オトマティック自走対空砲 (オトマティックじそうたいくうほう, 英語 : Otomatic SPAAG )とは、イタリア のオート・メラーラ 社(現:レオナルド 社防衛システム部門)が設計した試作自走対空砲 である。
自社製の76mm砲 を用いた自走対空砲システムだったが、より広範囲をカバー可能な地対空ミサイル の存在により採用されることはなかった。
"Otomatic"とは「OTO Main Anti-aircraft Tank for Intercept and Combat」の略称である。
開発
1987年 のパリ航空ショー で1号試作車が公開され、翌1988年 のファーンボロー航空ショー に2号試作車が出品されてデモンストレーションが行なわれた。同年9月、1号試作車に捜索レーダーが搭載され、ヘリコプターを用いた追跡試験が行なわれた。1989年 にはサウジアラビア で試験が行なわれ、1991年 にはイタリア陸軍 のレオパルト1に砲塔が装備され、イタリア空軍 のトーネード IDS やF-104 を用いた追跡試験が行なわれた。
しかし、現代戦においてはより広範囲をカバーできる対空ミサイル の存在により長距離対空砲の需要は縮小しているため、オトマティックは採用されなかった。1997年 には、ローマ近郊でイタリア軍を含む複数の軍事組織に再び公開されたが、いずれの軍隊からも興味を持たれなかった。
オート・メラーラはこのコンセプトをより軽量で各種装輪車両でも運用できるAMRAD (Artillery Multi-Role Area Defense,多目的領域防衛火砲)として復活を試み、砲塔の装甲を薄くした上で捜索レーダーを撤去し、光学照準装置と追跡レーダーのみを装備した。それでもAMRADを採用する軍隊は現れなかったが、AMRADに更に改良を加えたドラコ は、SIDAM25 自走対空砲の後継としてイタリア陸軍での採用が決定し、チェンタウロ戦闘偵察車 の車体と組み合わせ「チェンタウロ・ドラコ」として配備される予定である。
設計
オトマティック自走対空砲の主砲の基になっているオート・メラーラ76mm艦載速射砲
オトマティック自走対空砲は、レオパルト1 (あるいはOF-40 や、同規模の装軌車両)戦車の車体に、艦載砲 であるオート・メラーラ76mm砲 およびそれに付随する索敵照準レーダーと射撃管制装置 を組み合わせたシステムを搭載する。ベース車両に補助動力装置 を搭載し、これをシステムの動力にする。
砲塔は均質圧延鋼板製で、装甲厚は公表されていない。砲塔中央に主砲のオート・メラーラ 76mm砲を装備する。76mm砲は62口径の長砲身砲で、最大射程は16km、最大射高は6,000mにも及ぶ。発射速度は毎分120発で、射撃管制装置によって最適なタイミングで5~6発をバースト射撃し、近接信管 による破片効果によって目標を破壊する。砲塔上部後方には、別個の追跡レーダーと追尾レーダーを装備し、最大8個の目標を追尾することができる。砲弾は、対空用のHISPPFF弾78発に加え、対戦車用の徹甲弾 を12発搭載し、装甲車両にもある程度対処できるようになっている。艦載砲の76mm砲は無人砲塔だが、オトマティック自走対空砲では砲塔内に3名の操砲要員が必要である。
参考文献
関連項目
外部リンク