マイケル・ピルズベリー (英語 : Michael Pillsbury 、1945年 2月8日 - )は、アメリカ合衆国 の政治学者、官僚 、米中関係 に関する著作家[ 1] 。
経歴
1945年にカリフォルニア で生まれた。スタンフォード大学 で歴史学 を専攻し、コロンビア大学 でPhD を取得した。
1973年から1977年までランド研究所 にアナリストとして勤務し、中華人民共和国 と米国は軍事協力を行うべきとする論文L-32で当時のアメリカ政府 から注目された[ 2] [ 3] 。東西冷戦 時代は国務省 の軍備管理軍縮庁長官代行や国防総省 の政策企画局長補佐などを歴任し、カンボジア・ベトナム戦争 やアンゴラ内戦 [ 4] 、アフガニスタン紛争 などで米中の秘密工作にも従事し[ 5] [ 6] 、ジョージ・H・W・ブッシュ 政権ではアンドリュー・マーシャル の総合評価局の特別補佐官だった[ 7] 。
2003年から国防総省顧問を務めており、2020年12月に国防総省の諮問機関である国防政策委員会 (英語版 ) の委員長に任命された[ 8] 。
主張
1990年代後半のクリントン 政権時代に、中国の知識を買われたピルズベリーはペンタゴン と中央情報局 (CIA)からの指示で、中国のアメリカを欺く能力と、それに該当する行動を調査することとなった。ピルズベリーは諜報機関の資料、未発表の書類、中国の反体制派や学者へのインタビューや中国の文献を調べた。彼によれば、中国は日本 や欧米 諸国から軍事的、経済的支援を取り付け、2049年までにアメリカを超える大国になるというシナリオである「100年マラソン」と呼ばれる戦略に基づいているとする「The Hundred-Year Marathon」(邦題:China 2049[ 9] )を著し、CIAのエクセプショナル・パフォーマンス賞を受賞、元CIA長官のジェームズ・ウールジー (英語版 ) も序文に文章を寄せている。なお、ピルズベリーによると同書の出版にあたりCIA、連邦捜査局 (FBI)、ペンタゴンの査読によって削除された機密事項もあるため、書かれた米中の軍事協力は一部でしかなく、継続中のものもあるという[ 10] 。「The Hundred-Year Marathon」はワシントン・ポスト のベストセラー リストの1位にもなった[ 11] 。
ピルズベリーによれば、1973年から当時のニクソン 政権はイギリス を介して中国に軍事援助を行い、カーター 政権ではペンタゴンとCIAは中国に軍用機材を輸送し、レーガン 政権は対中武器輸出を行い、中国から武器を購入(CIAの秘密工作用やアグレッサー機 )するなど米中は軍事的に協力関係にあったとされる[ 10] 。
かつて米中の接近を推し進めた親中 派だったことへの自省も述べつつ、ニクソン政権からオバマ 政権にいたるまで、やがて民主化してアメリカの同盟国になると幻想を抱き、韜光養晦 の中国を見誤ったとする中国脅威論 を主張しており、トランプ 大統領 はピルズベリーを「中国に関する一流の権威」と高く評価し[ 12] 、中国問題についてのトランプ政権の重要な助言者とされ[ 13] [ 14] [ 15] 、トランプ政権下ではアメリカの国防政策に強い影響力を持つ国防政策委員長のポストに抜擢された。また、中国を過小評価する中国崩壊論についても中国脅威論を打ち消すための中国の情報工作だったと述べている[ 16] 。
発行物
書籍
Author of two books on China, available at National Defense University Press:
レポーならびに論文
アメリカと中国関係のレポート
ジャーナル
“Strategic Acupuncture”. Foreign Policy (Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC) (Winter 1980): 44–61. (1980). JSTOR 1148172 .
“US-China Military Ties?”. Foreign Policy (Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC) (Autumn 1975): 50–64. (1975). JSTOR 1148126 .
“A Japanese Card?”. Foreign Policy (Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC) (Winter 1978): 3–30. (1978). JSTOR 1148458 .
“Future Sino American Security Ties: The View from Tokyo, Moscow, and Peking”. International Security (The MIT Press) 1 (Spring 1977): 124–142. (1977). doi :10.2307/2538627 . JSTOR 2538627 .
脚注
^ 張國威 (2015年2月4日). “美前官員指 陸有百年欺美戰略” . 旺報 . http://www.chinatimes.com/newspapers/20150204000936-260301
^ Garthoff, Raymond L. (1983). Détente and Confrontation: American-Soviet Relations from Nixon to Reagan. Brookings Institution. ISBN 978-0-8157-3044-6 . p.696
^ Ali, Mahmud (2005). US-China Cold War Collaboration, 1971–1989. Routledge. ISBN 978-0-415-35819-4 . p.81
^ “Book Review: The Hundred-Year Marathon ”. Defence News (January 27, 2015). 2019年6月26日 閲覧。
^ Mann, James (1998). About Face: A History of America's Curious Relationship with China, from Nixon to Clinton. Knopf. ISBN 978-0-679-76861-6 . p.137–139
^ “対中国、「甘い幻想」捨てよ 米国防総省顧問 マイケル・ピルズベリー氏 ”. 日本経済新聞 (2015年11月23日). 2019年3月2日 閲覧。
^ “Michael Pillsbury Official Biography ”. 2019年3月2日 閲覧。
^ “Statement on New Appointments to the Defense Policy Board ” (英語). U.S. DEPARTMENT OF DEFENSE . 2020年12月22日 閲覧。
^ China 2049 マイケル・ピルズベリー (著), 森本 敏 (解説), 野中 香方子 (翻訳) 日経BP
^ a b “アメリカと中国が極秘裏に結んだ「軍事協定」とは?~中国戦略センター所長が明かす、ホントの米中関係~ ”. 現代ビジネス (2015年11月27日). 2019年4月2日 閲覧。
^ "Washington Post Bestsellers Feb. 15, 2015". Washington Post. February 15, 2015.
^ Tweed, David (September 27, 2018). "This Is the Man Trump Described as 'The Leading Authority on China'". Bloomberg. p. A1.
^ Swall, Lexey (November 30, 2018). “A China Hawk Gains Prominence as Trump Confronts Xi on Trade’” . ニューヨークタイムズ : p. A1. https://www.nytimes.com/2018/11/30/us/politics/trump-china-trade-xi-michael-pillsbury.html 2019年3月2日 閲覧。
^ Mayeda, Andrew (November 28, 2018). “There's No Cold War With China, Says Trump's Hawkish Adviser’” . ブルームバーグ : p. A1. https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-11-28/there-s-no-cold-war-with-china-says-trump-s-hawkish-adviser 2019年3月2日 閲覧。
^ SCHRECKINGER, Ben (November 30, 2018). “The China hawk who captured Trump's 'very, very large brain'’” . POLITICO : p. A1. https://www.politico.com/story/2018/11/30/trump-china-xi-jinping-g20-michael-pillsbury-1034610 2019年3月2日 閲覧。
^ “中国崩壊論が欺いた米国 機密文書と「最も危険な問題」 ”. 朝日新聞 (2020年2月26日). 2021年3月2日 閲覧。
関連項目