Universal Scene Description 拡張子 .usd、.usda、.usdc、.usdz 開発者 ピクサー 種別 3Dファイル形式
Universal Scene Description (USD 、ユニバーサル・シーン・デスクリプション、万能シーン記述) は、ピクサー の開発した3Dシーングラフ形式及びその形式を扱うプログラム群である。
USD形式
USD形式はモダンなシーングラフ形式であり、アセットの異形 (バリアント) [ 1] やアセットの外部参照、アセットのオーバーライドなどに対応している。USD形式にはテキスト形式 (usda) 、バイナリ形式 (usdc)、アーカイブ形式 (usdz)が存在する。
USDファイルの中に含めることのできる情報はスキーマによって定義されており、拡張可能となっている。
主なスキーマ
ジオメトリ (UsdGeom)
ライト (UsdLux)
シェーディング / マテリアル (UsdShade)
スケルトン / ブレンドシェイプ (UsdSkel) - 簡易的であり群集シミュレーション及びゲーム向けとなっている[ 2] [ 3]
UI (UsdUI)
USDライブラリ
USDライブラリ群はUSD形式を取り扱うためのライブラリであるが、シーングラフのリアルタイム及びオフラインレンダリングに対応するHydraも含まれている。USDライブラリでHydraを使用するアプリケーションは、Hydraレンダーデリゲート に対応する多数のレンダーバックエンドを使用することができる。
レンダーバックエンド
以下はHydraレンダーデリゲートに対応するレンダーバックエンドである。
公式
HdStream (Stream) - USDに含まれているOpenGLバックエンド[ 4] 。Hydraから分離された[ 4] 。
HdEmbree - USDに含まれているレイトレーシングレンダープラグインであり、IntelのEmbreeライブラリを元にしている。
HdPrman (RenderMan Hydra Delegate) - RenderMan を使用するためのバックエンド。USD 19.07以降に含まれている[ 5] [ 6] 。
ハードウェア会社製
Radeon ProRender for USD - オープンソースの物理ベースレンダラーであるRadeon ProRenderを使用するためのプラグイン[ 7] 。
HdOSPRay - オープンソースのCPUレンダラーであるOSPRayを使用するためのプラグイン[ 8] 。
RTX Renderer - NVIDIA Omniverseに含まれているレンダラー[ 9] 。
USD採用アプリケーション搭載
Karma - Houdini 18以降のSolarisに含まれているCPUレンダラー[ 10] 。Mantraの代替[ 10] 。
Houdini GL - Houdini 18以降のSolarisに含まれているOpenGLバックエンド。
サードパーティー
HydraNSI (hdNSI) - NSIインターフェースに対応するレンダラーを使用するためのプラグイン。オープンソース[2] 。NSIインターフェース対応のものには、物理ベースレンダラーの3Delight NSI が存在し、HoudiniのSolarisに向けた3Delight for Solarisも用意されている (3Delight for Houdiniに付属[ 11] )。3DelightNSI は無料版も存在する。
Arnold USD[ 12] [ 注 1] - Arnoldレンダラーを使用するためのコンポーネント集。オープンソース[3] 。
OctaneRender Hydra / Octane X Hydra - HoudiniのSolaris向けのベータ版が公開されている[ 13] 。
Redshift Solaris Hydra plugin - HoudiniのSolaris向けのプレビュー版が公開されている[ 14] 。
hdRstr - リアルタイムの直接照明および単反射回数の間接照明レンダラー[ 15] 。NVIDIA RTXDIに基づいており、ReSTIRアルゴリズムを使用している[ 15] 。
オープンソース
Cycles Hydra Render Delegate - Blender 内蔵レンダラーのCycles を使用するためのプラグインであり、Blender 3.2以降のコードベースに統合されている[ 16] 。hdCycles(Tangent Animation製[ 17] )の後継。オープンソース。
MoonRay (英語版 ) - DreamWorksの元内製レンダラーであり、2023年にオープンソース化された[ 18] 。
HdAurora - Autodesk主導のオープンソースリアルタイムパストレーシングレンダラー「Aurora」を使うためのプラグイン[ 19] 。
歴史
USDはPixar独自のジオメトリキャッシュシステムである「TidScene」と、独自の3Dアニメーションツールである「Presto」(旧Marionette (Menv)[ 20] ) のコア部分を統合するために開発された[ 21] 。また、USDのレンダーエンジンであるHydraはPrestoに搭載されていた旧来のレンダーエンジンの後継として開発され[ 22] [ 23] 、GPUベースでRenderMan のプリミティブに対応した[ 24] 。
