『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は、暁佳奈による同名のライトノベルを原作とした日本のアニメ作品。2018年1月から4月までTOKYO MXほかで放送された[3][4]。また、同年7月4日発売のBD・DVD第4巻に第4話と第5話の間に位置する数か月間に起きた物語を描いた特別番外編が収録された。
このテレビアニメ版の結末は『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』(後述)に繋がっており、テレビアニメ版の各エピソードに登場したキャラクターが何らかの形で再登場している。推定18歳となったヴァイオレットの話で、原作小説版とは別の結末である。
2017年6月14日に京都アニメーションによるPV第1弾が公開され、さらに2018年1月放送・世界同時配信が報じられた[5]。
2017年7月2日にアメリカ・ロサンゼルスで開催されたAnime Expo 2017にて、第1話のワールドプレミア上映が行われた[4]。また、同年12月10日には、全国5大都市の劇場にて第1話から第3話までの先行上映会が実施された[6]。
通常は「次回の引き」など視聴者が興味を持つような仕掛けを施さなければならないが、ヴァイオレット・エヴァーガーデンの人生や人の生死を描く本作に限っては仕掛けを施すことによりリアリティが生まれにくくなることが懸念されて「1話完結型」のシンプルな構成となっている[12]。また、原作ではオムニバス形式で時系列がバラバラとなっているが、「ヴァイオレットの成長」をメインテーマに据えるにあたって、時系列を整理した方が視聴者に彼女の成長をより感じてもらいやすくなることから現在のような時系列となっている[13]。
監督の石立太一は企画が動き出した当初にシリーズ構成の吉田玲子から「フックがない」と言われたことを明かしており、ヴァイオレットが口数が少ないため彼女を代弁するキャラクターを設置するという案も出された。しかし、そうするとヴァイオレットの存在理由が薄まってしまうことから、石立は無理やり自身の企画を押し通したと話している[14]。
ヴァイオレット・エヴァーガーデンという人間を描くにあたって最も大切にしていたことについて石立は以下のように述べている。
原作小説を読んだ時点から「彼女は赤ちゃんのようだ」ということを京都アニメーションのスタッフとよく話していたんです。誰しもが必ず経験しているはずの幼少期からの体験を、ヴァイオレットを通じてみなさんに呼び起こしていただけるような作品にしたい。それを表現するうえでも、彼女の根底にある“なにものにも染まっていない無垢さ”を物語のなかで成長していく過程でもあまり上塗りすることのないよう、制作時とくに気を配りました。 — 石立太一[12]
また、石立はヴァイオレットの魅力は色で表現すると「透明ではなく白」であることをスタッフ陣やキャスト陣との大切な合言葉にしていたと話している[12]。
本作のキャスティングにおいてヴァイオレット役のみオーディションが行われ、石川由依が起用された。石立は原作小説に記されている「玲瓏な声」を基準にするとヴァイオレットのテーマとしている「幼児性」「白色感」から遠ざかると感じていた。そして「田舎娘のようなおぼこい感じ」を素で出せるかつ作中での成長を演じ分けることができるといった要素を石川が兼ね備えていたことから石川をヴァイオレット役に抜擢することに決めたとしている。他のキャストについては音響監督の鶴岡陽太が指名しており、ホッジンズ役の子安武人やギルベルト役の浪川大輔はそれぞれキャリア初となる京都アニメーション作品への出演を果たすことになった[12]。石川は最初のアフレコで「今の段階の感情はゼロで、赤ちゃん状態」と言われたことから、どのようにして感情をなくして言葉にするかについて苦労したことを明かしており、「思った言葉がストレートに口からポロポロ出てくるように間を作らずにしゃべる」ことを心掛けている[15]。
