2020年に流行した新型コロナウイルスを巡っては、感染収束のスピードを、直近1週間の感染者数を累計の感染者数で割った数字で予測する独自理論の『K値』を公表し、コロナウイルス感染症の拡大・収束動向を見極める実用的な指標だと主張した[3]。同年5月14日には吉村洋文大阪府知事が大阪府が用いている「大阪モデル」の数値基準の一つと考え方が近いとして取り上げたことでマスコミの脚光を浴びた[4]。6月12日の大阪府の専門家会議に出席した中野はコロナ第1波の終息について「自然減の可能性がある」と指摘し国や大阪府が3月以降行った自粛要請には「効果が無かった」と断言した。吉村はこれに対し「その時の判断として必要だったと思うが、一つの有力な意見だ」と強い関心を示した[5]。この後、「大阪モデル」には一部K値の考え方が導入され、経済活動を重視して赤信号を灯しにくくする変更にかじを切った。しかし、「K値」の予測では第2波は7月上旬には感染者数がピークアウトする見通しであったのに対し、その後も感染者は増え、K値による感染状況の予測には狂いも生じた[6]。2020年11月には、Journal of Medical Internet Research(英語版)(査読済、オープンアクセス誌)に掲載された[7]。また、中野はコロナ第3波について「2020年11月にはピークを越える」と予測した[8]。しかし、2021年に入っても状況は悪化の一途をたどったため、政府が緊急事態宣言を出すに至った。
東京大学大学院数理科学研究科教授の稲葉寿は武見基金 COVID-19有識者会議に寄稿した「感染症数理モデルとCOVID-19」において、K値を「流行の要素ともいうべき各ゴンペルツ曲線を生成するメカニズムが解明されない以上、事後的にデータを再現することができても、現象の因果的理解には寄与しないし、流行予測としては機能しないであろう。」と評価した。[9]
^Takashi Nakano and Yoichi Ikeda (2020). “Novel Indicator to Ascertain the Status and Trend of COVID-19 Spread: Modeling Study”. J Med Internet Res (JMIR Publications) 22 (11): e20144. doi:10.2196/20144. PMID33180742.