グラムドリングにはルーン文字(キアス)が刻まれていた。ニュー・ライン・シネマによって公開されたピーター・ジャクソン監督の映画では、"Turgon Aran Gondolin, Tortha gar a matha Glamdring, Vegil Glamdring gud daelo. Dam an Glamhoth."と刻まれていた。これは「ゴンドリンの王トゥアゴンが振るい、佩き、持ちたる剣グラムドリング、モルゴスの領土の敵、オークを打つもの」という意味のシンダール語である。しかし、この銘はトールキンの著作では言及されていない。トールキンは『ホビットの冒険』において剣の名前がルーン文字で刻まれていると述べているだけで、ほかには明確な記述は存在しない。とはいえ映画のために創作されたこの銘はもっともらしいものではある。エルロンドは銘を見ただけでこの剣がトゥアゴンのものであったと見分けることができたとされているからである。
問題はこの銘はキアスを使ったシンダール語で刻まれていたが、トールキンは晩年のエッセイでトゥアゴンはゴンドリンにおける一族の言葉としてクウェンヤを再び確立させたと明確に述べていることである(The People of Middle-earth, p. 348を参照)。興味深いことに『ホビットの冒険』においてガンダルフはルーン文字を読めなかったがエルロンドはできたと述べられている。つまり刻まれていた文字は普通のキアスではなくガンダルフの知らない特殊なモードで書かれていたかもしれないことを示している。エルフ語はトゥアゴンの時代から確実に変化していたであろうから、第一紀から生きているエルロンドはこの銘を読むことができたが、第三紀の中頃まではアマンにいたガンダルフは使われている文字に精通していなかったのであろう。もっともトールキンが最初は『ホビットの冒険』を『シルマリルの物語』の伝説と結びつけることを考えていなかったために起きた矛盾である可能性もあるし、その可能性は高い。