レイランドヒノキ
1 . レイランドヒノキ
分類
学名
× Hesperotropsis leylandii (A.B.Jacks. & Dallim. ) Garland & Gerry (2012 ) [ 1]
シノニム
Callitropsis × leylandii (A.B.Jacks. & Dallim. ) D.P.Little (2006 ) [ 1]
× Cupressocyparis leylandii (A.B.Jacks. & Dallim. ) Dallim. (1938 ) [ 1]
Cupressus × leylandii A.B.Jacks. & Dallim. (1926 )
× Cuprocyparis leylandii (A.B.Jacks. & Dallim. ) Farjon (2002 ) [ 1]
× Neocupropsis leylandii (A.B.Jacks. & Dallim. ) de Laub. (2009 ) [ 1]
英名
Leyland cypress[ 2] , Leylandii[ 3]
レイランドヒノキ [ 4] [ 5] [ 6] [ 7] (学名 : × Hesperotropsis leylandii )は、裸子植物 ヒノキ科 イトスギ属 のモントレーイトスギ (Hesperocyparis macrocarpa )とアラスカヒノキ (Callitropsis nootkatensis )の交雑種である(図1)。両親種は北米 原産(分布域は離れている)であるが、イギリス で植栽されていたものの間で偶然交雑が起こり、レイランドヒノキが生まれた。成長が速い常緑 針葉樹 であり、観賞用に公園や庭園、生垣などに植えられている。急速に大きくなるため、日照権 の問題を引き起こすことがある。
特徴
常緑 高木 となる針葉樹 である[ 8] [ 9] (図1, 2a)。大きなものは高さ40メートル (m) に達する[ 8] [ 10] (図1, 2a)。樹皮 は褐色[ 8] [ 9] 。樹冠 は円錐形[ 9] [ 11] 。小枝は平面状に分枝し、垂下せず斜上し、鱗片状の葉で覆われる[ 8] [ 9] [ 12] (下図2b, c)。葉は長さ2–4ミリメートル (mm)、ヒノキなどに比べて細長く、やや青みを帯びた緑色[ 12] (下図2b)。枝葉の裏面はやや色が薄く気孔帯が存在するが目立たず、表裏の違いは明瞭ではない[ 12] 。徒長枝や幼い枝では、葉は針状[ 12] 。褐色で球形の球果 を形成する[ 8] (下図2c)。ただし基本的に不稔であり、挿し木 によって増やす[ 8] [ 9] 。
レイランドヒノキは、成長が非常に速く、若木は1年間に 1 m 以上成長し、15年で高さ 15 m に達することもある[ 13] [ 8] [ 9] [ 14] 。
歴史
レイランドヒノキはモントレーイトスギ (下図3a)とアラスカヒノキ (下図3b)の雑種であり、両種は北米西岸に分布するが、分布域は600キロメートル 以上離れており、自然交配することは困難である[ 13] [ 15] 。この両親となった2つの針葉樹は近縁種ではなかったが、英国人のプラントハンターが米国 のオレゴン からアラスカヒノキ(別名:イエローシダー)を、カリフォルニア からモントレーイトスギが持ち帰られたとき、イギリスのウェールズ中部の庭園に植栽された2種の間で雑種が形成され、レイランドヒノキが生まれた[ 13] [ 15] 。
ウェールズ にあるレイトンホール(Leighton Hall ; 下図3c)の庭園には、モントレーイトスギとアラスカヒノキが近くに植栽されていたが、1888年に特徴的な形質をもつ雑種(モントレーイトスギを花粉親とする)が Christopher John Leyland (クリストファー・レイランド:1849–1926)[ 注 1] によって発見された[ 15] 。この新しい針葉樹は、庭園の所有者レイランドの名に因んでレイランドヒノキとよばれている。彼の別の領地となったハガーストン城(Haggerston Castle )に持ち込まれた株は、北海 からの風が強い環境でも極めて良好に生育した[ 15] 。また、アラスカヒノキを花粉親とする雑種(‘Leighton Green’)も作成された[ 13] 。
3c . レイランドヒノキの発祥地であるレイトンホール