BD第1巻(テレビアニメ)の初週推定売上は5,019枚を記録し、週間BDランキングでは8位を獲得した[19]。その後BD第1巻(同)は、2019年8月19日付の週間推定売上で1,760枚を記録して推定累計9,682枚[20]、2020年10月19日付の週間推定売上で1,022枚を記録して推定累計17,169枚[21]、2021年11月22日付の週間推定売上で1,858枚を記録して推定累計26,997枚となっている[22]。
テレビアニメ放送前に公開されたCMが大きな話題となっており、ライターの井中カエルは「京都アニメーションがほこるキャラクターや小物の作画の緻密さ、撮影技術を駆使した映像の美しさなどが合わさり、それだけで圧巻の作品となっていた」と称賛している[23]。
第40回アニメグランプリでは作品グランプリ部門で16位、女性キャラクター部門でヴァイオレット・エヴァーガーデンが7位をそれぞれ獲得している[24]。
ニュータイプアニメアワード2017-2018では作品賞(TV放送&配信作品)で8位、女性キャラクター賞でヴァイオレット・エヴァーガーデンが7位、サウンド賞でEvan Callが8位、監督賞で石立太一が6位、脚本賞で吉田玲子が7位、キャラクターデザイン賞で高瀬亜貴子が9位をそれぞれ獲得している[25]。
アメリカのアニメ評価サイト「Anime Trending」が主催した「第5回 Anime Trending Awards」での結果は以下の通り。
第3回Crunchyrollアニメアワードで6部門でノミネートされ、最優秀アニメーション賞を受賞[27]。
AnimaniA Award 2019にてBeste TV-Serie(テレビシリーズ賞)を受賞[28]。
2020年6月3日深夜に第10話が再放送された際には、感動の声がTwitterでトレンド入りしたことが報じられた[29]。
2021年10月29日に金曜ロードショーにてテレビシリーズを再構成した「特別編集版」が放送された[30]。金曜ロードショーにおいて他局で放送された深夜アニメ作品が放送されるのは極めて異例であり、大きな反響を呼んだ[14]。
Netflixでは2018年1月より日本で、同年春に全世界で配信[3]。
2019年7月18日に発生した京都アニメーション放火殺人事件により、当初は本作の資料もすべて焼失したことが八田英明へのインタビューで報じられていたが、事件発生前に企画されていた鹿児島県出水市での展示イベント「京都アニメーション原画展」用として本作を含む原画15点はその時点で京都アニメーションから会場の書店へ発送済みであり、難を逃れた。それが事件発生当日に届いた書店は中止を検討したが、京都アニメーションの「ファンのためにもぜひやってほしい」との意向を酌み、開催した[34][35]。
2019年9月6日に3週間限定として上映が開始された[38]。興行収入は8億3100万円。
第一報では2週間限定と発表されていた[36]うえ、その後は京都アニメーション放火殺人事件の影響で公開の延期や中止すら危ぶまれていたことから、インターネット上では激励や感謝の声が寄せられた[39]。
2019年8月13日にはYouTubeにて予告編が公開されたほか、第1週目・第2週目と第3週目でそれぞれ異なる入場特典が用意されることが発表された[40]。
2019年9月4日には京都アニメーションが代理人弁護士を通じて「災禍に見舞われたスタッフを含め、制作に参加した全員の生きた証しです」とのコメントを出したほか、作品が完成したのは前述の事件の発生前日であり、その犠牲者も含めて制作に参加したスタッフ全員の名前を監督の藤田の希望によってエンドロールなどに出す旨を発表した[41]。
2019年9月13日にはFilmarksとぴあの初日満足度ランキングで1位を獲得したことや、ファンからの応援を受けて一部劇場では同年9月27日以降も上映されることが発表された[42]。
ストーリーの前半部分は原作小説「外伝」に掲載されている一章のアニメ化、後半部分は映画版オリジナルとなる。
動画サイトではテレビアニメと同じくNetflixでのみ公開されており、日本語の他に英語・スペイン語・フランス語・ブラジルポルトガル語での吹替版も視聴できる。
