ジャパンコンソーシアムの業務は、現地の関係各所への折衝、現地で借用する機材の調達、ホストブロードキャスターが制作した国際映像の分配、日本独自カメラの運用、国際伝送回線の調達・管理、各社の競技中継の割り当て変更の折衝、事務作業などが中心。
同じように「ジャパンコンソーシアム」を結成した場合でも、地理的条件などによって体制が異なることがある。
オリンピック中継
オリンピックのような総合競技大会では、実況を担当するアナウンサーには各競技に対する一定以上の知識が要求されることもあって、アナウンサーの割り当てに際してはNHKと民放各局から派遣されたアナウンサーがそれまでの実況経験等を勘案して系列の枠組みに関係なく担当する競技を割り当てている。一方で各競技の放送は、種目ごとの偏りを防ぐために種目別ではなく放送日時ごとに割り当てているため、所属する系列とは異なる放送局のアナウンサーが実況する場合も多い。このこともあり番組フォーマットや言葉遣いの統一ルールがあったり、実況を担当する各アナウンサーの所属放送局は一切出さないことになっている[注釈 7]。
これにより、民放が放送する中継でNHKのアナウンサーが実況したり、NHKが放送する中継で民放のアナウンサーが実況するケースもあるため、特に日本選手が出場している競技では絶叫スタイルで放送することの多い民放アナウンサーによる放送内容に対して、NHKや放送倫理・番組向上機構(BPO)に苦情が寄せられることも少なくない。
一例として、日本テレビとNHK衛星第1テレビジョンが生放送した2000年のシドニー五輪サッカー生放送では、日本代表の初戦で日本テレビアナウンサー(当時)の船越雅史が実況を担当したが、日本が得点を挙げた際に繰り返し絶叫したことから、日本テレビのみならずNHKの視聴者センターにも多数のクレーム電話が殺到する事態に発展した。この事態を重く見たNHKは、再放送の際に本来差し替えないはずの実況と解説者を差し替える措置を、日本テレビ以外の民放が関連ニュースを報道する際に、実況部分を入れない措置を取った。
なお一部のスポーツ中継では、副音声を使用して実況なしの中継や別音声で放送する場合もあるが[注釈 8]、オリンピック中継では実施していない。ただし、テレビで中継されない競技のインターネットの動画配信では、実況・解説が一切入っていない。これはオリンピック放送機構制作の国際映像をそのまま使用しているため。
JCとしての合同スタッフとは別に、各放送局はそれぞれに、番組の進行や競技解説を担当するアナウンサーや専門解説者を現地会場の国際放送センターに派遣したり、東京のスタジオに待機させたりしている。NHKの場合、2012年のロンドン、2016年のリオ五輪では、現地の競技時間に合わせて解説を担当する2-3名程度のアナウンサーを国際放送センターに派遣。これとは別に、ゴールデン・プライムタイムのハイライトやBS1の全種目生中継に対応するための東京のスタジオ担当アナ数名が交代で出演している[注釈 9]。
独立局加盟のテレビ・ラジオ局も日本民間放送連盟の一員であることから、ジャパンコンソーシアムに加盟している。これらの放送局では、原則としてキー局と同じ時間帯に並立放送を行い(CMもスポンサードネット扱いで放送)、キー局のうち1枠または2枠を選択して放送している(ただし、テレビに関しては80年代までは並立放送の枠がかなり多かった)。どのキー局をネットするかについては特に定まっておらず、放送時間や制作を担当する放送局との兼ね合いからその都度決定される。
ただし、2008年の北京オリンピックは近畿地区(KBS京都・サンテレビ・びわ湖放送・奈良テレビ放送・テレビ和歌山)のみ朝日放送の全国高校野球選手権大会中継をリレー中継しているため、準々決勝以降の放送日へ移動している。これは平日と日曜日は11:40から14:10まで高校野球中継を中断し、テレビ朝日制作番組や各局の自社制作番組を優先放送しているため(土曜は11:45から12:00の「ANNニュース」が中断されるのみ)。
