デルタ IV ヘビー (デルタ9250H) は、デルタ IV ロケットシリーズの最大の構成である。2004年 に初めて打ち上げられた[ 2] 。2018年 にファルコンヘビー が打ち上げられるまでは、その打ち上げ能力は運用中の打上げシステム としては世界最大であった[ 3] 。最後の機体は2024年 に打ち上げられた。
概要
デルタ IV ヘビーの構成は、デルタ IV のモジュラーシステムのメインロケットであるコモン・ブースター・コア (CBC) を、同一形式の1基をメインとして中央に据え、2基を液体ロケットブースター としてその両脇に配したものとなっている。推進剤[ 4] は3基とも同量であるため[ 5] 、離床時には3基全てのロケットを全力運転した後、44秒後からは中央のロケットの推力を55%まで下げ、ブースター分離後のために温存する。ブースターは打ち上げ後242秒後に燃焼終了し、続いて中央のロケットの推力を最大にした後、ブースターは分離される。中央のロケットはその86秒後に燃焼終了し、2段目以降を分離する。[ 6]
初打ち上げは2004年 だが、これは試験用ペイロードを搭載したが、予定よりも低い軌道で分離され部分的失敗に終わった[ 7] 。最初の実用ペイロードはDSP-23 衛星で2007年 に打ち上げに成功した。2013年 までに5機の国家偵察局 の画像と電子偵察衛星 の打ち上げに使用された。[要出典 ]
2023年 6月に最後の機体の製造が完了した。後継としてはULA のヴァルカン で6本の個体ロケットブースター構成が予定された[ 8] 。これは2024年4月9日(日本時間4月10日)に打ち上げられ、成功した[ 9] 。
諸元
デルタIVヘビーの打ち上げ能力:
低軌道 (LEO), 200 km × 28.7°: 28,790 kg (63,470 lb) [ 10]
低軌道 (ISS), 407 km × 51.6°: 25,980 kg (57,280 lb) [ 11]
静止トランスファー軌道 (GTO): 14,220 kg (31,350 lb)[ 10]
静止軌道 (GEO): 6,750 kg (14,880 lb) [ 10]
月遷移軌道 (LTO) 10,000 kg (22,000 lb) / 火星遷移軌道 8,000 kg (17,600 lb) [ 12]
デルタIVヘビー仕様の打ち上げ総重量はおよそ733,000 kg (1,616,000 lb) である。
打ち上げ実績
初打ち上げは2004年 で、ボイラープレート (英語版 ) を積載して打ち上げられたが部分的に失敗した。液体酸素系のキャビテーション が原因で両方のブースターが予定よりも8秒早く停止し、コアエンジンは9秒早く停止した。この結果、速度が不足し第2段でも補いきれなかったため、ペイロードは予定よりも低い軌道で分離された[ 7] 。
2014年 12月、デルタIVヘビーは無人のオリオン多目的宇宙船 の試験打ち上げ (EFT-1 ) に使用された。当初の打ち上げ予定の12月4日から1日遅れて[ 13] 、12月5日に打ち上げられ、成功した[ 14] 。
2018年 8月12日には、太陽探査機パーカー・ソーラー・プローブ の打ち上げに成功。太陽に肉薄する軌道に投入するために必要な多大なΔv[ 15] を実現するための抜擢であった。同機はその近日点が極端に太陽に近い軌道により、人類が作ったものの中で史上最も加速された物体(約200km毎秒に達する見込み)となる。
日付
ペイロード[ 16]
射場
結果[ 16]
2004年12月21日
DemoSat , Sparkie / 3CS -1 and Ralphie / 3CS -2
ケープカナベラル A
部分的失敗C
2007年11月11日
DSP-23
ケープカナベラルA
成功
2009年1月18日
Orion 6 / Mentor 4 (USA-202 / NROL-26)
ケープカナベラルA
成功
2010年11月21日
Orion 7 / Mentor 5 (USA-223 / NROL-32)
ケープカナベラルA
成功
2011年1月20日
KH-11 Kennen 15 (USA-224 / NROL-49)
ヴァンデンバーグ B
成功
2012年6月29日
Orion 8 / Mentor 6 (USA-237 / NROL-15)
ケープカナベラルA
成功
2013年8月28日
KH-11 Kennen 16 (USA-245 / NROL-65)
ヴァンデンバーグB
成功
2014年12月5日
オリオンカプセル EFT-1
ケープカナベラルA
成功
2016年6月11日
