アミカ (昆虫)
アミカ科
Blepharicera fasciata
分類
和名
アミカ科
英名
Net-winged midges
亜科
アミカ (網蚊、Blephariceridae)は、ハエ目 (双翅目)糸角亜目 アミカ科 に属する昆虫 の総称である。世界で約30属300種ほどが記載されている。
概要
幼虫の腹側
成虫はカ のような外見。主に渓流で見られ、渓流の濡れた岩の上に産卵する[ 1] 。
幼虫と蛹は水中で生活し、水底の岩や滝 の壁面にはりついている。幼虫の体節は7で、第1節は頭部と胸部、第1腹節が融合したもので、第7節は第7-9腹節が融合したものである[ 1] 。各節の背面には棘や疣があるものが多い[ 1] 。触角は0-3節。第1腹節か第6腹節に強力な吸盤を持っており、これによって渓流の岩や滝の壁面にしっかりと吸着している[ 1] 。主に微細藻類 を捕食している。
種によって生活史が異なり、クロバアミカ など9月に孵化して4-5月に羽化する種(冬型第1亜型)や、ヤマトコマドアミカ など12月に孵化して4-5月に4令幼虫となっている種(冬型第2亜型)、カニギンモンアミカ など5-7月に孵化して、8月頃に羽化する種(夏型第1亜型)、ユミアシヒメフタマタアミカ など春に孵化して夏季に幼虫、成虫が共にみられる種(夏型第2亜型)、ヤマトクチナガアミカ のように1年を通して幼虫、蛹がみられる種(周年型)がある[ 2] 。
分類
BioLib.cz[ 3] に従えば、現生種は2亜科に分類される。かつて独立の亜科とされていたツマグロアミカ亜科 Apistomyiinae はクチナガアミカ族 Apistomyiini に、Paltostomatinae (「カニアミカ亜科」の和名もあるが[ 4] カニアミカ属=ギンモンアミカ属は含まれない)はPaltostomatini として、亜科より低い族(Tribe)のランクでアミカ亜科に含まれている。また化石の数属は所属の亜科が未確定である。これら化石のうち、内モンゴル から報告された中生代の Brianina longitibialis と Megathon brodskyi が2006年までのアミカ類の最古記録とされている[ 5] 。
属・種数・分布
*各属の分布域とおよその種数はCourtney (2001)[ 6] に従ったため、原則として2001年以降のデータは反映されていない。
アミカ科 Family Blephariceridae
Subfamily Edwardsininae
Edwardsina Alexander, 1920 (30種) 豪州 南東部、南米 南部
Paulianina Alexander, 1952 (8種) マダガスカル
アミカ亜科 Subfamily Blepharicerinae
クチナガアミカ族 Tribe Apistomyiini (古くは独立のツマグロアミカ亜科 Apistomyiinae としても扱われた)
Apistomyia Bigot, 1862 クチナガアミカ属 (ツマグロアミカ属) (16種) 地中海 地域、日本 、東南アジア 、豪州
Austrocurupira Dumbleton, 1963 (1種) 豪州東南部
Curupirina Stuckenberg, 1970 (3種) ニューカレドニア
Neocurupira Lamb, 1913 (5種) ニュージーランド
Nesocurupira Stuckenberg, 1970 (1種) ニューカレドニア
Nothohoraia Craig, 1969 (1種) ニュージーランド
Hammatorhina Loew, 1869 (2種) スリランカ
Horaia Tonnoir, 1930 (3種) 南アジア 、東南アジア
Peritheates Lamb, 1913 (2種) ニュージーランド
Parapistomyia Zwick, 1977 (4種) ニューギニア 、豪州南東部
Theischingeria Zwick, 1999 (1種) 豪州北東部
アミカ族 Tribe Blepharicerini
Agathon Roder, 1890 コマドアミカ属 (ヤマトアミカ属) (16種) 中央アジア -東アジア 、北米 西部
Asioreas Brodsky, 1972 (5種) 中央アジア
Bibiocephala Osten Sacken, 1874 クロバアミカ属 (4種) 日本、北米西部
Blepharicera Macquart, 1843 ナミアミカ属 (ニホンアミカ属) (約44種) ユーラシア 〜北米
Dioptopsis Enderlein, 1937 (3種) 欧州
Liponeura Loew, 1844 (45種) 欧州
Hapalothrix Loew, 1876 (1種) 欧州
Neohapalothrix Kitakami, 1938 ギンモンアミカ属 (カニアミカ属)(3種) 東アジア
Philorus Kellogg, 1903 フタマタアミカ属 (ヒメアミカ属) (22種) 中央アジア〜東アジア、北米西部
Tianschanella Brodsky, 1930 (1種) 中央アジア
Tribe Paltostomatini (亜科のランクとする場合は「カニアミカ亜科」[ 4] の和名もあるがカニアミカ属=ギンモンアミカ属は含まれないので注意)
Aposonalco Hogue, 1992 (1種) メキシコ
Elporia Edwards, 1915 (19種) アフリカ南部
Kelloggina Williston, 1907 (34種) ブラジル 南東部、アルゼンチン 北東部
Limonicola Lutz, 1928 (8種) 南米北西域
Paltostoma Schiner, 1866 (21種) メキシコ、中米 、南米(アンデス地方 )
所属亜科不明(化石属)
† Blephadejura Lukashevich, Huang & Lin, 2006
