ハインリヒ・シェンカー
ハインリヒ・シェンカー (Heinrich Schenker , 1868年 6月19日 - 1935年 1月13日 )は、オーストリア の音楽学者 である。楽曲分析 の理論のひとつ、シェンカー理論 の創始者として知られる。
生涯
オーストリア=ハンガリー帝国 ガリツィア 地方のヴィシニョフチキ(現在のウクライナ・テルノーピリ州 ヴィシニフチク (英語版 ) 生まれ。その後、ウィーン へ移住し、そこでアントン・ブルックナー に師事。ピアノ伴奏者や室内楽の演奏家として活躍する傍ら、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー 、アントニー・ファン・ホーボーケン (英語版 ) 、フェリクス・ザルツァー (英語版 ) らにピアノと音楽理論 を教える。
著作
雑誌を二つ(Der Tonwille [ 1] とDas Meisterwerk in der Musik [ 2] )出版し、そのなかでシェンカー理論のアイディアを展開している。シェンカーの理論は、演奏家向けの理論であることが、ベートーヴェン の後期ピアノソナタのシェンカー版に分析が付記されていることからわかる。
1932年 、シェンカーは『5つの基本線表』[ 3] を出版する。この著作においては、シェンカー理論によって、5つの曲が分析されている。
シェンカーの死後、未完の音楽理論書『自由作曲法』[ 4] が出版される。
シェンカーの理論を支持する人たちの熱心な普及活動により、シェンカー理論はアメリカで大流行を巻き起こし、1960年代 には、西洋音楽における楽曲分析理論の世界的な標準理論となった。一時期はシェンカー理論に基づく教科書も盛んに出版されていた。このためアメリカ合衆国では、「自然の諸原理に還元された和声論」に基づくパリ音楽院方式のデュボワ和声や、「機能和声理論」に基づくヴィルヘルム・マーラー の和声教本が全くと言ってよいほどにまで定着せず、もっぱらゴットフリート・ヴェーバー で示されたローマ数字による和声分析 の改良と発展のみが行われてきた。アメリカ合衆国では現在でもこの伝統が守られている。
2000年にはシェンカーの遺稿をまとめた『演奏の技法』[ 5] が出版された。
シェンカーとフルトヴェングラー
フルトヴェングラーは、シェンカーが1912年 に著した『Beethovens Neunte Sinfonie (ベートーヴェンの第9交響曲)』を読んで、感銘を受けた。1920年 にフルトヴェングラーはウィーンに住むシェンカーを訪れ、シェンカーの音楽性と人間性に触れて、深く共鳴する。以後、フルトヴェングラーはウィーンに出向くたびにシェンカーを訪れ、自分が指揮する古典作品をできる限りシェンカーとともに研究し、一方で、当時不遇をかこっていたシェンカーの就職斡旋を働きかけたとされる。
フルトヴェングラーがシェンカーに最も共鳴したのは「遠聴 (Fernhören) 」という概念だったといわれる。これは曲の遠く離れた地点の連関やその必然性を聴き取る力とその姿勢を指し、シェンカーがドイツ古典音楽を特色づけたものとされる。
著作の邦訳
脚注
外部リンク