ダイアクロン(Diaclone)は、タカラトミー(旧・タカラ)が展開する変形合体ロボット玩具。1980年から1984年までの旧シリーズ(1980年版)と、2016年からの新シリーズ(2016年版)が展開されている。
ミクロマンで重視された「可動人形とそれが乗り込む変形メカ」の路線を練り直し、3cmの隊員と複雑な変形合体ロボットの取り合わせを基本として展開された玩具シリーズ。TV媒体に依存しないタカラのオリジナルキャラクターのひとつで、1980年に誕生した[1]。
タカラ社内で1978年に立ち上がったTVアニメーション企画の一つ『戦艦ロボダイオン』やミクロマンの未発売商品を基に製品開発が進められ[2]、「ダイヤのように固い友情、サイクロンのように力強い仲間たち」[1][3]から「スケールゾーンダイヤクロン」と命名されたのち[2]ダイアクロンと改名された。その裏には、当時の男児向け玩具の花形だったポピー社のロボット玩具超合金シリーズを超えるべく、金属よりも硬いダイヤモンドで市場に嵐(サイクロン)を巻き起こそうという決意が込められている[2]。
初期のSF風の未来型マシンはスタジオぬえによる緻密なメカデザインで、当時の玩具では珍しい1/60の統一スケールであった[1][4][注 1]。そのコンセプトはディオラマ作りにも一役買っており、小型フィギュアとの組み合わせを重視した玩具やプラモデル(ゾイドなど)が増えるきっかけを作っている。
1982年になると、実際の乗り物を精巧にミニチュア化し、ロボットに変形する『カーロボット』をはじめとした「リアル&ロボット」シリーズが主体となっていく。児童の人気と玩具の売上こそ更に上がったものの、製品サイズの関係上それまでの統一スケールを放棄しなければならなくなり[注 2]、結果、隊員との連携が希薄になった。その一方で、パワードスーツを主軸としたプラモデルが日東科学から発売され、本来のターゲット年齢より上の層にもダイアクロンの名が広がることとなった。
1984年にアメリカにてハズブロによるダイアクロンと『ニューミクロマン』の『ミクロチェンジシリーズ』そして他社の変形ロボットを混合し新たな設定を与えられた『トランスフォーマー』が大ヒットし、翌年に日本へ逆輸入されるとともにダイアクロンシリーズは発展的解消となった[注 3]。
2015年10月には「新生ダイアクロン」(以下2016年版)として35年ぶりのシリーズ復活を宣言、同時に「ダイアバトルスV2」を第一弾とする玩具展開を発表した。翌年の5月にダイアバトルスV2が発売、それを皮切りに新型パワードスーツやビッグパワードGVなどの1/60スケールに統一された大小さまざまなSF風変形合体ロボットの製品展開がなされている。商品開発に際しては、初期ダイアクロン以外の過去のタカラ商品からも意匠やギミック、プレイパターンが意識的に取り入れられている[13]。
2024年にはハイターゲット向けブランド「T-SPARK」の一IPとして組み込まれている[14]。
198X年、地球の核に未知のエネルギー「フリーゾンエネルギー」が発見された。後の199X年には世界の5箇所に「マクロ・ゾーン」が設立され、そこに設置された「ゾーン・コンピューター」により管理される。そのゾーン・コンピューターを日本にある「ランド・マスター」が統括し、人類には明るい未来が約束されていた。しかし、宇宙の彼方からやって来たワルダー軍団がフリーゾンエネルギーを狙い侵略を開始した。ランド・マスターはワルダー軍団に対抗する為、巨大ロボによる「ダイアクロン隊」を結成、ダイアクロン隊とワルダー軍団の戦いが始まった。
202X年代初頭、数十年にわたる戦いの末にエネルギー枯渇の限界に瀕したワルダー軍団は、地球のフリーゾンを吸い尽くすため最終作戦を下した。それを阻止するため、ダイアクロン隊はワルダー軍前線基地がある月面へ全戦力を注ぎ、戦いの末に勝利する。ワルダー星は壊滅して平和が訪れ、第一次対ワルダー防衛戦の暫定終結が宣言された。
しかし203X年代に入り、各星に駐在していたワルダー残存軍が集結し、地球を襲う。武装解除したマシンではなすすべがなく、ついにランド・マスターがある日本エリアの侵入を許してしまう。月面基地で密かに開発した新型マシンによって難を逃れたものの、未だに脅威は去っていない。非常事態と判断したランド・マスターは「ネオアタックシステム」を発令、新生「ダイアクロン隊」を結成する。ここに第二次対ワルダー防衛戦が開始された。
ダイアクロンは前述のとおり小型の隊員フィギュアとの連携を重視したシリーズであり、カーロボット中盤までは必ずといっていいほどフィギュアの搭乗スペースが存在していた。カーロボット登場時に統一スケールが廃止された頃から次第にフィギュアとの連携が重視されなくなり、末期には搭乗スペースが存在しない(最初から想定していない)アイテムも発売している。
隊員フィギュアは基地遊びのできるギリギリの大きさ(磁石を含めて約2.8センチ)にまで縮小し、なおかつ肩と股間が軸可動することでプレイバリューを高めている。デザインは宮武一貴が手掛けており[15]、開発部ではそのサイズから「インチマン」とも呼ばれていた。隊員の足裏には磁石が内蔵されており[注 4]、ロボットなどに埋め込まれている鉄板に立たせることができた[注 5]。発売時期により隊員の仕様が異なり、ボディのダイカスト比率も異なっている。2016年版隊員もダイカストを使用していないことを除けば基本的に同じ仕様だが、肘・膝・腰の可動が追加され[注 6]、足の磁石もネオジム磁石となり足裏に埋め込まれている。
