ゲンゲ亜目
ウルフフィッシュ Anarhichas lupus
分類
下位分類
本文参照
ゲンゲ亜目 (ゲンゲあもく、学名 :Zoarcoidei )は、スズキ目 に所属する魚類 の分類群の一種。
9科95属340種で構成され、オオカミウオ など北半球 の冷たい海に生息する種類が多い[ 1] 。
分布・生態
ゲンゲ亜目の魚類はすべて海水魚 で、その多くは北太平洋 あるいは北大西洋 を中心とした寒冷な海に分布する[ 1] 。海底 からあまり離れずに生活する底生魚 の一群で、浅い沿岸部の岩礁域に住む仲間から、ゲンゲ科 のように大陸棚 から大陸斜面 にかけての深海 で暮らすものまで、その生息範囲は幅広い[ 2] 。
形態
ゲンゲ亜目の仲間は一般的に細長い体型をもつ[ 2] 。背鰭 ・臀鰭の基底は長く、腹鰭は退化的である[ 3] 。
鼻孔 を1つしかもたないこと、基蝶形骨を欠くことが本亜目に共通する特徴である[ 1] 。しかし、ギンポ亜目 などスズキ目の他のグループと区別するための明瞭な形質 は見出されておらず、本亜目および所属する各科の単系統性 は不安定なものとなっている[ 1] 。
分類
ゲンゲ亜目にはNelson(2006)の体系において9科95属340種が認められている[ 1] 。本亜目はスズキ目ノトテニア亜目 (南極海 を中心に分布する底生魚)と最も近縁な一群と考えられている[ 1] 。一方で、ゲンゲ亜目をカジカ科 の姉妹群 とみなす見解もあり、分類上の位置付けには今後変更が加えられる可能性がある[ 4] 。
メダマウオ科
メダマウオ科の1種(Rathbunella hypoplecta )。本科魚類はゲンゲ亜目の中で最も原始的なグループと考えられている
メダマウオ科 Bathymasteridae は3属7種からなり、本亜目の中では最も原始的な特徴を残す一群とみなされている[ 1] 。主に北太平洋 の沿岸域に分布する。長い背鰭と臀鰭には棘条がなく、すべて軟条で構成され、尾鰭とは連続しない。体側面の高い位置に側線 がある。
メダマウオ属 Bathymaster
Rathbunella 属
Ronquilus 属
ゲンゲ科
ゲンゲ科の1種 Bothrocara brunneum (シロゲンゲ属)。水深3,228mで撮影。ゲンゲの仲間は寒天質の柔軟な体をもつ
ゲンゲ科の1種 Zoarces americanus (ナガガジ属)。ナガガジ属の魚は比較的浅い海に生息し、汽水域 にも進出する
ゲンゲ科の1種(Pachycara sp. )。水深2,602mで撮影。本科魚類は一部を除いて利用されることがない
ゲンゲ科 Zoarcidae は46属230種を含む、本亜目で最大の科である[ 1] 。多くの種は北太平洋 あるいは北大西洋 に住むが、北極海 に15種、南極海 とその近海にも少なくとも21種が生息し、熱帯 ・温帯 域に分布する仲間も少数ながら知られている。
体は細長く、円筒形にやや近い。背鰭と臀鰭の基底は長く尾鰭と連続し、ほとんどの種類では棘条をもたない。口は吻 の先端か、あるいはやや下向きについている。腹鰭は小さく胸鰭の前に位置するか、ない場合もある。鱗 は小さく皮膚 に埋もれている(ハダカゲンゲ属は鱗を欠く)。浮き袋 をもたない。
アカゲンゲ属 Puzanovia
アゴゲンゲ属 Petroschmidtia
アベゲンゲ属 Japonolycodes
ウサゲンゲ属 Bilabria
ウスギヌゲンゲ属 Taranetzella
オグロゲンゲ属 Bothrocarina
オホーツクゲンゲ属 Gymnelopsis
コンニャクハダカゲンゲ属 Melanostigma
サラサガジ属 Davidijordania
シロゲンゲ属 Bothrocara
セダカゲンゲ属 Lycozoaroes
チョウジャゲンゲ属 Andriashevia
ナガガジ属 Zoarces
ハダカゲンゲ属 Gymnelus
ハレガジ属 Krusensterniella
ヘビゲンゲ属 Lycenchelys
マユガジ属 Lycodes
ヤワラゲンゲ属 Lycodapus
他28属
タウエガジ科
タウエガジ科の1種(Cebidichthys violaceus )。浅い海で生活し、親が卵を守る習性がある
タウエガジ科の1種 Lumpenus lampretaeformis (ウナギガジ属)。本属魚類は日本近海にも分布し、底引き網で多量に水揚げされる
タウエガジ科 Stichaeidae は37属76種で構成される[ 1] 。潮間帯 から水深250メートル付近にまで分布し、ほとんどの種類は北太平洋に生息する。「ギンポ」と名の付く種類が多いが、同じスズキ目 のギンポ亜目 とは異なるグループと考えられている。
長い背鰭には棘条が発達しており、鰭条のほぼすべて(時には120本以上)が棘条で構成される種類が多い。臀鰭も長いが、棘条は1 - 5本。吻(口先)から肛門 までの距離は、尾鰭と肛門の距離と同じか、あるいはより短い。多くの種類では、産卵した卵を親魚が保護する習性をもつ。
