天下繚乱RPG『天下繚乱RPG』(てんかりょうらんRPG)は、2010年3月にJIVEから出版されたテーブルトークRPG。著者は小太刀右京。『アルシャード』シリーズや『天羅WAR』などと同じスタンダードRPGシステム(以下、SRS)を使用した時代劇RPGであり、同システムを開発したファーイースト・アミューズメント・リサーチ社の協力を得て制作された。 2021年6月に版元を新紀元社に変えた第2版が発売され、三輪清宗らチーム・バレルロールが著者名に加わった。第2版はサブクラスなどで変更がなされている。以下に紹介している内容は第1版のものである。 概要江戸時代後期の化政時代を舞台とし、時代劇のヒーローをプレイヤーキャラクターとして勧善懲悪の活躍を楽しむゲームである。現実の化政時代を基調とするものの「時空破断」という時空の歪みが発生したことになっており、細部で異なっている(田沼意次が女性であるなど)。これによって史実の生没年にこだわらず、時代劇の著名人物を登場させることが可能であり、水戸黄門や遠山の金さん、新撰組といった時代の異なるヒーローを共闘させることもできる。また、史実と異なり、怨霊や鬼などの、世に害を為す「妖異」と呼ばれる存在が実在することになっており(ただし、滅多に出会えるものではないため、一般人でそのような存在を信じない者がいることは現実と同様である)、「英傑」と呼ばれるプレイヤーキャラクターの主な敵として立ちはだかる。 システム基幹システムにはSRSが採用されており、キャラクターの作成方法や行為判定はこれに準ずる。 他のSRS作品との間で互換性が担保されており、データを互いに導入することも可能である。特に『アルシャード』シリーズとはゲーム用語の一部が時代劇風に置き換えられているが(「加護」→「奥義」、「ブレイク」→「覚悟状態」、「クエスト」→「宿星」等)ほぼ完全互換である。このためもあってか、ルールブックの帯にはアルシャードのゲームデザイナーである井上純弌によりアルシャードの既存ユーザーに向けた推薦文が書かれている。 キャラクターの作成方法プレイヤーキャラクターの作成は、自由度の高いマルチクラス制となっている。キャラクタークラスを3つ選択することで、プレイヤーキャラクターのおおまかなアウトラインが決定される。これはSRSの標準のキャラクター作成ルールである。 クラスの選択によりキャラクターの能力値が自動的に決定される。また、クラスごとに専用の「特技」や「奥義」といわれる特殊能力が習得できる。 キャラクターのレベルは、選んだクラスのレベルの合計となるため、初期作成では3レベルとなる。 行為判定行為判定は上方判定に属する。判定に使用されるのは六面体ダイス二つ(以後2d6と表記)である。 「2d6+能力値」で得た数値が行為判定の目標値以上ならば判定は成功となる。なお、2d6で出た出目が12ならばクリティカルが発生し、最終的な達成値に関わらず行為判定は自動成功する。 逆に出目が2ならばファンブルが発生し自動失敗の効果となる。これはSRSの標準のルールである。 シナリオの進行シナリオの進行にはシーン制が採用されている。 また、1回のセッションはオープニング、ミドル、クライマックス、エンディングの4つのフェイズに分けられ、1回のセッションで1本のシナリオを確実に消化することを目指す仕組みになっている。 宿星PCがゲーム内で目指すべき目的、すなわち勝利条件は「宿星」としてゲームマスター(以下、GM)より示される。アルシャードの「クエスト」と機能上、同等である。 宿星は【亡父の仇を討つ】【悪代官を懲らしめる】などというように具体的に明文化される。宿星はゲーム中の任意のタイミングにGMが特定のPCに提示するものとなっている。星や瑞兆などを通して示すこともできるため、様々なタイミングで提示することにより、GMは「PCがシナリオ内ですべき行動」についてキャラクター視点を超えた観点からヒントを与えることができる。 宿星を提示されたPCは、それを達成することでゲーム終了時に経験点を得る。 奥義すべてのプレイヤーキャラクターはキャラクタークラスに応じた「奥義」と呼ばれる強力な力を持つ。これは『アルシャード』の「加護」と同等の力であり、セッション中の膠着状況を打破する切り札として機能する。基本的に「英傑」であるPCだけの持つ能力だが、一部のNPCも同じ力を有する。「奥義」の名称は「一刀両断」「鎧袖一触」「秋霜烈日」といった四字熟語となっており、その効果はアルシャードの「加護」に対応している。