1979年に、中国政府に招かれ、演奏旅行のかたわら、中国各地でヴァイオリンの指導を行う。その模様はフィルムに収録され、『毛沢東からモーツァルトへ(From Mao to Mozart)』と題されたドキュメンタリーは、翌年のアカデミー賞ベスト・ドキュメンタリー部門でオスカーに輝いた。新進演奏家の擁護者でもあり、なかでもイツァーク・パールマン、ピンカス・ズーカーマン、シュロモ・ミンツ、ヨーヨー・マ、ジャン・ワンはスターンの秘蔵っ子たちで、しばしば共演を重ねてきた。1960年には、カーネギー・ホールが解体の危機に見舞われた際、救済活動に立ち上がった。そのため現在、カーネギー・ホールのメイン・オーディトリアムはスターンの名がつけられている。またユダヤ人として、イスラエルに強い共感を示し、ユダヤ人を題材にしたミュージカル映画『屋根の上のバイオリン弾き』では劇伴のヴァイオリンソロを担当している。
Isaac Stern and Chaim Potok, "Isaac Stern My First 79 Years," Da Capo Press (2000): アイザック・スターン、ハイム・ポトク「アイザック・スターン―すばらしきかな、わがヴァイオリン人生」大森洋子 訳、清流出版 (2011)