エクスカバータ (Excavata) は、真核生物の仮説上の系統群の一つ。1999年にその存在が示唆され[2]、2002年に正式に提案された[3]。しかしその後の研究では単系統性は支持されず、2021年現在、メタモナダ、ディスコバ、マラウィモナス類の3つの系統群に解体されている[4][5]。自由生活性のものから、共生性、寄生性のものも存在する。例えばヒトに寄生するジアルジアやトリコモナスはエクスカバータに含まれる。
大部分のエクスカバータは単細胞の鞭毛虫で、従属栄養性である。ただしユーグレノゾアの一部は葉緑体を持ち光合成を行う(→ユーグレナ藻)。エクスカバータの多くは通常、2、4、ないしそれ以上の鞭毛を持ち、細胞口前方が微小管で裏打ちされているという独特の微細構造で特徴づけられる。しかしこれらの特徴を2次的に喪失した種も存在する。アクラシス科のみが一時的に多細胞性を示す。
エクスカバータの一部のものは、典型的なミトコンドリアを欠いており、「無ミトコンドリア」とも言われるが、そうした種でも多くはミトコンドリアに由来する器官を持つ(ハイドロジェノソームやマイトソームなど)。ミトコンドリアを持つ種では、クリステの形状はチューブ状か、ディスク状(→盤状クリステ類)、または層状である。
エクスカバータはいくつかの嫌気性グループ(メタモナダなど)を含む。これら嫌気性生物の細胞膜は好気性の真核生物に比べると不明点が多い。例えば、好気性の真核生物はステロールとよばれる化学物質を普遍的にもっている。ステロールは細胞膜の流動性などを調節し、真核細胞の機能維持に必須の役割を担っている[6]。しかし、ステロールの生合成には酸素分子が必要となるため、嫌気性の真核生物はステロールを自身で合成することができない。一部の嫌気性エクスカバータは、構造的に近く酸素分子を合成に必要としないテトラヒマノール(tetrahymanol)と呼ばれる代替物質を利用することが知られている[7]。しかし、テトラヒマノールを含め類似の化学物質(トリテルペノイド)が一切見つかっていない種も存在する(Kipferlia bialata[8]など)。そのため、これらの嫌気性エクスカバータがどのように細胞膜の働きを調整しているのか、はっきりと分かっていない[9]。
エクスカベート類は、しばしば最も原始的な真核生物だと考えられ、他の真核生物に対して側系統的とされることもある。しかしこうした位置付けは、他の無ミトコンドリア生物について見られるのと同様の長枝誘引による見かけ上のものである可能性があり、エクスカベート類が後生的な位置に現れる系統解析もある[要出典]。アンキロモナス類 (Ancyromonadida) がマラウィモナス類と近縁の可能性があるが、確定していない[10][11]。
上述の通り、メタモナダ、ディスコバ、マラウィモナス類に現在のところ解体されている。
過去の分類については下を参照。
Adl et al. (2012)[1]より。
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