イギリス では、風が強く土壌の塩分濃度が高い土地でも育つ、細長く成長が速い樹木が造園業者によって求められていた[ 15] 。彼らは Christopher John Leyland が残したレイランドヒノキを見い出し、これを増やし、その塩害耐性、耐寒性などを大きく宣伝した[ 15] [ 17] 。その結果、イギリスの園芸店において売り上げの大きな部分を占める商品となった[ 10] 。レイランドヒノキは、1941年と1969年に英国王立園芸協会賞を受賞している[ 15] 。1970年代後半になると、繁殖技術の改良により、挿し木 で確実に大量生産できるようになると、レイランドヒノキは庶民でも手の届きやすい植栽の樹種となった。郊外の住宅地で暮らすイギリス人は、隣地との目隠し用の生け垣に適していたレイランドヒノキに注目してその需要が増え、1990年代初頭には、一般のイギリス人が植える木の約半数がレイランドヒノキになっていた。ただし、21世紀になると、成長が速く在来種に悪影響を与える外来植物として扱われることもある[ 15] 。
園芸
レイランドヒノキは、公園 や庭園 、生垣 、防風林 などに植栽されている[ 9] [ 11] (下図4a)。特に英国 では、このような用途で最も一般的な植物の1つである[ 3] 。クリスマスツリーとしても利用される[ 9] 。
レイランドヒノキは、アラスカヒノキから丈夫さを、モントレーイトスギから早い成長速度をそれぞれ受けついでいる[ 13] 。陽地を好む[ 9] 。多様な土質やpH で生育可能であり、塩害などに強く、栽培は容易である[ 9] [ 11] 。剪定、刈り込みに強い[ 9] 。成長が速く病虫害に遭いやすいため、外観を保つためには定期的な剪定を必要とする[ 9] 。根 が比較的浅いため、夏季が高温になる地域にはあまり適しておらず[ 9] 、また大きなものは強風などによって倒れることがある[ 9] [ 11] 。葉の成分によって、皮膚炎 が引き起こされることがある[ 9] 。
虫害を受けやすく、ミノガ 類は数週間で木全体の葉を食い尽くしてしまうことがある[ 9] 。また菌類による病害も多く、特にナラタケ属 (担子菌 )やエキビョウキン (卵菌 )による根腐れ病、Seiridium (子嚢菌 )による樹脂胴枯病、Botryosphaeria (子嚢菌)による枝枯病などが問題となる[ 9] 。
園芸品種
以下のように多数の園芸品種が存在する[ 9] 。
‘Blue Eyes’
‘Castlewellan Gold’[ 3] … 矮小で新葉は黄色(上図4b)
‘Emerald Isle’ … 葉は鮮緑色
‘Golconda’ … 葉は1年中黄色
‘Gold Nugget’ … 小型で葉は黄色
‘Gold Rider’(ゴールドライダー)… 小枝は、夏は濃黄色、冬は黄色で先端が緑色
‘Green Spire’ … 樹冠は細い円筒形
‘Haggerston Grey’ … 葉は青緑色から灰緑色
‘Irish Mint’ … 葉は明緑色、成長速度が遅い
‘Jubilee’ … 葉は黄色
‘Leighton Green’ … 大きくなり、葉は濃緑色
‘Naylor's Blue’ … 樹冠は広がり、葉は青緑色(上図4c)
‘Rico’ … 矮小
‘Robinson's Gold’ … 葉は明黄色から黄緑色
‘Silver Dust’(シルバーダスト )… 小枝は広く広がり、葉は青緑色で白い斑が入る
‘Star Wars’ … 葉はクリーム色
トラブル
レイランドヒノキは成長が速いため、しばしば光を遮って日照権 を巡る問題となる[ 18] 。生垣に利用した場合、隣家との間で深刻なトラブルの原因になることもある。隣家のレイランドヒノキのせいで日陰になり、土壌が酸性化した庭では、ほとんどの植物が生き残れなかった。低層階の住人が眺望の悪化に腹を立てただけではなく、園芸愛好家たちがこの木に不快感を示し、高級志向の人々が成金向けの俗っぽい木と決めつけたため、階級間の対立が浮き彫りになった。1990年代にはレイランドヒノキをめぐり、いくつかの事件が世間の注目を集め、マスコミも生け垣による日照不足をめぐる隣人同士のトラブルを好んで取り上げるようになった。
