滝川高校いじめ自殺事件(たきがわこうこういじめじさつじけん)とは、2007年(平成19年)7月3日に兵庫県神戸市須磨区の私立滝川高校に通っていた当時高校3年生の男子生徒がいじめを苦にして自殺した事件。学校裏サイトを使用したいじめが行われていたことから注目を集めた[13]。
経緯
2007年(平成19年)7月3日午後1時50分ごろ、高校3年生の男子生徒(当時18歳)が5時間目の授業中に「トイレに行く」と新館4階の教室を出た後に飛び降り自殺をし、午後2時ごろに教諭が発見した[1]。発見時、男子生徒は頭部から血を流して倒れており、40分後、病院で死亡が確認された[1]。男子生徒のズボンのポケットからA4判3枚の遺書が発見された[1]。遺書には数人の同級生の実名や「金を払えと要求された」などいじめの行為と見られる内容が記載されていた[14]。
いじめの可能性が指摘されたが、当初、学校側は「いじめはなかった」と否定しており、兵庫県にもいじめはないとの報告をしていた[15]。しかし、自殺から約2か月後に1人目の加害者が兵庫県警察に恐喝未遂容疑で逮捕されたことで態度を一変させ、いじめがあったことを認めた[16]。また、逮捕後に同級生ら40人にアンケートなどの再調査を行った結果、他にもいじめに加担した同級生がいたことを明らかにした[16]。その後、残りの加害者3人が逮捕された[17][18]。
自殺事件後の状況
自殺が起こった直後、学校側は兵庫県にいじめはないとの報告をしていた[15]。一方、自殺後の1か月間で自殺した生徒のクラスメートから聞き取り調査を行った結果、金銭の要求や使い走りの強要があったことを学校側は把握した。しかし、「いじめられていた」との証言がないことから、「命令だったり本気の要求ではない」とした[17]。
2007年(平成19年)9月17日、フットサル仲間だった西宮市在住の同級生の少年が恐喝未遂容疑で逮捕された[19]。
2007年(平成19年)9月21日、学校側は記者会見を講堂で行い、学校長は生徒の逮捕翌日から同級生など約40人に聞き取り調査などを行った結果、3人の同級生が男子生徒にメールで現金を要求した他、前年の夏以降は複数回にわたり教室の机の上や机の中に紙粘土を入れられるなどの継続的な嫌がらせがあったことを公表した[16][20]。また、学校裏サイトにて「うそつき」などの中傷行為を受けていたこと、学校裏サイトは逮捕された同級生1人が作成と管理をしていたことを報告した[20]。学校裏サイトには男子生徒の裸の写真や動画を載せられたり、住所や電話番号などの個人情報が掲載されていた[20]。
そして、これまでの「いじめはなかった」という姿勢から一転して「いじめはあったと判断する」といじめの事実を認めた[16]。その上で今後の対策としては、学外の有識者を含んだいじめ防止対策委員会の設置やネットトラブルの講習会を行うことでいじめの再発防止を図ると発表した[16]。
その後、9月25日に同級生2人が恐喝未遂容疑で逮捕され、10月29日にも同級生1人が恐喝容疑で逮捕された[17][21]。逮捕前の捜査でこの同級生は男子生徒に対して偽ブランド品のブレスレットを4万円で買い取るよう要求し、代金として5000円を脅し取ったことが判明した[22]。
2007年(平成19年)10月5日、神戸地検は同級生のうち1人[注 1]に対し「中等少年院送致が相当」とする意見書を付けて恐喝未遂の非行事実で神戸家裁に送致した[23]。その後、神戸地検は同級生2人[注 2]に対し「中等少年院送致が相当」とする意見書を付けて恐喝未遂の非行事実で神戸家裁に送致した[24]。
2007年(平成19年)11月8日、神戸地検は同級生1人[注 3]に対し「中等少年院送致が相当」とする意見書を付けて恐喝と脅迫の非行事実で神戸家裁に送致した[25]。
その後
再発防止に向けて学校は「いじめ防止対策特別委員会」を設置し、14人を委員に選任する計画を立てた[26]。しかし、選任予定のメンバーが滝川高校の関係者で占められていたため、再発防止の観点から問題視された[26]。このため、外部から大学教授1人を委員として追加し、最終的なメンバーを決定した[27]。
