ジェホロサウルス
復元骨格
地質時代
前期白亜紀
分類
学名
Nanyangosaurus Xu et al. , 2000
種
J. shangyuanensis Xu et al. , 2000,タイプ種
ジェホロサウルス (学名 :Jeholosaurus )は前期白亜紀 に生息していた鳥盤類 恐竜 の属の1つである。草食で小型の鳥脚類 と考えられ、真鳥脚類 である可能性があるとされていたが、現在では鳥脚類ですらなくテスケロサウルス類に含められている[ 1] 。
発見と命名
ジェホロサウルスの最初の2体の標本は2000年に中国遼寧省 、北票市 近郊の陸家屯で発見され、徐星 、汪筱林および尤海魯により命名、記載された。タイプ種 であり現在のところ唯一の種は Jeholosaurus shangyuanensis である。属名は「熱河 (Jehol)省のトカゲ」の意味で、熱河省は現在の遼寧省西部から河北省 北部にかけて存在した歴史的な省である。種小名 は化石の発見地を含む地域名である上圓(Shangyuan )鎮にちなむものである。[ 2] 。
ジェホロサウルスの属の基準となるホロタイプ 標本はIVPP V 12529 であり、この標本は義県層 の白亜紀 前期アプチアン の1億2500万年前の地層から発見された。この地層は凝灰岩 の点在する河成性の砂岩 であり、半径80-100 kmを全て埋めてしまうような巨大な火山噴火があったと推定される。ホロタイプは潰れた頭骨と部分的な体骨格で構成される。この種のものとされる第2の標本にIVPP V 12530がある。この標本は保存状態が良く、おそらくホロタイプの個体より小型で、頭骨と複数の頸椎で構成される[ 2] 両標本とも幼体もしくは少なくとも亜成体の個体のものである[ 3] 。
特徴
大きさ
ジェホロサウルスは小型で二足歩行 の草食動物 である。標本は幼体のものであるため成体の正確な大きさを推定するのは困難である[ 3] 。ホロタイプは全長71.1 cm、尾の長さは35.6 cmで全長の半分近い。頭骨の長さは6.3 cmで下顎骨 は左右とも5.9 cmである。前肢の長さは25.4 cm、後肢の長さは33 cmである。大腿骨 の長さは9 cmで脛骨 の長さは10.7 cmである[ 2] 。
形態
2標本とも頭骨は不完全で部分的に修復されている。眼窩 が頭骨に対して非常に大きく、頭骨の全長の40%におよぶ。口吻部は短く頭骨長の40%である。どちらの特徴からも幼体の個体のものであることが示唆される。
前上顎骨 に6本、上顎骨 に少なくとも13本の歯がある。後方の上顎骨歯は植物食の歯に似た扇型であるのにもかかわらず、前方の前上顎骨歯は幅が狭くて長く、肉食恐竜のものに似ている。このことからジェホロサウルスは雑食性 であり動植物両方を食べていたと考えられる。
上顎骨に深く入り込んだ縁があることから、筋肉質の頬が存在したことが示唆される。鼻骨 には背外側の大きな鼻骨孔 (英語版 ) と正中窩がある。眼瞼骨 は保存されていない。頸椎と尾椎が保存されているものの、正確な数は不明である。大腿骨は弓なりで、第四転子 は大転子 (英語版 ) よりわずかに低く、大転子の1/3の幅である。両者は浅い裂け目で隔てられている。大腿骨下側の顆の間の(前)伸筋溝がない。第四転子はかなり上の方についている。足には4つの中足骨 があり、そのうち第3中足骨が最長で5.5cmである。第3中足骨は他の中足骨より前に突き出ている。第1中足骨は後方にあり、上部は腓骨 に向かって横方向に細くなっている[ 2] 。
ジェホロサウルス固有の特徴としては鼻骨孔 (英語版 ) が背外側に拡大していること、方形頬骨窓 (英語版 ) が方形頬骨 の最大長の25%より大きいこと、方形頬骨が頭骨の高さの30%より小さいこと、前歯骨 (英語版 ) の長さが前上顎骨 の長さの1.5倍近いこと、歯骨 が角骨 (英語版 ) の後方の境界近くまで伸びていること、第3趾の末節骨 が他の第3趾の趾骨 よりも長いことがあげられる[ 2] 。
分類
ジェホロサウルスは鳥盤類 であり[ 2] 、恥骨 の突起は前方に突き出て腹部を支える一方で、下側後方にも突き出て、坐骨 と平行していて、鳥盤類特有の4つの突起がある骨盤構造になっている。
記載者らはジェホロサウルスを特定の科に分類せず、鳥盤類のincertae sedis とした。後眼窩窓が小さい、方形頬骨に孔がある、方形骨孔が大きい、下顎に外下顎窓がないといった特徴から比較法を用いて、基部真鳥脚類との類似性を指摘した。