イトギンポ属 Eulophias
ウナギガジ属 Lumpenus
オキカズナギ属 Opisthocentrus
オビギンポ属 Leptostichaeus
カズナギ属 Zoarchias
キタフサギンポ属 Soldatovia
ケムシギンポ属 Gymnoclinus
ゴマギンポ属 Stichaeopsis
タウエガジ属 Stichaeus
ダイナンギンポ属 Dictyosoma
トンガリギンポ属 Lumpenopsis
ドロギンポ属 Askoldia
ニセキタノトサカ属 Pseudalectrias
ヌイメガジ属 Acantholumpenus
ネズミギンポ属 Lumpenella
ヒメイトギンポ属 Neozoaroes
フサカケギンポ属 Bryozoichthys
フサギンポ属 Chirolophis
ムシャギンポ属 Alectrias
ムスジガジ属 Ernogrammus
ムロランギンポ属 Pholidapus
メダマギンポ属 Anisarchus
モンツキガジ属 Neolumpenus
他14属
ハダカオオカミウオ科
ハダカオオカミウオ科 Cryptacanthodidae は1属4種からなる[ 1] 。大西洋北西部から北太平洋に分布する。口は斜め上向き。腹鰭がなく、背鰭・臀鰭は尾鰭と連続することが多い。背鰭には棘条が発達し、側線は退化的である。
ハダカオオカミウオ属 Cryptacanthodes
ニシキギンポ科
ニシキギンポ科の1種 Pholis laeta (ニシキギンポ属)。体色や斑紋の付き方は個体によって多種多様である
モンガラオオカミウオ Anarhichas minor (オオカミウオ科)。大西洋沿岸では重要な漁業対象種となっている
ウルフイール Anarrhichthys ocellatus (オオカミウオ科)。本科魚類は体の前半部がよく発達するものの、後半部は細長く貧弱である
ボウズギンポ Zaprora silenus (ボウズギンポ科)。大きく明瞭な尾鰭をもつ
ニシキギンポ科 Pholidae は2亜科3属15種で構成される[ 1] 。背鰭は臀鰭のおよそ2倍の長さがあり、棘条が発達する。胸鰭は小さく退化的で、腹鰭も多くの種類で矮小化、あるいは欠いている。吻から肛門までの距離は、尾鰭から肛門までの距離よりも長い。肋骨 をもたない。側線はないか、あっても短い。親魚が卵を守る習性がある。
ニシキギンポ亜科
ニシキギンポ亜科 Pholinae は1属11種。色彩に富む種類が多い。
Apodichthys 亜科
Apodichthys 亜科 は2属4種。体色はほぼ単色である。
ハコダテギンポ属 Rhodymenichthys
Apodichthys 属
オオカミウオ科
オオカミウオ科 Anarhichadidae は2属5種からなる[ 1] 。日本近海に分布するのはオオカミウオ のみで、利用されることは少ないが、大西洋に分布する種類は食用魚として重要である。鱗はないか、ごく小さな円鱗に限られる。側線は発達しない。胸鰭が大きく、背鰭は棘条のみで構成される。腹鰭はなく、尾鰭も非常に小さい。顎には強靭な犬歯 と大きな臼歯 を備える。
オオカミウオ属 Anarhichas
Anarrhichthys 属
ハネガジ科
ハネガジ科 Ptilichthyidae はハネガジ のみ、1属1種[ 1] 。主に北アメリカ の太平洋沿岸に分布する。日本近海にも産するが極めて稀。体は極端に細長く、鱗がない。尾鰭と腹鰭を欠く。背鰭には丈の低い孤立した棘条が90本並び、その後ろに高い軟条が並ぶ。側線をもたない。体長は30センチメートル(cm)強と小さめだが、椎骨 の数は220個以上に及ぶ。
ボウズギンポ科
ボウズギンポ科 Zaproridae はボウズギンポ のみ、1属1種[ 1] 。北海道 からアラスカ 、カリフォルニア にかけて分布。腹鰭と側線を欠く。背鰭の棘条は54 - 57本。体長は80 cmを超え、椎骨の数はおよそ60個である。
スキュタリナ科
スキュタリナ科 Scytalinidae は Scytalina cerdale のみ、1属1種[ 1] 。北アメリカの太平洋岸に分布。眼が非常に小さく、体の上面についている。背鰭と臀鰭は体の後ろ半分にあり、尾鰭と連続する。腹鰭・鱗・側線をもたない。
脚注
^ a b c d e f g h i j k l m n o 『Fishes of the World Fourth Edition』 pp.396-400
^ a b 『The Diversity of Fishes Second Edition』 pp.313-314
^ 『Fishes - An Introduction to Ichthyology Fifth Edition』 pp.389-390
^ 『魚の形を考える』 pp.161-200
参考文献
ウィキメディア・コモンズには、
ゲンゲ亜目 に関連するメディアがあります。
ウィキスピーシーズに
ゲンゲ亜目 に関する情報があります。
外部リンク