合体アイテムは一部を除いてセット販売と単品販売が存在する。また、パワードスーツなどの一部商品をプラモデルにリメイクしたアイテムも発売していた(※が付いているアイテム。ガンプラブームに応じて発売されたリアルカラーも存在する)。組み立て式の隊員フィギュアも付属するが、磁石が無い分全高が低くなっている。
2016年版では再度1/60を統一スケールとした上でロボットと隊員フィギュアとの連携が復活、以降はそれを重視したアイテムが発売されている。また、各商品には直径3mmまたは4mmの円柱軸とその軸受穴、その他数種類の共通規格ジョイントが設計されており、武装や取り外したパーツを異なる商品に装着・接続可能にするなど、商品間での連携も強化されている。
商品パッケージにはダイアモンドで形作られたようなデザインの全商品共通タイトルロゴの他、ダイアクロン隊側の商品にはロボットベースの顔面を基調にしたトレードマークが使われている。これらは2016年版にも引き継がれている。
前述までのSFメカとは異なり、実在する自動車や飛行機などが変形してロボットとなる。後期の主力商品となったが、この頃から隊員との連携が希薄になっていく。ロボットベースの顔面を基調にしたトレードマークの代わりに、カーロボットシリーズまたはリアル&ロボットシリーズ独自のロゴが使用されている。
自動車が変形してロボットとなる。設定上では、実車に偽装することで市中に潜みながら人々を警護するとされている[18]。スケールは約1/43。隊員を搭乗できるスペースがある。
F15ロボとも呼ばれる。F-15イーグル戦闘機が変形してロボットとなる。2種のカラーバリエーション(青と銀色)がある。コックピットに隊員が搭乗できる。
トレインロボは、後に6台セットや限定版の色替えタイプも発売された。金型自体は流用のため実車と形態は一致しない、いわゆる鉄道模型で言うところの「タイプ」ものといえる。
6体の建設工作用車両がそれぞれロボットに変形、さらに6体合体して巨大ロボットとなる。単体はミニカーほどの大きさのため、隊員の搭乗はできない。後期型は合体ジョイントが改良されている。トレインロボ同様、カラーバリエーションが存在する。
トレードマークはダイアクロン隊共通のロボットベース顔面を基調としたものではなく、後述するワルダー軍団の指揮官・インガム将軍のバストアップをメインにした独自のものがパッケージに使われており、2016年版ワルダー軍団商品にも引き継がれている。
2015年に「新生(リブート)ダイアクロン」として商品展開を発表した。デザインは初期のSF風未来型マシンを継承したものとなっており、隊員フィギュアとの連携も復活している。世界観も旧作を継承しており、ブックレットやオフィシャルサイトにも旧作の結末が描かれている。ストーリーは旧作の最終決戦から十年以上経過しており、旧マシンは平和利用のため武装解除した設定となっている。
なお旧カーロボットシリーズからはバトルコンボイの後継機が製品化されているが、実車への偽装要素を排除して他リブート商品と同様のSF風多用途戦闘マシンとしての要素を強調することで[19]、トランスフォーマーシリーズの「総司令官コンボイ(オプティマスプライム)」との差別化を図っている。
またカラーリングや一部パーツの造型を変更した商品のいくつかは、タカラトミー公式通販サイト「タカラトミーモール」での期間限定受注またはイベントでのみ発売されている(商品名の後ろに★が付いているアイテム)。
「DIACLONE ESSAY」は1980年代前半に、タカラが発行していたホビー雑誌『デュアルマガジン』のNo.11からNo.12で掲載されたダイアクロンの特集記事。中原れいや幡池裕行によるイメージイラストや設定に関する緻密な考証が話題を呼んだ。
本シリーズの玩具は1984年から展開されたハズブロの『トランスフォーマー』シリーズに転用された。日本でも1985年より『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』のタイトルでアニメ放送および玩具展開が行われた。玩具はダイアクロン版から隊員が削除され、カラーリングが変更されている商品も多い。
また、1990年に展開された『トランスフォーマーZ』はダイアクロン同様、基地とマイクロトランスフォーマーの連携が基本の遊び方となっている。その際にビッグパワードやコズモローラー等を参考にプレイバリューや変形機構が検討されており、「攻撃参謀ソニックボンバー」の変形時に首がせり出すぜんまいギミックは2016年版ダイアバトルスV2に引き継がれている[25]。
更に「総司令官ダイアトラス」ら3体のロボットが合体する超巨大戦艦の名称が『ビッグパワード』である点や、続編の『トランスフォーマー リターン・オブ・コンボイ』の「グランダス」の通称が『ロボットベース』である事など度々ダイアクロンのオマージュが見られる[12]。