2002年(ソルトレークシティオリンピック)以降、オリンピック中継はBSデジタル放送でも放送しているが、2010年(バンクーバーオリンピック)以降、日本民間放送連盟に加盟している地上波民放系BS5局では地上波の放送後に撮って出し方式で遅れ放送している。
2008年(北京オリンピック)以降は、テレビで放送されない競技をライブストリーミングで無料配信するようになり、多くの競技がリアルタイムで視聴可能となった(前述のとおり実況音声は一切入らず、現地音声のみ)。
2021年(東京オリンピック)では視聴者の利便性を図る目的で特定日に行われる競技を1つの民放テレビ局(系列)に集中させ、ハイライト番組を含め、朝から深夜2時までのほぼ終日放送させる試みが行われた。具体的には、毎日早朝から深夜・翌日未明までの16時間以上に渡る長時間大型放送日を各放送局ごとに割り当てて、当日の日本選手や、注目選手、種目をまとめて生放送する他、『東京五輪プレミアム』と銘打った放送日付上当日の全種目のハイライト中継も行った[24][25]。
なお、NHKや民放連に加盟していないテレビ局がジャパンコンソーシアムからサブライセンスを得た上で一部の競技中継を放送するケースもある[26]。2016年のリオデジャネイロオリンピック以降[注釈 10]はケーブルテレビ局のジュピターテレコム(J:COM)が[26]、2021年の東京オリンピックではグリーンチャンネルが[27]、それぞれJCからサブライセンスを得て、一部競技の無料放送を実施した[a]。
民放ラジオでは2008年の北京オリンピックまで一部の競技[注釈 11] で全局同時実況中継を実施していたが、2012年のロンドンオリンピックでは全局同時実況中継がなくなり、実況中継の放送は各局の判断(任意ネット)となった。そのため、ロンドンオリンピックは実況中継は在京局中心の放送となり、多くの放送局では全局へ配信される民放ラジオ統一番組[注釈 12] を除き放送しなくなった[28]。この体制は2016年のリオデジャネイロオリンピックも同様である[29]。2021年に行われた東京オリンピックでは男子マラソンの実況中継を民放ラジオ全99局が同時放送を行い、13年ぶりにオリンピックの全局同時実況中継が復活することになった[30]。
なお、NHKにおけるラジオ中継は、夏季大会はテレビと同じく現地に派遣されたNHK・民放のアナウンサー・解説者の連合チームで担当しているが、冬季はNHK独自の放送となっており、自国開催で夏季と同様の民放との合同体制である1972年札幌オリンピックと1998年長野オリンピックを除き、アナウンサー、解説者はJCとは別に派遣されたラジオ専従のスタッフが担当する。
パラリンピック中継
オリンピックと並行して開催され、同じOBSが製作しているパラリンピックについては放映権が異なるため、ジャパンコンソーシアムとは別の放送事業者が獲得しており、2008年の北京パラリンピックから2016年のリオデジャネイロパラリンピックまで[注釈 13]はスカパーJSATが放映権を獲得し、専門チャンネルやBSスカパー!などで競技中継を放送した[31]。
2018年の
平昌パラリンピックから2024年の
パリパラリンピックまではNHKが日本国内における全てのメディア放映権を独占で獲得している
[32]。この様な事情から、民放などといった、NHK・スカパー!以外の放送局において同大会が放映されることは長らくなかったが、2021年の
東京パラリンピックではJ:COM
[33]とグリーンチャンネル
[34]に加え、民放連加盟各局もNHKからサブライセンスを獲得した上で各キー局が1種目ずつ番組を制作して放送した
[35][36]。
FIFAワールドカップ中継
2002年日韓大会以降のFIFAワールドカップ中継では、前もって試合ごとに中継する系列が割り当てられており、映像は各局とも国際映像を使用するが、実況・解説は地上波で担当する系列局が派遣したアナウンサー・解説者が行っている[注釈 14]。また、各局がダイジェスト番組を放送する場合も実況の差し替えは行わず、中継時のアナウンスをそのまま使用するのが基本となっている[注釈 15]。また、ニュースなどで実況映像を使用する場合、中継時の実況音声[注釈 16] を使うか、実況の差し替えを行うかは、各放送局の判断にまかされている。
