ディー川(ディーがわ、英語: River Dee)は、イギリスのスコットランド東部、アバディーンシャー及びアバディーンを流れる河川である。総延長140km、流域面積は2,100km2[1][2]。
流路
スコットランド東部にあるグランピアン山脈の中央部、ケアンゴームズ国立公園(英語版)内にあるケアンゴーム山地(英語版)のベン・マクドゥイ山(標高1,310m)とブレリアック山(英語版)(標高1,295m)の付近、標高1,200m地点の「ディーの泉」を水源とする。イギリスの主要河川の中では最も高地に水源を持つ[1][3][4][5][2]。
最上流部では山地内部を南流し、国立公園の南端で東へ転ずる。その後は河口までほぼ東流し、最終的にアバディーンで北海へ流入する。河口部を除き船舶の航行はできない[1][3][4][5][2]。
ディー川沿岸(ディーサイド)の自然豊かな谷は、19世紀以降に例年イギリス王室が避暑地として利用することから「ロイヤル・ディーサイド」の通称を持つ。バルモラル城はじめ王室ゆかりの名所や古城が多く、ハイランド地方有数の観光地となっている。またヴィクトリア朝期の建物が多いことから「ヴィクトリアン・ヘリテージ・トレイル」(Victorian Heritage Trail)とも呼ばれている[3][4][5][6]。
流域の特徴
上流部
上流部は山地の峡谷を急流をなして流れ、何段もの滝を持つ。特に源流部にはU字谷や圏谷といった氷河地形がみられる。これは第四紀に流域全体が氷床に覆われていたことによる[3][4]。
主な集落にブレーマー(英語版)、バラター(英語版)など。ブレーマー付近にはブレーマー城(英語版)があり、バルモラル城はブレーマーとバラターの間に位置する。バルモラルの付近はマスの好漁場でもある[1][3][5][6]。
下流部
アボイン(英語版)より下流は広い谷となる。両岸は肥沃な農業地帯で肉牛などの牧畜が盛んであるほか、サケ漁などが行われる[3]。
河口のアバディーンはスコットランドでも有数の都市であり、ディー川とドン川(英語版)の河口に挟まれる位置にある。港湾都市として発展を遂げ、グラスゴー、エディンバラに次ぐ第3の都市となった。北海油田を支える中心港であり、ヨーロッパ最大の石油や天然ガスの供給基地となっている。またニシンやタラの漁港でもある。港湾改修のためにディー川の河口部が付け替えられ、1872年に可航水路が建設された[1][6][2]。
主な集落にはアボイン、アバディーンのほか、バンコリー(英語版)がある。バンコリーとアバディーンの間に、クラテス城(英語版)、ドラム城(英語版)がある[6]。
主な支流
ギャラリー
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ブレリアックにある水源「ディーの泉」。
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バルモラル城付近。
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アボインにて。
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バンコリーにて。
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アバディーン市街地、キング・ジョージ6世橋。
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河口とアバディーン港。
脚注
- ^ a b c d e f g 『世界地名大事典』(2016)。
- ^ a b c d 『全世界の河川事典』(2013)。
- ^ a b c d e f 『ブリタニカ』小項目4(1991)。
- ^ a b c d 『日本大百科全書』(1987)。
- ^ a b c d 『コンサイス 外国地名事典』(1998)。
- ^ a b c d 『地球の歩き方 A04』(2020)。
参考文献
- 『世界地名大事典 4 ヨーロッパ・ロシア〈サ-ハ〉』 朝倉書店、2016年、1852頁「ディー川」項(田中耕市著)。
- 『日本大百科全書 16』 小学館、1987年、32頁「ディー川」項(小池一之著)。
- 『ブリタニカ国際大百科事典 4 小項目事典』 TBSブリタニカ、1974年初版/1991年第2版改訂、506-507頁「ディー川」項。
- 『コンサイス 外国地名事典 〈第3版〉』 三省堂、1998年、591頁「ディー川」項。
- 高橋裕ほか編『全世界の河川事典』 丸善出版、2013年、684-685頁「ディー川」項(武藤裕則著)。
- 『地球の歩き方 A04 湖水地方&スコットランド 2021-2022版』 ダイヤモンド・ビッグ社、1996年初版/2020年改訂14版第1刷、270、272、280-282頁。
関連項目