple TV+” (英語). The Hollywood Reporter. 2023年12月22日閲覧。
- ^ Petski, Denise (2022年6月1日). “‘Slow Horses’ Renewed For Seasons 3 & 4 By Apple TV+” (英語). Deadline. 2023年12月22日閲覧。
- ^ “名優ゲイリー・オールドマン、俳優引退を検討 ドラマ「窓際のスパイ」を有終の美に? : 映画ニュース”. 映画.com. 2023年12月22日閲覧。
外部リンク