しかしながら、記載者らはさらに前上顎骨が涙骨まで達していないことや、顎関節が高く前上顎骨脛骨が上顎骨と同じ水準にあることなど基部鳥脚類の特徴がある一方で、脛骨の転子が大きく、前にあることなど、さらに派生的な真鳥脚類の特徴があると指摘している。下顎の縫合線の融合は周飾頭類 との関連を示唆している可能性がある。また、前上顎骨に6本の歯があり、上顎骨の前に短い歯のない部分と小さな隙間があるなど非常に基部の鳥盤類のもつ特徴もある[ 2] 。
後の研究での分岐 解析の結果、(真)鳥脚類の基部に位置づけられている。以下のクラドグラム はMakovicky et al. , 2011の解析に基づきジェホロサウルスの位置を示したものである[ 4] 。
以下に示すクラドグラムはZheng and colleagues in 2009の解析に基づくものである[ 5] 。
2012年のHan et al. ではMakovicky et al. , 2011と似た樹形のクラドグラムが得られ、ジェホロサウルス、ハヤ、チャンチュンサウルスからなるクレードが示され、ジェホロサウルス科 (英語版 ) と命名された[ 6] 。
参照
^ Makovicky, Peter J.; Brandon M. Kilbourne; Rudyard W. Sadleir; Mark A. Norell (2011). “A new basal ornithopod (Dinosauria, Ornithischia) from the Late Cretaceous of Mongolia” . Journal of Vertebrate Paleontology 31 (3): 626–640. doi :10.1080/02724634.2011.557114 . http://www.informaworld.com/smpp/content~db=all~content=a937433843~frm=titlelink .
^ a b c d e f g Xu, Wang and You, 2000. A primitive ornithopod from the Early Cretaceous Yixian Formation of Liaoning. Vertebrata PalAsiatica 38(4)318-325.
^ a b Paul, G.S., 2010, The Princeton Field Guide to Dinosaurs , Princeton University Press p. 275
^ Makovicky, Peter J.; Brandon M. Kilbourne; Rudyard W. Sadleir; Mark A. Norell (2011). “A new basal ornithopod (Dinosauria, Ornithischia) from the Late Cretaceous of Mongolia” . Journal of Vertebrate Paleontology 31 (3): 626–640. doi :10.1080/02724634.2011.557114 . http://www.informaworld.com/smpp/content~db=all~content=a937433843~frm=titlelink .
^ Zheng, X-.T., You, H.-L., Xu, X. and Dong, Z.-M. (2009). "An Early Cretaceous heterodontosaurid dinosaur with filamentous integumentary structures." Nature , 458 (19): 333-336.
^ Han, Feng-Lu; Paul M. Barrett; Richard J. Butler; Xing Xu (2012). “Postcranial anatomy of Jeholosaurus shangyuanensis (Dinosauria, Ornithischia) from the Lower Cretaceous Yixian Formation of China.” . Journal of Vertebrate Paleontology 32 (6): 1370–1395. doi :10.1080/02724634.2012.694385 . http://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/02724634.2012.694385 .
外部リンク