一本桜(いっぽんざくら)とは、単一で植えられた桜の呼称。古くから人々に愛されてきた一本桜も多数存在し、伝説や由来に基づく特別な名前が付けられているものもある。幹が頑丈で長寿になりやすい野生種のエドヒガンとそれから生み出された栽培品種のシダレザクラに長寿で巨樹の一本桜が多く、それらは神社仏閣や地域を象徴するランドマークとなって、現在に至るまで歴史的に花見の対象となってきた[1]。
概要
日本における花見は、明治時代以降、ソメイヨシノの拡散とともに団体での宴会を楽しむ庶民の娯楽へと変貌していった。それ以前にも観桜の習慣はあったが、一箇所に複数の桜を植えて楽しむという行為は財力を伴う余裕が必要であったことから、全国の町や村では寺社の境内や領主の庭先に植えられた一本の桜を、愛でる事が一般的な花見であった[2]。桜の管理技術なども発達しておらず、その年の環境や桜自身の生命力によって咲いたり、咲かなかったりする一本桜は各地で神聖視され、様々な伝承と共に受け継がれていった。
やがて三好学によってアレクサンダー・フォン・フンボルトが提唱した天然記念物の概念が紹介されると、一本桜の保護・育成の概念が取り入れられるようになり、1919年(大正8年)に公布された「史蹟名勝天然記念物保存法」によって、1922年(大正11年)、埼玉県の石戸蒲ザクラ、山梨県の神代桜、岐阜県の淡墨桜、福島県の三春滝桜、静岡県の狩宿の下馬ザクラといった一本桜が日本の天然記念物第1号に指定された。これが日本五大桜と言われる所以である。後に狩宿の下馬ザクラは1952年(昭和27年)に特別天然記念物に指定された。
代表的な一本桜
桜の天然記念物指定は杉の44指定に次ぐ39指定を受けている[3]。そのうち33種類が一本桜となっている。ここでは丸谷馨の『日本一の桜』で紹介されている一本桜を一覧にした[4]。
そのほかは『植物天然記念物一覧』のサクラ項を参照。
出典
参考文献
関連文献