リヴィアタン・メルビレイ (Livyatan melvillei ) はマッコウクジラ上科 に属する化石クジラ 類。中新世 中期、1200-1300万年前に生息していた[ 1] 。リヴァイアサン・メルビレイ 、レヴィアタン・メルビレイ 、レビアタン・メルビレイ 、リビアタン・メルビレイ などともよばれる。
発見
2008年11月、ペルー の都市イカ の南南西35キロメートル、Pisco累層の堆積物中から発見された[ 2] 。化石 は頭骨の一部であり、歯・下顎が付随していた[ 2] 。発見者はロッテルダム自然史博物館 の研究者 Klaas Postであり、2008年11月の野外調査最終日、偶然の発見であった[ 1] 。
化石はリマ で処理され[ 1] 、現地の博物館で保存されている[ 3] 。
命名
最初に与えられた学名は旧約聖書 の怪物レヴィアタン (リヴァイアサン)に因む Leviathan melvillei であった。種小名 は白鯨 の著者ハーマン・メルヴィル への献名である[ 4] 。だが、属名 Leviathan はマストドン の一属の下位異物同名 (Leviathan Koch, 1841) であったことが判明した。通常、下位異物同名は新名に置換されなければならない[ 5] ため、2010年8月、旧約聖書本来の綴りに基づいた Livyatan という属名が提唱された[ 6] 。
形態
歯の化石
全長は13.0〜20.5mと推定され、これは現生のマッコウクジラ の雄とほぼ同等である。 頭骨の長さは3メートルほどであるが、現生種と違い、両顎に機能的な歯が存在する[ 2] 。また、現生種と比べ顎が頑丈であり、側頭窩 もかなり大きい[ 2] (マッコウクジラの歯はもっと小さく、ほとんどが下顎 にある)。本種は史上最大級の捕食者であり、クジラの専門家はこれに関して "四肢動物最大の歯型" と表現している[ 2] 。歯の長さは36センチメートルに達するが、これも捕食に用いるものとしては、知られている動物 の内で最大である[ 2] (捕食用途に限定しなければ、イッカク ・ゾウ ・セイウチ などの牙の方が大きい)。(動物の歯の中では最大。)
体長推定
体長推定にはマッコウクジラ上科 の種が2種用いられ[ 2] 、現生マッコウクジラ を用いた場合は全長13.5メートル[ 2] 、化石種の Zygophyseter varolai を用いた場合は17.5メートル という結果が得られている[ 2] 。
頭骨
頭骨の凹みからは、大量の鯨蝋 を保持していたことが推定される。現生マッコウクジラでは、この器官は深海への潜水・浮上の補助に用いられる。だが本種は表層で大型の獲物を捕食していたようであるため、この器官には別の機能があったと推定される。おそらくはエコロケーション 、繁殖の際のディスプレー、獲物への頭突きなどに用いていたと考えられる[ 1] 。
餌
発掘場所の近くからはヒゲクジラ ・アカボウクジラ ・イルカ ・サメ ・ウミガメ ・アザラシ ・海鳥 などの化石が見つかっている[ 2] 。
本種は当時の海でメガロドン と共に頂点捕食者 であったと考えられ[ 2] [ 7] [ 8] 、中新世の海洋生態系を構成する重要な種であったと思われる[ 2] 。また本種の出現した時期はヒゲクジラ類の巨大化・分布拡大の時期と一致している[ 2] 。
これらから考えると、アザラシ[ 4] 、イルカ[ 4] 、または7 - 10メートルに達するヒゲクジラ類[ 2] などを捕食していたのであろう。生態は現在のシャチに似ていると考えられるが、体や口、歯が大きいため、単独で大きな獲物をとらえることができたと考えられる。
絶滅に関しては、地球の寒冷化によってヒゲクジラ達が巨大化し、獲物としていた小型~中型のヒゲクジラが消えた事が要因として挙げられている[ 2] 。
出典
^ a b c d Fang, Janet (30 June 2010). “Call me Leviathan melvillei” . nature news (Nature). http://www.nature.com/news/2010/100630/full/news.2010.322.html
^ a b c d e f g h i j k l m n o Lambert, Olivier; Bianucci, Giovanni; Post, Klaas; de Muizon, Christian; Salas-Gismondi, Rodolfo; Urbina, Mario; Reumer, Jelle (2010). “The giant bite of a new raptorial sperm whale from the Miocene epoch of Peru” . Nature 466 (7302): 105–108. Bibcode : 2010Natur.466..105L . doi :10.1038/nature09067 . PMID 20596020 . https://web.archive.org/web/20171201033504/https://pdfs.semanticscholar.org/6269/31c84504b36f1b2dff7f3a308873e525df6a.pdf .
^ Sample, Ian (30 June 2010). “Fossil sperm whale with huge teeth found in Peruvian desert” . guardian.co.uk. http://www.guardian.co.uk/science/2010/jun/30/fossil-sperm-whale-huge-teeth
^ a b c Ghosh, Pallab (30 June 2010). “'Sea monster' whale fossil unearthed” . BBC News (BBC). http://news.bbc.co.uk/2/hi/science_and_environment/10461066.stm
^ ICZN 1999 Article 60
^ Lambert, O.; Bianucci, G.; Post, K.; de Muizon, C.; Salas-Gismondi, R.; Urbina, M.; Reumer, J. (2010). “The giant bite of a new raptorial sperm whale from the Miocene epoch of Peru [Corrigendum]”. Nature 466 (7310): 1134. doi :10.1038/nature09381 .
^ “New Leviathan Whale Was Prehistoric "Jaws"?” . National Geographic Daily News (National Geographic). (30 June 2010). http://news.nationalgeographic.com/news/2010/06/photogalleries/100630-leviathan-mellvillei-sperm-whale-fossils-science/#whale02-scientists-skull-desert_22738_600x450.jpg
^ クジラもぺろり、古代の巨大マッコウクジラは「海の殺し屋」
外部リンク
ニュース等
動画