アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局(アルコール・タバコ・かきおよびばくはつぶつとりしまりきょく、英語: Bureau of Alcohol, Tobacco, Firearms and Explosives、略称:ATF または BATF、BATFE)は、アメリカ合衆国司法省内に設置されている専門の法執行および取締機関である[1]。2003年1月24日に行われた省庁再編以前は、アメリカ合衆国財務省内に設置されていた。
ATFはもともと、1886年に財務省の内国歳入局(Bureau of Internal Revenue)内の「歳入研究所(Revenue Laboratory)」として設置された。その後、密造酒取締官(revenuer)としての時期を経て、1920年に内国歳入局の部隊として組織された「酒類取締局(Bureau of Prohibition)」となり、1927年に財務省の機関として独立。1930年には司法省に移管し、1933年に一時的に連邦捜査局(FBI)の一部門となった。
1950年代初頭、内国歳入局が内国歳入庁(Internal Revenue Service)に改名されると、酒税部隊にはたばこ税に関する連邦法の適用の任務が加えられ、アルコール・タバコ税部(Alcohol and Tobacco Tax Division 、ATTD)と改名された。
1968年、銃規制法により、内国歳入庁アルコール・タバコ・銃器部(Alcohol, Tobacco, and Firearms Division)と改名され、初めて「ATF」と呼ばれるようになった。
1972年1月、財務省令により、財務省直轄のアルコール・タバコ・銃器局として独立した[2]。
移行の監督者で、初代局長に就任した Rex D. Davisの下、同局は政治的テロリズムと組織犯罪を目標とした組織に変貌したが、課税やアルコール問題は重要視されなかった。
2001年9月11日の世界貿易センタービルへのテロ攻撃から、ジョージ・W・ブッシュ大統領は2002年に国土安全保障法(Homeland Security Act)に署名。国土安全保障省(Department of Homeland Security)が設立され、ATFは財務省から司法省に移管された。組織名もアルコール・タバコ・銃器・爆薬局(Bureau of Alcohol,Tobacco,Firearms and Explosives)に変わったが、引き続きATFと呼ばれた。
さらに、タバコ製品やアルコール製品からの連邦税の徴収や、規制によりアルコール関連の問題から社会を守るという、内国歳入庁がATFとともに担っていた任務は、財務省下に新設されたアルコール・タバコ税・貿易局(Alcohol and Tobacco Tax and Trade Bureau)に移管された。これらの変革は2003年1月24日に施行された。
組織と人材
ATFは、それぞれ異なる役割を担った、部長をトップとしたいくつかの部門で成り立っている。特別捜査官(ATF Special Agent)は犯罪捜査を指揮し、国内外のテロリズムから米国を守り、各州や地方の警察官とともに粗暴犯を国家レベルで減らすために働いている。特別捜査官はほかの連邦法執行機関と比べ、いくつかの広範な権限を持っており、合衆国法典第3051条により法典のいかなる法規についても執行する権限が与えられた。
2006年より2011年にATFが実行したアメリカからメキシコへの銃密輸を防ぐためのおとり捜査(Operation Fast and Furious、映画「ワイルド・スピード」の原題にちなむ)が失敗したことにより、批判を浴びている。この作戦は密輸を行う売人を摘発するだけでは問題解決に遠いとして、アリゾナ州より意図的に2000丁もの銃器を流出させて銃を追跡し麻薬カルテルを摘発するというものだったが、作戦の成果はほとんど出ず、流出させた銃は行方不明となった。そして2010年12月14日にアメリカ国境警備隊のブライアン・テリー(Brian Terry)がメキシコとの国境から10マイルの場所で発生した銃撃戦で死亡した事件など200件以上の殺人事件で、この作戦で流出させた銃が使用されたことがのちに発覚した。