タイタンの表面温度そのものは大気による温室効果によって平衡温度よりも高い温度に保たれてはいるものの、ヘイズによる反温室効果の影響で表面温度は 9 K 下がっていることが分かっている[4][5]。タイタンの表面温度の実測値は 94 K である。大気が存在せず、かつアルベドが同じであった場合のタイタンの有効温度は 82 K であると計算される。タイタン大気中の成分による温室効果 (メタン、水素、窒素による[2]) は表面温度を 21 K 上昇させる働きがあるが、ヘイズによる反温室効果が働くことによって正味の温度上昇は 12 K に留まり、現在のタイタンの表面温度が実現されている[2][4][5]。
その他の用例
上記の例とは別に、地表の揮発性物質が昇華する際に周囲から熱を奪うことで表面温度が低下する現象に対して反温室効果という言葉が使われることがある。2006年にサブミリ波干渉計を用いて行われた冥王星の電波観測では、冥王星の表面温度が予想より 10 K 低いことが判明した[6]。これは冥王星が楕円軌道を公転することで太陽に近付いた際に表面の固体窒素が昇華し、潜熱として熱が奪われたために表面温度が低下したのだと考えられている[6]。この現象を指して「反温室効果」という用語が用いられたことがあるが[6]、これは物質の相が変化する際の吸熱に伴う温度変化であり、上記の温室効果と対になる効果としての反温室効果とは異なる現象であることに注意が必要である。
^Haqq-Misra, Jacob D.; Domagal-Goldman, Shawn D.; Kasting, Patrick J.; Kasting, James F. (2008). “A Revised, Hazy Methane Greenhouse for the Archean Earth”. Astrobiology8 (6): 1127–1137. doi:10.1089/ast.2007.0197. ISSN1531-1074.