オリンピック中継における放送局ごとの中継分担は原則としてNHKと民放の話し合いのみで決めるが、FIFAワールドカップ中継では、まずNHKと民放の話し合いで分担を決めた後、民放ではキー局がくじ引きで決められた順番に、希望する試合を選択する[注釈 17]。
なお、2002年の民放によるFIFAワールドカップ中継は、一部を除き地上波と系列BS局が同時放送(但し、出演者は異なる)していたが、2006年大会以降は地上波での放送後に系列BS局が時差放送している。
ラジオ放送については民放はテレビとは異なり全局共通の内容であるが、NHKはJCの実況は使わず解説部分をオフチューブで現地の映像を見ながら東京のスタジオで差し替えている。
またワールドカップについて民放では、スポーツ中継の経験が豊富なTBSラジオ・文化放送・ニッポン放送の三社が持ち回りでラジオ実況の制作本部をつとめ、制作本部となった放送局で番組を制作し、民放ラジオ局各局へ伝送される。なお実況にあたっては、民放テレビ中継の幹事社が提供した中継映像を見ながらオフチューブで行われる[37]。
2014 FIFAワールドカップでは、ホストブロードキャスターが制作した複数の国際映像と、日本独自カメラの映像(ジャパンコンソーシアム手配)が、国際放送センターに設置されているジャパンコンソーシアムのブース内の日本放送協会(NHK)・日本民間放送連盟(民放連 在京キー局各社からの応援スタッフで構成)・日本テレビ放送網・テレビ朝日・TBSテレビ・テレビ東京・フジテレビジョンの各社の部屋に送られる。そこで各社は、会場内のスタジオ・各国共用の中継スペースからの映像や町中からのレポート(いずれも各社手配)の映像・音声などを加えて編集。日本への伝送は、NHK・民放連はNHK手配の回線で、民放各局はジャパンコンソーシアム手配の国際回線で行われ、各局は国内でさらに編集を加えて放送する。なお民放ラジオ放送では、民放テレビ中継の幹事局 テレビ朝日が制作した映像を見ながら、制作本部である文化放送の第1スタジオで番組を制作し、文化放送から民放AM・FM各局に伝送した[37]。
アジア競技大会中継
番組を制作するのはアジア太平洋放送連合正会員であるNHKとTBSテレビの2局のみであり、また開催地が地理的に日本に近いことから機材や伝送回線の調達・管理は各社で行っているため、関係各所への折衝・事務作業などコンソーシアムとしての基本的な業務が中心となる。
協賛スポンサー・クロスネットなどの扱い
民放各局は、JC共通の協賛スポンサーが時間ごとに割り当てて番組提供を行う。一部の地方局などクロスネット局では、原則としてその時間に主として放送しているネット局の中継を放送するが、系列の違う後番組を考慮して中継しない場合もある。
またFIFAワールドカップで日本が出場する試合、夏季オリンピックで女子マラソンを民放が放映する場合[注釈 18]は、系列局の存在しない地域向けに系列の枠を超えて生中継することが通例となっている。そのため、広域圏を除き、民放が1局しかない四国放送とサガテレビでは、FIFAワールドカップで民放が放送する日本戦や女子マラソンはすべて放送している。
なお、中継では一部の例外を除き60秒以上のスポンサードであるため協賛社読み上げが行われる。また、深夜・早朝に行われる10分程度のハイライト番組(一部のスポーツニュース・情報番組への内包コーナー扱いも含む)についてもJC共通協賛社が日に3-4社程度(一部パーティシペーションで協賛表示なしのスポンサー有り)提供されているが、これらは30秒スポンサーで「ご覧のスポンサー」扱いとなる。
2021年の東京大会では、野球・ソフトボール競技の侍ジャパン出場試合でNHK R1と一部民放ラジオ局の並列放送が行われ、民放がNHKに合わせる形で競技放送中一切のCMを流さず、タイムスポンサーも設けなかった例もある。