奥義は別の奥義によって打ち消しや相殺も可能であるため、どの時点でどの奥義を使用し、あるいは使用させない(無効化する)かの判断が戦術的に必要となる。 戦闘ルール位置「エンゲージ」の概念が実装されているため、位置関係はある程度簡便に表現されるものの、武器の射程や移動距離、位置取りなどを配慮した戦術が必要となる。 戦闘不能と覚悟状態『天下繚乱RPG』では通常、ヒットポイントが0になっても戦闘不能になり行動が不能になるだけで即死はしない。この戦闘不能状態は戦闘終了時になれば自動的に回復する他、アイテムや特技でも回復ができる。 ただし、この戦闘不能状態で敵が殺意をもって「止めを刺す」と宣言すればキャラクターは死亡する。 また、英傑といわれる存在(プレイヤーキャラクターと一部のNPC)は、ヒットポイントが0になった瞬間に戦闘不能になる代わりに「覚悟状態」になることを選択できる。覚悟状態は瀕死になったときに発動する火事場の馬鹿力ともいえる能力ではあるが、デメリットも多くあり、戦闘不能を選んだ方が生存率自体は上がることも多い。戦闘不能を選ぶか覚悟状態を選択するかの駆け引きも重要となる。 世界設定化政時代ゲームの舞台となるのは江戸時代後期の江戸の町である。ゲーム中ではこの時代を「化政」と呼んでいる。史実においても文化・文政期(西暦でいえば19世紀初頭)を「化政時代」と呼ぶが、このゲームの化成時代は歴史的に正しい江戸時代後期というよりも「テレビ時代劇で良く見るようなフィクション化された江戸時代」である(時代劇#時代考証も参照)。化政時代は表向きは天下泰平であるが、裏では悪代官や悪徳商人が私腹を肥やし、忍者や外国の密偵が情報合戦を繰り広げ、人知れずところで妖異と英傑の戦いが繰り広げられている時代である。 アルシャードガイアRPGのリプレイ『翼の折れた愛と青春』において小太刀は、デザインの段階では化政時代が現代より未来である可能性もあったと示唆している。 時空破断時空破断は化政時代の富士山の突然の噴火によりはじまった。ほぼ時を同じくして、北欧のアイスランドのラキ火山、南太平洋ポナペ島沖の海底火山も噴火し、この結果地球全土で時空の歪みが発生したのである。時空破断の影響により、過去もしくは未来から様々な「客人(まろうど)」がやってくるようになった。そして、その中には閻羅王と呼ばれる妖異の長たちもいた。 時空破断を修復するには世界のどこかにある伝説の神刀「村雨丸(むらさめまる)」が必要であり、これを探し出すことが本ゲームのプレイヤーキャラクターの究極的な目的となっている。 妖異妖異(ようい)とは人々の恐怖と悲しみに惹かれて現れる怪物たちのことをいう。妖怪とは似て非なるものであり、妖怪が怪異を具現化したものならば、妖異は純粋な邪悪が具現化されたものである。ただし、いわゆる妖怪として現代に伝わっているものの中にも妖異はいるとされており、「邪悪な妖怪=妖異」と考えてもさしつかえない。 妖異は人間や妖怪に憑くこともでき、妖異に憑かれた者は「羅刹(らせつ)」と呼ばれる。羅刹は超人的な力を持ち、多くはそれにおぼれて欲望の限りに悪事を尽くす。羅刹となった人間や妖怪の中には自発的に妖異に魂を売ったものもいるが、無自覚のうちに妖異に憑かれるものもいる。 人間と妖異との戦いははるか過去から歴史の影で行われている。宿星によって妖異と戦うことを宿命づけられた者を「英傑(えいけつ)」と呼ぶ。英傑は本人が望む望まざるに関わらず、妖異が関わる事件に巻き込まれる運命にある。本ゲームのプレイヤーキャラクターは原則的に英傑である。 社会の安定のため妖異の存在は公にはなっておらず時の政権により隠されている。時空破断という大事件がおきた化政時代でも、無用な混乱を避けるため妖異の存在は公には公表されていない。妖異という概念は知られていなくても、悪い妖怪や怨霊などの伝説は民衆に語り継がれている。それらの伝説の中には実際には妖異のことを語っているものもある。これらの伝説を信じるか信じないかは人それぞれである。 閻羅王閻羅王(えんらおう)は妖異の長と呼ばれる存在である。閻羅王は人間や妖怪の中で強い欲望と憎悪に満ちたものが生まれ変わると言われている。そして世界を自らの欲望によって塗り替えることを目的にしているために現れる。世界をどう塗り替えたいかは閻羅王により異なる。閻羅王は数百年に一度出現する。複数人が同時に出現するのは稀なことのようである。 