ロッテルダム港 (オランダ語 Haven van Rotterdam ハーフェン・ファン・ロッテルダム )は、オランダ ・ロッテルダム にある港湾 で、ヨーロッパ 最大の港であり(アジアを除けば世界最大)、コンテナ取扱量は世界第11位(2020年)[ 1] である。ライン川 が北海 に注ぐ直前に位置し、外洋と河川の結節点として発展した。世界最大の石油化学工業 地帯でもあり、石油メジャー 各社のコンビナート が林立している。1960年代に建設されたユーロポート (英語版 ) (ウーロポールト )の名は特に有名で、俗にロッテルダム港全体を指して「ユーロポート」と呼ぶことがある。
歴史
ロッテルダム港入口にあるメスラントケリンク
マースフラクテ (英語版 ) 地区にあるコンテナターミナル
コンテナターミナル と無人搬送車
ロッテルダム港の本社(2012年)
ロッテルダム が港町として発展するきっかけとなったのは、1250年ころに作られたロッテ川 (英語版 ) をニューウェ・マース川 から仕切る堤防 である。海水面が上昇し塩水が内陸に浸入するようになったためこのような措置がとられた。これによりロッテ川と新マース川の間を行き来するには荷物の積み替えが必要となり、港町としてのロッテルダムの歴史が始まることになる。「ロッテルダム(Rotterdam)」とはロッテ(Rotte)川の堤防(dam)と言う意味である。その後北海 におけるニシン 漁の基地としてもロッテルダム港は利用されるようになった。商港としてのロッテルダム港の重要性が高まったのは15世紀以降である。1421年には洪水でドルトレヒト 港が大規模な被害を受け、デルフト 港は水深が浅く、船舶の大型化に対応できなかった。八十年戦争 (1568 - 1648)ではアントウェルペン港 (英語版 ) やアムステルダム港 (英語版 ) が封鎖されたため、ロッテルダム港の重要性はさらに高まった。東インド などの植民地 との貿易もあり、17世紀には大規模な埠頭 や造船所 の開発が進み、街とともに急速な発展を遂げた。
19世紀に入るとロッテルダム港は更なる急速な発展を遂げる。ひとつは産業革命 の影響により、大規模な資源 、製品 の運搬が必要になったためである。特にルール地方 への鉄鉱石 の需要 が大きな影響を与えた。さらに1868年のマンハイム条約 により各国の船舶が自由にライン川 を航行できるようになり、ライン川河川交通の重要性が増した。これに加え、ロッテルダム港と北海を直結するニューウェ・ウァーターウェーフ (英語版 ) (Nieuwe Waterweg)が1872年に開通し、航行時間の短縮、容量の増加が図られた。従来港は右岸のみにあったがこの時期に左岸にも拡大した。
20世紀に入ると重工業はさらに発展し、ロッテルダム港でもこれに対応し、ウァールハーフェンとメールウェハーフェンが建設された。メールウェハーフェンは石油化学工業に特化した埠頭である。第二次世界大戦 中、1940年5月にはナチス・ドイツ による戦略爆撃 の対象となり、ロッテルダムは壊滅的な打撃を受けたが、港湾の需要は戦後まもなく回復し、1950年代までにエーンハーフェンやボトレックが建設された。
ドイツ の急速な復興もあり、ロッテルダム港の利用は増え続けた。これに対応するため、ニューウェ・ウァーターウェーフ南側に3600ヘクタール に上るユーロポートの建設が1958年に始まった。特に石油 製品の需要が拡大していたため、大型タンカー の取り扱いを重視し、喫水24mの船舶 が接岸可能な4つの石油専用埠頭を含む8つの埠頭が計画され、1960年代に順次使用を開始している。この結果ユーロポートは世界最大の石油化学工業 の集積地となり、ドイツのルール地方やカールスルーエ などへ至る石油 パイプライン の起点ともなっている。
ロッテルダム港の拡幅は留まるところを知らず、1973年には北海を埋め立てて建設されたマースフラクテの使用が始まる。1997年にはニューウェ・ウァーターウェーフの入り口にメスラントケリンク (英語版 ) (Maeslantkering)と呼ばれる防波堤が設けられ、洪水に対する備えが強化された。また、ロッテルダム港はもともと市営であったが、2004年1月に港の管理が公社 (Havenbedrijf Rotterdam N.V)に移行した。
姉妹港
港内地区
ロッテルダム港内の各地区を上流から下流(東から西)に向かって挙げる。
ハリングハーフェン(Haringhaven)
ロッテ川とニューウェ・マース川の旧合流点付近に位置する。ハリングとはオランダ語 でニシン を意味する。埠頭番号は右岸が100番台、左岸が1000番台である。初期に建設された右岸の埠頭は小規模で、現在は使われていない埠頭も多い。港内の遊覧船はここに発着している。1960年にロッテルダムで行われた第1回フロリアード (園芸見本市)にあわせて作られた高さ185メートル の展望台、ユーロマスト もここにあり、港内が一望できる。左岸にはライン埠頭(Rijnhaven)やマース埠頭(Maashaven)などがあり、家畜 飼料 を製造するプロビミ (英語版 ) や海運会社カルマー のターミナルなどがある。
ウァールハーフェン(Waalhaven)
埠頭番号は右岸が200番台、左岸が2000番台で、ユニポート と呼ばれるコンテナターミナル がある。
エームハーフェン(Eemhaven)
ウァールハーフェン左岸下流側にあり、埠頭番号は同じく2000番台。ヨーロッパ・コンテナ・ターミナルズ (オランダ語版 ) (ECT)のコンテナターミナルがある。
メールウェハーフェン(Merwehaven)
