演奏会用アリア『ぶどう酒』 (ドイツ語 : Konzertarie "Der Wein" ) は、アルバン・ベルク が作曲した独唱と管弦楽 のための作品。題名は『ワイン』とも表記される[ 1] シャルル・ボードレール の詩集『悪の華 』をシュテファン・ゲオルゲ がドイツ語 訳したものから取られている[ 2]
オペラ 『ルル 』作曲初期の1929年 春、ソプラノ歌手ルツェナ・ヘルリンガー (de:Ruzena Herlinger ) から作品の委嘱を受けて書かれた[ 3] [ 4] モーツァルト の演奏会用アリアを例に挙げていた[ 5] 1930年 6月4日 にケーニヒスベルク で開かれた全ドイツ音楽協会 (Allgemeiner Deutscher Musikverein) の音楽祭において、ヘルリンガーの独唱とヘルマン・シェルヘン の指揮で行われた[ 6] [ 2]
出版は1930年 にエルヴィン・シュタイン によるピアノ伴奏編曲版が発表され、原曲が出版されたのは1966年 のことだった[ 2] en:Hans Redlich ) は、この作品は『ルル』への習作としての意義をもつと指摘しており、詩の選択、形式、音色やオーケストレーションにくわえて歌唱様式にも共通点がみられる[ 7] サクソフォーン とピアノ が取り入れられ、ポピュラー音楽 の語法を利用している[ 3]
独唱（ソプラノ またはテノール ）
フルート 2（ピッコロ 2持ち替え）、オーボエ 2（コーラングレ 1持ち替え）、クラリネット 2、バスクラリネット 、アルト・サクソフォーン 、ファゴット 2、コントラファゴット 、ホルン 4、トランペット 2、トロンボーン 2、チューバ 、ティンパニ 、大太鼓 、小太鼓 、タンバリン 、シンバル （クラッシュ、サスペンデッド）、タムタム 、ゴング （低音）、トライアングル 、グロッケンシュピール 、ピアノ 、ハープ 、弦五部
ソプラノ歌手のために書かれた作品だが、弟子のヴィリー・ライヒ (de:Willi Reich ) によれば、ベルクはテノールによる歌唱も望んでいたという[ 6]
基本音列 演奏時間は15分前後。
全体の構造はソナタ形式 と三部形式 の組みあわせと考えることができる[ 7] [ 4] スケルツォ 風の中間部、再現部とコーダ、にも対応する[ 3] [ 7]
十二音技法 を用いているが、中心となる音列の前半6音はニ短調 の、後半のうち5音は変ト長調 （嬰へ長調）の構成音でできており、のちの『ルル』やヴァイオリン協奏曲 と同様に調性的な要素が導入されている[ 2]
^ 石川亮子「アルバン・ベルクと「ジャズ」 : 演奏会用アリア《ワイン》からの一考察」『昭和音楽大学研究紀要』第31巻、2012年、CRID 1050001339063756032 。 ^ a b c d 浜尾房子「演奏会用アリア《ぶどう酒》」『作曲家別名曲解説ライブラリー16 新ウィーン楽派』音楽之友社、1998年、278-279頁。
^ a b c Perle, George. 大倉文雄訳 (1996). “ベルク, アルバン(・マリア・ヨハネス)”. ニューグローヴ世界音楽大事典 . 16 . 柴田南雄, 遠山一行 総監修. 音楽之友社. pp. 315-316
^ a b 石川 (2012) pp. 49-50.
^ Jarman, Douglas; Berg, Alban (1972), “Two Unpublished Letters from Berg” , Musical Times 113 (1550): 350-352, JSTOR 954659 , https://jstor.org/stable/954659 ^ a b ヴィリー・ライヒ 著、武田明倫 訳『アルバン・ベルク―伝統と革新の嵐を生きた作曲家』音楽之友社、1980年（原著1963年）、297-300頁。
^ a b c Perle, George (1980). The operas of Alban Berg: II. Lulu . University of California Press. pp. 29-32
