普門寺(ふもんじ)は、福島県いわき市北目町にある臨済宗の寺院である[1]。山号は如意山、院号は福聚院[1]。本尊は釈迦如来像だが、境内に建つ観音堂が磐城三十三観音 札所第一番 北目観音であり、そちらの本尊は木造如意輪観音坐像でいわき市有形文化財(彫刻)となっている[1]。
歴史
開基は正応4年(1291年)、痴鈍禅師によると伝わり、当初は胡摩沢の地[脚注 1]にあった[1]。慶長8年(1603年)、鳥居忠政の平城築城、長源寺建立に際して久保町[脚注 2]に移され、文政年間に火災にあった後に、現在地北目に禅良上人によって再興されたという[1][2]。
北目観音
磐城三十三観音 札所第一番[1]。巡礼歌は「ふだらくや 普(あまね)き門(かど)に みのりをぞ たのみわたらせ 末の川はし」[3]。
縁起は定かではないものの、1千年あまりの歴史があると伝わる[1]。観音堂内の箱蓋にある墨書きには、観音堂が正安2年(1300年)に消失したらしい記録がある[4][脚注 3]。鎌倉期以降は飯野八幡宮境内にあり、庶民が巡礼し厚い信仰を集めたが、その後現在地北目に再建された[1]。
現在の観音堂は元禄13年(1700年)7月、城北積金講の組織の元に建立されたもので、「観音堂」の扁額は、当時の平城主内藤義孝侯抱えの書家、佐々木玄龍の書である[1]。
文化財
釈迦如来像
本堂の本尊仏[1]。作者および年代などは明らかではない[1]。
木造如意輪観音坐像
観音堂の本尊仏[1]。厨子内に安置され、像高は67.2cm、肩幅は26.7cmの一面六臂の像[5]。天衣をまとい裳を着け、輪王座の姿勢を取り、蓮華・輪宝・宝珠・数珠を手に携えている[5]。
造りは一部漆箔、カヤ材の寄木造りで、頭部と体幹を共に前後の二材で繋ぎ合わせ、また膝前を別材として繋いでいる[5]。彫りの特徴より鎌倉時代後期から末期の作と考えられる[5]。光背と台座は後から補われており、台座には元禄15年(1702年)の墨書きがある[5]。6本の手は全て当初のものと考えられている[5]。
1994年(平成6年)3月、いわき市の有形文化財(彫刻)の指定を受けた[1]。
仁王像2体
観音堂内に安置されており、かつては飯野八幡宮にあったものとされる[1][2]。
脚注
- ^ 現在の長源寺付近
- ^ 吉祥院跡
- ^ 「当如意山普門寺観音堂正安二年六月二八日示寂」とある。示寂は菩薩の死を意味するが、ここでは観音堂を指すため消失と解釈できる。
出典
- ^ a b c d e f g h i j k l m n 普門寺現地案内板
- ^ a b 磐城三十三ヶ所霊場 p.7
- ^ 磐城三十三ヶ所霊場 p.6
- ^ 磐城三十三所観音霊場<改訂版> p.8
- ^ a b c d e f 北目観音現地案内板
参考文献
- 磐城三十三ヶ所霊場、いわき同行会、1979
- 磐城三十三所観音霊場<改訂版>、草野日出雄、1987
- 普門寺現地案内板
- 北目観音現地案内板
関連項目