† Brianina Zhang & Lukashevich, 2007
† Megathon Lukashevich & Scherbakov, 1997
† Paltostomopsis Cockerell, 1915
† Philorites Cockerell, 1908
日本のアミカ科
岡崎(2005)[ 4] および三枝(2008)[ 7] によれば、既知の日本産アミカ科は以下の6属27種で、他に若干の未報告種、未記載種があるとされる。幼虫 ・蛹 の検索表 と図は岡崎(2005)に、成虫の検索表と写真は三枝(2008)に掲載されている。三枝(2008)によってそれまでの属和名および種和名の大部分が改称された。
下記が日本産のアミカ科のリストである。和名は三枝(2008)に従っているが、それ以前の和名も括弧内に別名として付記されている。また分布の一部は略号(北=北海道 、本=本州 、四=四国 、九=九州 )で示されている。
アミカ科 Blephariceridae
アミカ亜科 Blepharicerinae
クチナガアミカ族 Apistomyiini
クチナガアミカ属 Apistomyia Bigot, 1862 (別名:ツマグロアミカ属)
アミカ族 Blepharicerini
コマドアミカ属 Agathon Roder, 1890 (別名:ヤマトアミカ属)
トクナガコマドアミカ Agathon bilobatoides (Kitakami, 1931) 本、四 (別名:トクナガヤマトアミカ)
アルプスコマドアミカ Agathon bispinus (Kitakami, 1931) 本、九 (別名:フタトゲミヤマヤマトアミカ)
エゾコマドアミカ Agathon ezoensis (Kitakami, 1950) 北、サハリン (別名:エゾヤマトアミカ・エゾカワムラヤマトアミカ)
イヤコマドアミカ Agathon iyaensis (Kitakami, 1931) 四 (別名:イヤヤマトアミカ)
ヤマトコマドアミカ Agathon japonicus (Alexander, 1922) 北、本、四、九 (別名:ヤマトアミカ)
トゲコマドアミカ Agathon longispina (Kitakami, 1931) 本、四、九 (別名:トゲヤマトアミカ)
ミヤマコマドアミカ Agathon montanus (Kitakami, 1931) 本、四、九 (別名:ミヤマヤマトアミカ)
クロバアミカ属 Bibiocephala Osten Sacken, 1874
クロバアミカ Bibiocephala infuscata infuscata (Matsumura, 1916) 北、本、四
コクロバアミカ Bibiocephala infuscata minor (Kitakami, 1931) 本(関西)--幼虫のみが知られる
ナミアミカ属 Blepharicera Macquart, 1843 (別名:ニホンアミカ属)
ヒメナミアミカ Blepharicera japonica (Kitakami, 1931) 本、四 (別名:ニホンアミカ)
オオメナミアミカ Blepharicera esakii (Alexander, 1924) 本、四、九 (別名:スカシアミカ)
ハナレメナミアミカ Blepharicera shirakii (Alexander, 1922) 本、四、九、奄美 (別名:シラキスカシアミカ)
アキノナミアミカ Blepharicera tanidai Zwick, 1990 本(中部以北)
ギンモンアミカ属 Neohapalothrix Kitakami, 1938 (別名:カニアミカ属)
カニギンモンアミカ Neohapalothrix kanii Kitakami, 1938 本 (別名:カニアミカ)
シロウズギンモンアミカ Neohapalothrix manschukuensis (Mannheim, 1938) 北、アルタイ 、沿海州 、中国 東北部 (Neohapalothrix shirouzui Saigusa, 1973 はシノニム [ 8] )(別名:シロウズアミカ)
フタマタアミカ属 Philorus Kellogg, 1903 (別名:ヒメアミカ属)
ミヤマフタマタアミカ Philorus alpinus Kitakami, 1931 北、本 (別名:アルプスヒメアミカ)
エゾフタマタアミカ Philorus ezoensis Kitakami, 1931 北 (別名:エゾヒメアミカ)
ハナレメフタマタアミカ Philorus gokaensis Kitakami, 1950 本、九 (別名:ゴカヒメアミカ)
ヒゲブトオオフタマタアミカ Philorus kibunensis Kitakami, 1931 本、四、九 (別名:キブネヒメアミカ)
ヒゲボソオオフタマタアミカ Philorus kuyaensis Kitakami, 1931 本、四、九 (別名:オオバヒメアミカ)
アシボソヒメフタマタアミカ Philorus longirostris longirostris Kitakami, 1931 北、本、四、九 (別名:ナガヒメアミカ)
タチゲヒメフタマタアミカ Philorus minor Kitakami, 1931 本、四、九、屋久島 :アシボソヒメフタマタアミカの亜種とする立場もある。(別名:コナガヒメアミカ)
オオメフタマタアミカ Philorus sikokuensis Kitakami, 1931 本、四、九 (別名:シコクヒメアミカ)
キイロフタマタアミカ Philorus simasimaensis Kitakami, 1931 本、四、九 (別名:シマシマヒメアミカ)
ユミアシヒメフタマタアミカ Philorus viridis Kitakami, 1931 北、本、四、九 (別名:ヒメアミカ)
出典
参考文献
外部リンク
関連項目
北上四郎 - 日本のアミカ研究家。アミカの幼虫を日本で初めて発見。