デヴィッド・エリック・グロール (David Eric Grohl、1969年 1月14日 - )は、アメリカ のロック ミュージシャン 。フー・ファイターズ のボーカル ・ギター 、ニルヴァーナ の元ドラマー 。
2016年にローリング・ストーン誌 の「グレイテスト・ドラマー・オブ・オールタイム」で27位に選ばれ[ 1] 、2014年にニルヴァーナのメンバーとして、2021年にフー・ファイターズのメンバーとしてロックの殿堂 入りした。
経歴
生い立ち - 初期の音楽活動
オハイオ州ウォーレンで生まれる。母親は教師で、父親であるJames Harper Grohl(1938 - 2014)は当時、記者を務めていた[ 2] 。幼少期にバージニア州 スプリングフィールドへ移る。転居してから3年後に両親が離婚し、姉と共に母に引き取られる。
12歳の時にギターを始める。数年後、熱烈なパンク・ロック ファンであった従姉の影響でパンクに目覚める。その後、友人とバンドを結成し最初はギターを担当していたが、しばらく後にドラムに転向する。13歳の時にシカゴのThe Cubby Bearにて、初コンサートを行った[ 3] 。
バージニア州のトーマス・ジェファーソン高校へ入学。しかし、過度の大麻吸引をしていた為、母親によってカトリック系のビショップ・アイルトン高校へと転入させられる。2年間は在籍していたものの、バージニア州のアナンデール高校へと転入した。
高校生活の間に、グロールは幾つかの地方バンドで演奏していた。Freak Babyというバンドでの活動中、ベースメンバーが脱退したのを契機に、ドラマーへと転向した。これを契機にFreak Babyはバンド名をMission Impossibleへと改名し、グロールはバンドの再建に努めた[ 4] 。
スクリーム(1986–1990)
ドラムを叩くグロール(1988年)
17歳で高校を中退[ 5] すると、ドラマーのKent Stax が脱退したスクリーム へ加入。加入するに当たり、グロールは年齢を20歳に偽っていた[ 6] 。4年間の活動期間内で、ライブアルバム、Your Choice Live Series Vol.10 、スタジオアルバムのNo More Censorship とFumble に参加した。Fumbleに収録されている"Gods Look Down"では、作詞とボーカルを務めた。
スクリームに在籍中、グロールはメルヴィンズ のファンになり、バンドメンバーとも交友関係を始めた。
1990年にスクリームは唐突に解散してしまう。グロールはメルヴィンズのバズ・オズボーン に電話で相談し、ニルヴァーナが新しいドラマーを探していることを知る。バズはニルヴァーナのノヴォセリック にグロールの電話番号を教え、彼をシアトル に誘った。グロールはドラムセットだけを持ってシアトルへと渡る。その後しばらくカート・コバーン の家に寝泊りし、ニルヴァーナのオーディションを受ける。過去に在籍したドラマーの技術に不満を持ち続けていたコバーンは、グロールのドラミングを絶賛、即座に加入が決まった[ 7] 。
ニルヴァーナ
デイヴ加入後にリリースされたアルバム『ネヴァーマインド 』は全世界で2,000万枚近いヒットを記録し、ニルヴァーナを一躍スターダムに押し上げる。『ネヴァーマインド』のヒットには、コバーンのソングライターとしての才能もさることながら、グロールの優れたドラミングとコーラスワークも貢献していると評価する専門家やファンも少なくない。
『イン・ユーテロ 』からシングルカットされた『ハート・シェイプト・ボックス』のカップリング曲「マリゴールド」ではグロールが作詞・作曲・ボーカルを務めており、これはニルヴァーナのオリジナル曲では唯一、コバーン以外のメンバーによる作品となっている。
1994年 4月にコバーンが自殺したことでニルヴァーナは解散。2014年 にはマイケル・スタイプ の協力により、ロックの殿堂 入りを果たした[ 8] 。
フー・ファイターズ
ニルヴァーナ解散後、グロールはニルヴァーナ時代から密かに作り続けていた楽曲のレコーディングを開始。ほぼ全ての楽器を自ら担当し、1995年、それらの楽曲をソロプロジェクト「フー・ファイターズ 」のファーストアルバムとしてリリースする。その後、ギタリストのフランツを初めとするメンバーを集め、フー・ファイターズはバンドとして活動を開始し、ボーカル兼ギターのフロントマンを務める。
これまで複数回にわたってグラミー賞 を受賞し、2021年には「ロックの殿堂 」入り[ 9] 。のちのインタビューで「もう少しマシなバンド名にしておけば良かった」とも話している。
その他の音楽活動
2011年
2004年にヘヴィメタル のプロジェクト「プロボット 」を始動させる。レミー・キルミスター (モーターヘッド )、キング・ダイアモンド 、スネイク(ヴォイヴォド )、トム・G・ウォリアー(セルティック・フロスト )、マックス・カヴァレラ(元セパルトゥラ 、ソウルフライ 、カヴァレラ・コンスピラシー )、クロノス(ヴェノム )などの多彩なヴォーカリストを迎えた同名のアルバムを発表した。