化政時代には時空破断の影響で、過去に存在した5人の閻羅王(菅原道真、白面の君、由井正雪、天草四郎時貞、織田信長)が同時に日本にやってきている。その後もほかの閻羅王が復活している。この結果、妖異の活動はかつてないほど活発になり、羅刹も数多く生まれつつある。 ただし、この5人の閻羅王たちは本人そのものではなく、閻羅王がいる本来の時代から送り込まれた分身である。化政時代の日本には天海僧正が張った結界が機能しており、閻羅王本体の出現を抑えているのである。一方で閻羅王の部下である妖異や羅刹たちは閻羅王を完全復活させるために各地で霊的な結界を破壊している。 時の旅人たち「時空破断」により、化政時代には過去や未来の人間たちがやってきており、歴史にさまざまな影響を与えている。その中でも化政時代に最も大きな影響を与えているのが第14代征夷大将軍・徳川家茂である。化政時代から数十年後の「幕末」の時代からやってきた家茂は時空破断の黒幕である。彼は公武合体後の死の床で、倒幕後の日本が壮絶な内乱に突入し、その果てに世界最終戦争が勃発し日本が滅亡することを幻視した。それを防ぐために彼は妖異に魂を売り、「明治時代」を迎えさせないように歴史を変えるために時空破断を起こさせたのである。しかしその結果、5人の閻羅王という別の脅威を日本に迎え入れてしまったことに家茂は苦慮しており、同じく時空を越えてきた新撰組を使って妖異に対抗している。 諸外国の動向化政時代の日本はすでにフェートン号事件が勃発した後の世であり、諸外国は鎖国状態の日本を開国させるべく暗躍を続けている。 また、「時空破断」は地球規模で起こったものであり、世界中で様々な異変が起きている為、事件の中心である日本に対して多くの国家が注目をしている。ロシア皇帝・エカテリーナII世は妖異に魅入られエルダーヴァンパイアと化し、極東への進出を狙っている。フランス皇帝失脚後のナポレオン・ボナパルトは「ラプラスの魔」によって村雨丸の存在を探知し、密かに日本に渡って浅草下町に潜伏している。アメリカ合衆国海軍長官・ベンジャミン・W・クラウニンシールドは日本における妖異の動向を掴むため、多くの密偵を潜入させている。清朝は空飛ぶギロチンを操る暗殺者を日本に送り込んでいる。江戸時代初期から暗躍している豊臣残党は密貿易を通じてイスパニアやロシアの援助を受け、強大な軍事力を蓄えている(堕天使ルシファーの生まれ変わりである閻羅王・天草四郎時貞の反乱も裏ではイスパニアと結んだ豊臣残党の影響力があった)。また、化政時代に現れた閻羅王・織田信長には清朝に追われた明の遺臣、故郷を追われたインカの王族、マウリの酋長なども味方しているという。 著名人の扱い上述までの内容を見ればわかるようにゲーム中には多数の実在、架空問わない歴史上の著名人が、著者(そしてプレイヤー)独自の解釈で登場し、関わっている。一例として、シャーロック・ホームズがライヘンバッハの滝から転落した際に化政時代に迷い込み、三河町の半七から兄貴分として慕われている、などである。パーソナリティーが詳細に紹介されている人物が幅広く用意されているだけでなく、各章の冒頭に挿入される名言録などでも、様々な著名人の存在が示唆されている。 その一方で、ゲームを実際に遊ぶユーザーたちが歴史上の著名人を別の解釈で登場させることも推奨されている。必要に応じて公式のキャラクター設定を変更しても良いと明記されているだけでなく、基本ルールブックには「今後発表される公式のリプレイやシナリオ等には一切登場させない」とされる著名人物のリストがあらかじめ用意して有り、これもまた幅広い人物が列挙されている。これらの人物はユーザーがプレイヤーキャラクターとして使うこともできるし、GMがNPCとしてまったく独自の解釈をして登場させても良いという形になっている。 ステージ天下繚乱RPGでは、『ダブルクロス』にて発表されたステージの概念が実装されている。上記の舞台設定を「基本ステージ」とし、それとは異なった時代/場所/背景を持つ舞台が「拡張ステージ」として用意されている。2012年2月の時点で、4つの拡張ステージが提供されている。
キャラクタークラスと奥義各クラスの元ネタについて、史実や時代劇上での取り扱いは、リンク先を参照のこと。 基本クラス
サブクラス
製品一覧ルールブック・サプリメント
リプレイ妖異暗躍譚シリーズ
女子高生江戸日記シリーズ
義経変生譚シリーズ
天下繚乱ギャラクシーシリーズ
その他
脚注
関連項目外部リンクInformation related to 天下繚乱RPG |