ニューウェ・マース川とニューウェ・ウァーターウェーフの分岐点上流側にあり、埠頭番号は3000番台。上流から第二石油 埠頭(2e Petroleumhaven)、第一石油埠頭(1e Petroleumhaven)がある。エクソンモービル 、シェル石油 、ネレフコ (オランダ語版 ) などの石油化学工業 コンビナート がある。エーンハーフェンとメールウェハーフェンをあわせてペルニス (Pernis) とも呼ばれる。
ボトレック(Botlek)
ニューウェ・マース川とニューウェ・ウァーターウェーフの分岐点下流側にあり、埠頭番号は4000番台。上流から第三石油埠頭(3e Petroleumhaven)、化学埠頭(Chemiehaven)、聖ローレン埠頭(Sint-Laurenshaven)がある。いずれも石油化学工業 関連の埠頭で、世界最大のポリ塩化ビニル (PVC)製造会社である信越化学 や、エッソ 、ヴォパック (英語版 ) と言ったメーカが所在する。
ウーロポールト/ユーロポート(Europoort)
ロッテルダム港、赤枠内がユーロポート
プライド・オブ・ロッテルダム (MS Pride of Rotterdam)
ニューウェ・ウァーターウェーフのすぐ南側にあるカラント運河(Calandkananl)とハルテル運河(Hartelkanaal)にはさまれたローゼンブルフ島 (英語版 ) に位置する。埠頭番号はカラント運河側が5000番台で、上流からセーヌ 埠頭(Seinehaven)、ブリテン 埠頭(Britaniehaven)、第七石油埠頭(7e Petroleumhaven)、第五石油埠頭(5e Petroleumhaven)、第四石油埠頭(4e Petroleumhaven)、ベネルクス埠頭 (オランダ語版 ) (Beneluxhaven)が設けられている。ハルテル運河側の埠頭番号は6000番台で、上流からディンテル埠頭 (オランダ語版 ) (Dintelhaven)、第六石油埠頭(6e Petroleumhaven)がある。第六石油埠頭にあるネレフコの製油所はヨーロッパ最大であり、このほかシェル石油・クウェート石油会社 、ライオンデル・バセル (英語版 ) 、ヴォパック、ハンツマン・コーポレーション (英語版 ) と言った著名な石油化学工業メーカが軒を連ねる。ルール地方 への鉄鉱石 運送を行うErtsoverslagbedrijf Europoort (オランダ語版 ) (EECV)や石炭 、鉄鉱石やボーキサイト などを扱う運送会社コーベルフレット (ドイツ語版 ) のターミナルもここにある。
また、イギリス のP&Oフェリーズ (英語版 ) によって、ユーロポートからキングストン・アポン・ハル まで夜行フェリー が運航されており、プライド・オブ・ロッテルダム (MS Pride of Rotterdam)とプライド・オブ・ハル (英語版 ) (MS Pride of Hull)の2隻が就航している[ 2] 。
マースフラクテ(Maasvlakte)
ベール運河(Beerkanaal)を挟んでユーロポートの西側にある、北海 に突き出した人工の半島 に位置している。埠頭番号は8000番台で、北側から第五石油埠頭(5e Petroleumhaven)、揚子江 埠頭(Yangtzehaven)、ヨーロッパ 埠頭(Europahaven)、アマゾン 埠頭(Amazonehaven)、ミシシッピ 埠頭(Mississippihaven)、ハルテル埠頭(Hartelhaven)がある。世界最大のコンテナ貨物運送会社であるA.P. モラー・マースク やヨーロッパ・コンテナ・ターミナルズのコンテナターミナル、バイエル 、ライオンデル・バセルの工場などがある。
マースフラクテのさらに西側を埋め立て、コンテナターミナルを中心とするマースフラクテ2を建設することが決定しており、2012年から2014年ころまでの完成を予定している。
ロッテルダム港の地図
ロッテルダム港の地図
資料
貨物 取扱量は1965年にニューヨーク港 を抜き世界一になり、2003年まで世界一の貨物取扱量を維持した。しかし、2004年に上海港 とシンガポール港 に抜かれ、世界第3位に転落した。
近年貨物取扱量は停滞しているが、これはヨーロッパ の主要港湾 に共通する傾向で、ロッテルダム港のヨーロッパにおける優位に代わりはない。貨物取扱量はヨーロッパで2位のアントウェルペン港の2倍以上、3位ハンブルク港 の3倍以上である。
港湾施設での雇用者数は約5万9000人で、2000年にはオランダ のGNP の1.7%にあたる61億ユーロ の付加価値 を生み出している。
総面積 は10500ヘクタール 、東西の長さは40キロメートル 、埠頭の総延長は77キロメートル、原油 タンク容積は1300万立方メートル 。
近年の貨物取扱量の推移
2000年 3億2240万トン (うち原油9770万トン)
2001年 3億1470万トン(うち原油9790万トン)
2002年 3億2180万トン(うち原油9600万トン)
2003年 3億2780万トン(うち原油9980万トン)
近年の海上コンテナ 取扱量の推移
2000年 627万TEU (世界第5位)
2001年 610万TEU(世界第6位)
2002年 651万TEU(世界第7位)
2003年 711万TEU(世界第8位)
2004年 828万TEU(世界第7位)
2003年北海 方面船舶の船籍 別接岸回数
オランダ (5022回)
アンティグア・バーブーダ (4543回)
イギリス (3038回)
ノルウェー (1658回)
パナマ (1316回)
脚註
関連項目
外部リンク
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