その他、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ (以下、QOTSA)、キリング・ジョーク 、キャット・パワー 、ガービッジ 、ナイン・インチ・ネイルズ などの作品にドラマーとして参加。QOTSAではフジ・ロック・フェスティバル でドラマーとして帯同した。
2009年に、QOTSAのジョシュ・オム とレッド・ツェッペリン のジョン・ポール・ジョーンズ と共にスーパーバンド「ゼム・クルックド・ヴァルチャーズ 」を結成し、ドラムを担当[ 10] 、同年11月にアルバムをリリースした。
また、ポール・マッカートニー と交流を持ち、2009年のグラミー賞 でのライブ、2009年のリヴァプールにおけるチャリティ・ライヴ「チルドレン・イン・ニード」で共演をしている。
2013年には、ドキュメンタリー・フィルム『サウンド・シティ - リアル・トゥ・リール』で初監督[ 11] 。
人物
2018年
使用器材
エレクトリック・ギター は、ほぼギブソン 製のスタンダードモデルを使用。主に「SGカスタム 」「エクスプローラー 」「ファイヤーバード 」「レスポール 」「ダヴ 」などを扱う。バンド初期からのメインギターである「トリニ・ロペス・スタンダード 」は、90年代にたまたま楽器屋で見かけた際に、特徴的なダイヤモンド・ホールに惹かれ購入したものらしい。チェリーレッドや希少なオリジナルのペルハムブルーフィニッシュ等、何本も所有している。ライブでは演奏性に優れたES-335 の改造モデル「DG-335」をメインで使用している。
ドラムセット についてはニルヴァーナ時代は「TAMA(星野楽器) 」製、フーファイターズでは「ドラム・ワークショップ(DW) 」製などが確認され「DW-ICON」というスネアドラム の限定モデルがある。シンバルは「ジルジャン 」製を使用している。
脚注
^ Greene, Christopher R. Weingarten,Jon Dolan,Matt Diehl,Ken Micallef,David Ma,Gareth Dylan Smith,Oliver Wang,Jason Heller,Jordan Runtagh,Hank Shteamer,Steve Smith,Brittany Spanos,Kory Grow,Rob Kemp,Keith Harris,Richard Gehr,Jon Wiederhorn,Maura Johnston,Andy (2016年3月31日). “100 Greatest Drummers of All Time ” (英語). Rolling Stone . 2024年12月2日 閲覧。
^ HOWLAND - James Harper Grohl, 75, of Howland Township and Walnut Creek, Calif., passed away peacefully on Wednesday, Aug. 6, 2014, with his family at his side.
^ Dave Grohl: How To Make An Arena Feel Like A Punk Club
^ Azzerrad, Michael (1993). Come as You Are: The Story of Nirvana. Doubleday. p. 148. ISBN 0-385-47199-8 .
^ Teenage Letter Confirms Dave Grohl Indeed Dropped Out of High School
^ "The Man Who Fell To Earth" Arena 2002
^ Nirvana Live Guide - 1990
^ デイヴ・グロール、ロックの殿堂入り式典でのニルヴァーナのパフォーマンス裏話を語る
^ “フー・ファイターズ、2021年選出の「ロックの殿堂」に初ノミネートでの殿堂入り&デイヴ・グロールはニルヴァーナの殿堂入り以来2度目 ”. Barks (2021年5月13日). 2021年6月13日 閲覧。
^ ツェッペリン+フー・ファイターズ+QOTSAのスーパー・グループ誕生
^ サウンド・シティ - リアル・トゥ・リール Sound City - Real To Reel - Sony Music Japan
^ デイヴ・グロール、コーヒーの飲みすぎで病院に
^ Grohl: 'Nirvana Unplugged Was A Nightmare' contactmusic.com 2007年11月22日
^ Punk Rock Eats Its Own: A Film About Face to Face [DVD]
参考文献
デイヴ・グロール『デイヴ・グロール自伝 THE STORYTELLER 音楽と人生――ニルヴァーナ、そしてフー・ファイターズ』DU BOOKS 、中村明美訳、2022年。
外部リンク