BDの初週推定売上は22,441枚[45]、DVDの初週推定売上は2,361枚をそれぞれ記録している[46]。
ライターの杉本穂高は企画「2019年 年間ベストアニメTOP10」で本作を4位に選出しており、本作の存在自体が「泥中の蓮」であると述べている[47]。
ライターの草野虹は「ボヤけていく空から落ちてくる雨」「水のきらめきや木々の揺れ方」「部屋に光が差してきて照らされるホコリ一つ一つ」など作品全体を通して景色がドラマティックかつ繊細に描かれている点を称賛している[48]。
第42回アニメグランプリではグランプリ作品部門で4位、女性キャラクター部門でヴァイオレット・エヴァーガーデンが4位、アニメソング部門で「エイミー」が4位をそれぞれ獲得している[49]。
2020年9月18日に公開された完全新作。興行収入は21億3000万円[51]。
当初は2020年1月10日に世界同時公開予定と発表されたが[36][52]、京都アニメーション放火殺人事件後の2019年9月に公開日の延期が発表され[53]、同年10月18日に行われた記者会見の際に八田英明から2020年4月以降の公開を目指して制作中であることが発表された[54]。
2019年11月9日、公開日が2020年4月24日に決定したことが発表された[55]が、日本国内における新型コロナウイルス感染症の流行拡大を受け、2020年4月6日に劇場公開の再延期が発表された[56]。
2020年6月25日、同年4月より再放送していたテレビアニメの最終回の本編終了後のCMで本予告動画が解禁され、同年9月18日に公開予定と発表された[57]。
2021年1月27日、第44回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞を受賞[58]。
2021年10月13日より、世界各国のNetflixで配信されることが発表された。 日本での配信は2022年4月13日より開始。日本語の他に、英語・ポルトガル語の吹き替え、そして日本語による状況説明を加えた副音声が加えられた。
デイジーは亡き祖母・アンの家でアンの母がドールに代筆させた手紙を読む。両親に反発するデイジーは家を出て代筆したドールの足跡を辿る。
電話が普及しはじめたライデンでもヴァイオレットは多忙だったが、ギルベルト少佐のことは胸から離れなかった。病気で入院中の少年ユリスがヴァイオレットに代筆を依頼する。ホッジンズは宛先不明の手紙の中にギルベルトの筆跡を発見する。ホッジンズはヴァイオレットと共に手紙が出されたエカルテ島に向かう。ギルベルトは戦争で左目と左腕を失くしたあと、病院を出てこの島に住み着いていた。ヴァイオレットはギルベルトの家を訪ねるが、彼女に負い目のあるギルベルトは再会を拒否する。ユリスが亡くなり手紙が届けられたとの知らせが入る。ヴァイオレットはギルベルトに手紙を書き、船で島を出る。感謝の言葉が綴られた手紙を読んだギルベルトは船着き場に走る。ギルベルトの呼ぶ声を聞いたヴァイオレットは船から飛び降り、ようやくギルベルトと再会し号泣する。
デイジーはエカルテ島に渡る。ヴァイオレットはドールの仕事を全て終えたあと郵便社を辞めてこの島で代筆業をしていたという。デイジーは両親に宛てて心からの手紙をしたためる。
BDの初週推定売上は特別版が57,029枚、通常版が21,808枚[67]、DVDの初週推定売上は10,139枚をそれぞれ記録している[68]。
ライターの井中カエルは企画「2020年 年間ベストアニメTOP10」で本作を1位に選出しており、京都アニメーションの渾身の技術と思想が心をうち作品に漂う表現の覚悟に圧倒されたと述べている[69]。
第43回アニメグランプリではグランプリ作品部門で13位、女性キャラクター部門でヴァイオレット・エヴァーガーデンが4位をそれぞれ獲得している[70]。
アメリカのアニメ評価サイト「Anime Trending」が主催した「第8回 Anime Trending Awards」ではANIME MOVIE OF THE YEAR部門で2位を獲得している[71]。
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