2007年(平成19年)11月1日、神戸市教育委員会は「ネットいじめ」に関する保護者向け啓発文を作成した[28]。啓発文には、ネット上で悪口を書き込んだことでいじめが始まる、などのインターネット上の特徴や、親子間でインターネット使用のルールを決めるなどのアドバイスを盛り込んだ[28]。
2008年(平成20年)3月31日、いじめ防止対策特別委員会は「いじめの早期発見・早期対応マニュアルを」をまとめ、学校長と教頭は引責辞任した[29]。
少年審判
2007年(平成19年)10月31日、神戸家裁(三宅知三郎裁判官)で同級生1人[注 4]に対する少年審判が開かれ、試験観察の中間処分を決定した[31]。
2007年(平成19年)11月7日、神戸家裁(三宅知三郎裁判官)で同級生1人[注 5]に対する少年審判が開かれ、試験観察の中間処分を決定した[32]。
2007年(平成19年)11月8日、神戸家裁(三宅知三郎裁判官)で同級生1人[注 6]に対する少年審判が開かれ、試験観察の中間処分を決定した[25]。
2007年(平成19年)12月4日、神戸家裁(三宅知三郎裁判官)で同級生1人[注 7]に対する少年審判が開かれ、中等少年院送致処分を決定した[33]。
2008年(平成20年)2月27日、神戸家裁(三宅知三郎裁判官)で同級生1人[注 8]に対する少年審判が再開され、保護観察処分を決定した[34]。
2008年(平成20年)3月4日、神戸家裁(三宅知三郎裁判官)で同級生1人[注 9]に対する少年審判が再開され、保護観察処分を決定した[35]。
2008年(平成20年)3月10日、神戸家裁(三宅知三郎裁判官)で同級生1人[注 10]に対する少年審判が再開され、保護観察処分を決定した[36][37]。この決定により同級生4人のうち、1人の中等少年院送致、3人の保護観察処分が決定した[37]。
脚注
注釈
出典
- ^ a b c d e f 『読売新聞』2007年7月4日 全国版 大阪朝刊 社会35頁「高3男子、校内で飛び降り自殺 ポケットにメモ3枚/兵庫・須磨」(読売新聞大阪本社)
- ^ 『読売新聞』2007年9月26日 全国版 大阪朝刊 社会39頁「神戸・高3自殺 「退学させる」「リンチされる」恐喝メール全容判明」(読売新聞大阪本社)
- ^ 『読売新聞』2007年9月21日 全国版 東京夕刊 夕社会21頁「神戸・高3自殺 逮捕少年ら、4月に中傷HP開設 嫌がらせ写真も投稿」(読売新聞東京本社)
- ^ 『読売新聞』2007年9月20日 全国版 東京朝刊 社会39頁「神戸・高3自殺 逮捕少年、集金役か 同級生から「財務大臣」」(読売新聞東京本社)
- ^ 『読売新聞』2007年9月18日 全国版 東京朝刊 社会39頁「神戸・高3自殺 金要求の同級生、恐喝未遂容疑で逮捕/兵庫県警」(読売新聞東京本社)
- ^ 『読売新聞』2007年9月25日 全国版 東京夕刊 夕一面1頁「神戸・いじめ自殺 さらに高3生2人を容疑で逮捕 メールで金要求/兵庫県警」(読売新聞東京本社)
- ^ 『毎日新聞』2007年10月6日 大阪朝刊 社会面31頁「神戸・高3自殺:自慢話の「うそ」で亀裂 同級生を家裁送致「少年院送致相当」」(毎日新聞大阪本社)
- ^ 『毎日新聞』2007年10月16日 東京朝刊 社会面30頁「神戸・高3自殺:同級生2人を家裁送致」(毎日新聞東京本社)
- ^ 『毎日新聞』2007年11月9日 大阪朝刊 総合面23頁「神戸・高3自殺:家裁送致4人目 脅迫と恐喝で」(毎日新聞大阪本社)
- ^ a b 『毎日新聞』2008年3月11日 東京夕刊 社会面8頁「神戸・高3自殺:元生徒を保護観察処分に」(毎日新聞東京本社)
- ^ 『毎日新聞』2008年4月1日 大阪朝刊 社会面30頁「神戸・高3自殺:私立高、教頭ら5人処分」(毎日新聞大阪本社)
- ^ 『読売新聞』2008年11月21日 兵庫 大阪朝刊 神戸33頁「生徒自殺の須磨・私立高、再発防止へ取り組み始める アンケート実施など=兵庫」(読売新聞大阪本社)
- ^ 『読売新聞』2008年3月14日 全国版 東京夕刊 夕一面1頁「学校裏サイト開設3万8千件 「ウザイ」「消えろ」書き込み横行/文科省調査」(読売新聞東京本社)
- ^ 『読売新聞』2007年9月17日 全国版 東京朝刊 社会31頁「「金要求された」高3自殺 遺書に同級生数人の名前/神戸」(読売新聞東京本社)