Orion 9 / Mentor 7 (USA-268 / NROL-37)
ケープカナベラルA
成功
2018年8月12日
パーカー・ソーラー・プローブ
ケープカナベラルA
成功
2019年1月19日
KH-11 17 (USA-290 / NROL-71)
ヴァンデンバーグB
成功
2020年12月11日
Orion 10 (USA-311 / NROL-44)
ケープカナベラルA
成功
2021年4月26日
KH-11 18 (USA-314 / NROL-82)
ヴァンデンバーグB
成功
2022年9月24日
KH-11 Kennen 18 (NROL-91)
ケープカナベラルA
成功
2023年 6月22日
Orion 11 (NROL-68)
ケープカナベラルA
成功
2024年 4月9日
Orion 12 (NROL-70)
ケープカナベラルA
成功
^A ケープカナベラル空軍基地 SLC-37B から打ち上げ
^B ヴァンデンバーグ空軍基地 SLC-6 から打ち上げ
^C CBC が予定より早く燃焼停止したため計画より低い軌道に投入
競合する打上げ機
出典
^ “Solar Probe Plus, NASA’s ‘Mission to the Fires of Hell,’ Trading Atlas 5 for Bigger Launch Vehicle ”. Space Now . July 26, 2014 閲覧。
^ "Boeing Delta IV Heavy Achieves Major Test Objectives in First Flight" Archived 2012年4月19日, at the Wayback Machine ., Boeing, 2004, accessed March 22, 2012
^ “Mission Status Center ”. SpaceflightNow . July 2014 閲覧。 “"ULA デルタ 4-ヘビーは現在、世界最大のロケットで私達の国の国家安全保障のペイロードを東と西海岸の両方から打ち上げる事を実現する。"”
^ ここでは酸化剤と被酸化剤(燃料)の総称
^ またクロスフィードのような機構は持たないため
^ “Delta IV Payload Planner's Guide, June 2013 ”. United Launch Alliance . July 2014 閲覧。
^ a b “Delta 4-Heavy investigation identifies rocket's problem ”. Spaceflight Now (2005年3月16日). July 2014 閲覧。
^ “ULA’s Delta rocket assembly line falls silent ” (英語). Spaceflight Now (2023年6月20日). 2023年8月3日 閲覧。
^ “ULA、デルタIVヘビーの最終ミッションに成功! 米国家偵察局の衛星を打ち上げ ”. sorae (2024年4月10日). 2024年4月13日 閲覧。
^ a b c “Delta IV Launch Services User's Guide ”. ユナイテッド・ローンチ・アライアンス . pp. 2–10,5-3 (June 2013). 2013年10月14日時点のオリジナル よりアーカイブ。2013年1月 閲覧。
^ “Delta IV Data Sheet ”. Space Launch Report . July 2014 閲覧。
^ Ray, Justin (2004年12月7日). “The Heavy: Triple-sized Delta 4 rocket to debut ”. Spaceflight Now. 2004年12月11日時点のオリジナル よりアーカイブ。2014年5月13日 閲覧。
^ Bergin, Chris (2012年1月18日). “EFT-1 set to receive Spring, 2014 launch date after contract negotiations ”. NASASpaceFlight.com. 21 July 2012 閲覧。
^ “Second Stage Ignites as First Stage Falls Away ”. 2014年12月5日 閲覧。
^ 地球軌道からの場合、太陽系脱出に必要なΔvより大きい。
^ a b “Delta-4 ”. Gunter's Space Page . 15 March 2018 閲覧。
外部リンク