禁酒郡や同様の政策をとる自治体の多くは、酒類の消費そのものは禁止していないが、このような方針は、住民たちの飲酒にともなって生じるはずの経済的利益や税収を、近傍の禁酒政策をとっていない地域に流出させているものと考えられる。地域的な禁酒政策を維持する立場からの理由付けは、しばしば宗教的な性格のものであり、プロテスタント系の多くの教派は、信徒に飲酒を控えるよう呼びかけている(英語版の「Christian views on alcohol」、「Sumptuary law[2]」、「Bootleggers and Baptists」を参照)。教義の中で飲酒などを禁じている末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教)が優勢なユタ州では、州法では禁酒郡を認めていないが、酒類の販売や消費を制限する法令がいろいろ制定されている。ユタ州法は、地方政府が酒類を管理する法や条例などを定めることを禁じている。しかし、特定の郡において酒類の消費量を減らし、また、それにともなう保健、安全、治安関係の諸問題を減らすという、付随的ながら、より実際的な意図から、酒類の入手が容易ではなくなるよう制限を設ける法令が制定されるようになっている。
アーカンソー州での研究によると、禁酒郡とそうではない郡はしばしば隣接しており、酒類販売店は、郡境を越えてすぐの場所に立地していることが多く、中には郡境に面しているものもあるという[6]。同様の現象を指摘する研究者はほかにもいる。Winn and Giacopassi (1993) は、酒類販売規制のない「ウェット」な郡の住民は「自宅と飲酒できる施設の間の移動距離がより短い」と述べている[7]。Schulte et al. (1993) は、禁酒郡において「個人は、アルコールの影響下でより長い距離を飲酒運転し、衝突事故の危険を増している」と結論づけている[5]。
^Combs, H. Jason (2005). “The wet-dry issue in Arkansas”. The Pennsylvania Geographer43 (2): 66–94.
^Winn, Russell; Giacopassi, David (1993). “Effects of county-level alcohol prohibition on motor vehicle accidents”. Social Science Quarterly (74): 783–792.