パンチカードシステム(英語: Unit record equipmentまたはPunched card system、略称:PCS)は電子計算機が登場する以前に、パンチカードを利用してデータ処理を行った際に使われた機器の総称で、カード穿孔機(キーパンチ)、分類機(ソーター)、会計機(タビュレーター)などがあった。
概要
電子計算機の発明以前、データ処理はタビュレーティングマシンの進化したパンチカードシステム(Punch Card System、PCS)と呼ばれる電気機械式機器で行われるようになった。和製英語だという主張もあるようだが、英語圏での使用例もある[1]。英語圏ではユニットレコード装置(Unit Record Equipment)、電気会計機(Electric Accounting Machine、EAM)などとも呼ぶ。
ユニットレコードとは、19世紀末から20世紀初頭にかけて使われた、1つの文書上のオブジェクトや処理に関する全情報の記録を指した言葉である。例えば、図書館の索引カードはユニットレコードの一例である。ユニットレコード用の机も製造されており、パンチカードなどで記録されたユニットレコードを格納しておく机を tub file と呼んだ。当時(1888年)の書籍には「我々は鉄道用のあらゆる車両や機関車についての記録をパンチカードまたは他のユニットレコードの形で保持しており、それらは Car Accountant's Office または他の手段で作成された」という記述も見られる[2]。ここから、パンチカードはユニットレコードの一種だが、ユニットレコードの方が幅広い意味を持つことがわかる。Markus Krajewski はこのユニットレコードの概念を発展させた人物を書誌学者のコンラート・ゲスナーだとしている[3]。
リポートや集計は作表機(別名:会計機、例えば IBM 407会計機)で行われる。ソートされたデッキを供給すると、作表機が各カードの内容をそれぞれ一行で印字したり、指定されたフィールドの値が内蔵のカウンターに加算され、特殊なパンチ穴のあるマスターカードを検出するとカウンターの値を合計値として小計・総計を印字する。
1931年: Fredrik Rosing Bull のパンチカード技術を事業化するため Groupe Bull が創業。
1931年: IBM初の乗算できるマシン IBM 600 Multiplying Punch[27]。IBM初のアルファベットを扱えるタビュレーティングマシン(完全ではない) Alphabetic Tabulator Model B とその直後にリリースされた完全アルファベット対応の ATC[26]。
1931年: ニューヨークワールド紙が、コロンビア統計局のために作られた特別なタビュレータ Columbia Difference Tabulator を "Super Computing Machine" と称した[28]。このマシンには国中(カーネギー財団、イェール大学、ピッツバーグ大学、シカゴ大学、オハイオ州立大学、ハーバード大学、カリフォルニア大学、プリンストン大学など)から利用者が集まった[29]。
1933年: IBM 401 - 数字以外の文字も扱えるようになった。毎秒150枚のカードを加算処理でき、文字データは毎秒80枚処理可能[30]。
1934年: IBM 405 - 加算機能の容量が拡張され、カウンタのグループ化の柔軟性も向上している。英字の直接印字、直接減算などが可能[31]。第二次世界大戦後までIBMの主力製品となった[32]。
1937年: 初の照合機 IBM 077 Collator[33]。このころIBMは32台の印刷機で日産500万枚から1000万枚のパンチカードを生産[34]。
^Eames, Charles; Eames, Ray (1973). A Computer Perspective. Cambridge, Mass: Harvard University Press. p. 95 なお、95ページにある1920年という日付は間違っている。詳しくは The Columbia Difference Tabulator - 1931 を参照
^Columbia Alumni News, Vol.XXIII, No.11, December 11, 1931, p.1
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原克『悪魔の発明と大衆操作』集英社〈集英社新書〉、2003年、101-103頁。
ホレリスとホレリスの初期のマシン:
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