- ^ a b 『読売新聞』2007年9月18日 全国版 大阪朝刊 社会35頁「高3自殺で同級生逮捕 いじめ実態に衝撃 学校謝罪「調査で確認できず」/神戸」(読売新聞大阪本社)
- ^ a b c d e 『読売新聞』2007年9月22日 全国版 大阪朝刊 社会39頁「神戸・高3自殺 学校一転いじめ認める 再調査結果、2同級生も要求メール」(読売新聞大阪本社)
- ^ a b c 『読売新聞』2007年9月25日 全国版 大阪夕刊 夕社会15頁「高3自殺事件さらに2人逮捕 HP中傷でいじめ激化 「一番の仲良し」急変」(読売新聞大阪本社)
- ^ 『読売新聞』2007年10月29日 全国版 大阪夕刊 夕社会13頁「高3自殺 売りつけ生徒も逮捕 ブレスレット代5千円恐喝容疑/兵庫県警」(読売新聞大阪本社)
- ^ 『毎日新聞』2007年9月18日 大阪朝刊 政治面1頁「恐喝未遂:高3自殺、同級生逮捕 メールで「金払え」--神戸」(毎日新聞大阪本社)
- ^ a b c 『毎日新聞』2007年9月22日 大阪夕刊 社会面11頁「神戸・高3自殺:同級生が「いじめサイト」 無断作成の可能性--学校調査」(毎日新聞大阪本社)
- ^ a b 『朝日新聞』2007年10月29日 夕刊 1社会11頁「4人目の少年 腕輪売りつけ、5000円恐喝容疑 神戸・高3自殺【大阪】」(朝日新聞大阪本社)
- ^ 『毎日新聞』2007年10月29日 大阪夕刊 社会面9頁「神戸・高3自殺:4人目の生徒逮捕 偽ブランド品売り付け、5000円恐喝容疑」(毎日新聞大阪本社)
- ^ a b 『朝日新聞』2007年10月6日 朝刊 2社会30頁「同級生1人、家裁送致「中等少年院相当」神戸高3自殺【大阪】」(朝日新聞大阪本社)
- ^ a b c d 『読売新聞』2007年10月16日 全国版 大阪朝刊 2社38頁「神戸の高3いじめ自殺 少年2人を家裁送致 恐喝未遂、金要求メール送らせる」(読売新聞大阪本社)
- ^ a b c 『朝日新聞』2007年11月9日 朝刊 2社会36頁「腕輪売った少年、神戸家裁に送致 神戸の高3自殺 恐喝・脅迫で【大阪】」(朝日新聞大阪本社)
- ^ a b 『読売新聞』2007年10月26日 兵庫 大阪朝刊 神戸33頁「いじめ防止委の選任予定、14人全員に私立校の関係者 高3自殺受け=兵庫」(読売新聞大阪本社)
- ^ 『朝日新聞』2007年11月20日 朝刊 神戸・1地方24頁「いじめ対策委、メンバー決定 神戸・須磨区の私立高 /兵庫県」(朝日新聞大阪本社)
- ^ a b 『読売新聞』2007年11月2日 兵庫 大阪朝刊 神戸29頁「ネットいじめ防ごう 神戸市教委、保護者向け啓発文を作成=兵庫」(読売新聞大阪本社)
- ^ 『読売新聞』2008年4月1日 兵庫 大阪朝刊 神戸29頁「須磨の私立高、いじめ自殺で校長ら辞任 特別委が手引作成=兵庫」(読売新聞大阪本社)
- ^ a b 『読売新聞』2007年10月5日 全国版 大阪夕刊 夕社会17頁「神戸・高3自殺 17歳少年、午後送致」(読売新聞大阪本社)
- ^ 『朝日新聞』2007年11月1日 朝刊 1社会29頁「恐喝未遂の少年、試験観察処分に 神戸・高3自殺【大阪】」(朝日新聞大阪本社)
- ^ a b c 『朝日新聞』2007年11月8日 朝刊 神戸・1地方24頁「恐喝未遂の少年、試験観察処分に 神戸の飛び降り自殺事件 /兵庫県」(朝日新聞大阪本社)
- ^ 『毎日新聞』2007年12月5日 大阪朝刊 社会面29頁「神戸・高3自殺:18歳生徒を少年院送致--家裁」(毎日新聞大阪本社)
- ^ 『朝日新聞』2008年2月27日 夕刊 1社会11頁「恐喝未遂の少年、保護観察処分に 神戸の高3自殺【大阪】」(朝日新聞大阪本社)
- ^ 『朝日新聞』2008年3月5日 朝刊 神戸・1地方22頁「恐喝未遂の少年を保護観察処分に 神戸・高3自殺事件 /兵庫県」(朝日新聞大阪本社)
- ^ 『朝日新聞』2008年3月11日 朝刊 神戸・1地方24頁「恐喝未遂の少年、保護観察処分に 神戸家裁 /兵庫県」(朝日新聞大阪本社)
- ^ a b 『毎日新聞』2008年3月11日 大阪朝刊 社会面28頁「神戸・高3自殺:恐喝未遂の少年を保護観察」(毎日新聞大阪本社)
関連項目