暴力沙汰や殺人事件にまで発展することもあり、2001年 には環境庁職員のランディス・バードン(当時57歳)がポーイス州 タリボン・オン・ウスクでの、レイランドヒノキの生垣を巡る争いで銃殺される事件があった[ 10] 。2005年 には、高い生垣(通常レイランドヒノキだが、それ以外の樹種を含む)による日照被害に直面した人々が自治体に生垣に関する問題調査を依頼し、イングランドおよびウェールズ当局に生垣の高さを低くしてもらうよう依頼できる道を開く法律が成立した(反社会的行動禁止令2003の第8章)[ 3] [ 19] 。2008年5月には、隣家が植えた100本のレイランドヒノキによる日照不足に悩まされたケースで、24年間の法廷論争の結果、木の先端を切りつめるよう命じる判決が出たことが話題となった[ 20] 。
名称
Leyland cypress(レイランドヒノキ)の名は、上記のように発見者である Christopher John Leyland に由来する[ 15] 。
レイランドヒノキの学名(× Hesperotropsis leylandii )のうち、属名(× Hesperotropsis )は両親種であるモントレーイトスギ (Hesperocyparis macrocarpa )とアラスカヒノキ (Callitropsis nootkatensis )のそれぞれの属名を組み合わせたものであり、種小名(leylandii )は発見者である Christopher John Leyland の姓に由来する。両親種の属がしばしば変更されてきたため、それに応じて本雑種の属も Cupressus 、× Cupressocyparis 、× Cuprocyparis 、× Neocupropsis とされたことがある[ 1] 。
脚注
注釈
^ 当時の名は Christopher John Naylor であった。1889年に父親である John Naylor が亡くなるとレイトンの領地を相続し、また1891年には叔父である Thomas Leyland が亡くなるとハガーストン城を相続し、姓を Christopher John Leyland と変えた[ 15] 。
出典
^ a b c d e f “× Hesperotropsis leylandii ”. Plants of the World Online . Kew Botanical Garden. 2024年3月15日 閲覧。
^ GBIF Secretariat (2023年). “×Hesperotropsis leylandii (A.B.Jacks. & Dallim.) Garland & Gerry Moore ”. GBIF Backbone Taxonomy . 2024年3月15日 閲覧。
^ a b c d “Leylandii: What you need to know ”. King & Co. 2024年3月16日 閲覧。
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^ 高橋護 (2007). コニファ-ガ-デン: 園主が教える選び方・育て方 . 農山漁村文化協会. ISBN 978-4540051784
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^ a b c d e f g h i j Brown, J. (2012). “Leyland [formerly Naylor], Christopher John”. Oxford Dictionary of National Biography . Oxford University Press. doi :10.1093/ref:odnb/95093
^ “TRACING GREEN GIANT BACK TO CASTLE ROOTS ”. Northern Echo (2000年7月21日). 2008年11月30日 閲覧。
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^ Richard Savill (May 17, 2008). “Leylandii dispute ends in light relief” . The Daily Telegraph. http://www.telegraph.co.uk/news/uknews/1969894/Leylandii-dispute-ends-in-light-relief.html December 30, 2009 閲覧。
参考文献
関連事項
外部リンク
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