2016年、PixarはUSDをオープンソースとしてリリースした[ 25] 。
用途
上位レベル3D APIとしての使用
USDライブラリはレンダリング機能を持つシーングラフAPIであるため、OpenSceneGraph などのシーングラフAPIの代わりとして使用することができる。3DライティングソフトのKatanaはビューポートにおいて従来のOpenSceneGraphベースのものに代わりUSDライブラリのHydraベースのものを採用した[ 26] 。
ファイル交換形式としての使用
USD形式は拡張可能であるため、レンダラー固有のマテリアルパラメータのような従来のファイル交換形式 (FBX 形式等) では受け渡せない情報を詰め込むことが可能となる。例えば3DレンダラーのArnoldに対応するものとしてArnold USDが存在する。
また、AL_USDMayaでは複雑なリグなどの情報をUSDに詰め込むことも行われている[ 27] 。
シーンキャッシュとしての使用
USD形式はシーンキャッシュ形式であるAlembic 形式の代わりとして注目されている。USD形式へと対応した3DCGソフトウェアClarisseの開発元Isotropixのテストによれば、USD形式の読み込みはAlembic形式の読み込みに比べて50倍高速になるケースもあるとされる[ 28] 。
レンダリング中間形式としての使用
USD形式はレンダリング中間形式であるRIB形式 (RenderMan Interface Bytestream)の代わりとしても注目されている。今後3DレンダラーのRenderManは中間インターフェースにおいてRIB形式の代わりにUSDベースの新インターフェースであるRILEYを用いる予定となっている[ 29] 。
製作パイプラインでの使用
オーサリング形式としての使用
USDをZIP 圧縮したものとしてUSDZ形式が存在し、この形式がARなどに使われている。
USDZ形式へのパッキング/変換ツールには以下がある:
USDに付属するusdzip[ 30]
usdz Tools (Apple)[ 31] - コマンド名はusdzconvert。Xcodeに付属するusdz_converter (非推奨) の後継[ 32] 。
Reality Converter (Apple)[ 33]
Adobe Aero - ARアプリ。usdz形式での出力にも対応している[ 34] 。
StemCell (TurboSquid) - 様々なDCC形式に対応するオンラインファイルコンバータであり、usdz形式での出力にも対応している[ 35] 。
Quixel Bridge[ 33] (Epic Games)
USDZ Converter (ViewAR) - オンラインコンバーター[ 33]
Vectary - オンラインの3Dデザインツール[ 33]
USDZ形式の表示には以下が対応している:
ARKit 2以降 (Apple) - iOS向けの拡張現実 (AR) SDKであり、AR Quick Look機能がusdz形式に対応している。
対応ソフトウェア・プラグイン
以下はUSDに対応するソフトウェア及びプラグインである。
USD及びHydraビューポート搭載ソフトウェア
USDView - USDに含まれている単体USD形式ビューワ。
Katana 3.0以降 (Foundry) - ライティングソフトウェア。3.0以降でUSDを使用するようになり、Hydraベースのビューポートが追加された[ 36] 。また、オープンソースのKatana USD Plug-insも搭載しているが標準で無効となっている[ 注 2] [ 37] [ 38] 。
Houdini 18以降 (SideFX) - USDベースのライティング/ルックデブツールであるSolarisが搭載されている[ 10] [ 注 3] [ 39] 。
Maya 2022以降[ 40] (Autodesk) - 2020.2以降、MtoA (Arnold for Maya) プラグイン経由でのUSDエクスポートに対応しており[ 41] [ 42] 、2022以降、Maya USD拡張[ 注 4] [ 27] [ 43] [ 44] の搭載によるUSD形式のインポート/エクスポートやHydraビューポートに対応している[ 40] 。
Nuke 13.0以降 (Foundry) - デジタル合成 ソフトウェア。12.2以降ReadGeoノードでインポートに対応[ 45] し、13.0以降Hydraビューポートに対応した[ 46] 。
USD Shell Extension (Activision) - Windows Explorer でUSDファイルをプレビュー表示できるようにするためのシェル拡張[ 47] 。
Blender 4.0以降 - 2.82でUSDエクスポートに[ 48] 、3.0でUSDインポートに、4.0でHydraビューポートに対応[ 49] [ 注 5] 。
USD形式のインポート及びエクスポートのみ可能なソフトウェア
3ds Max 2021.1以降 - MAXtoA (Arnold for 3dsMax) プラグイン経由でUSDエクスポートに対応している[ 50] 。また、インポートとエクスポートに対応するUSD for 3ds Maxプラグインも用意されている[ 51] 。
Cinema 4D R23以降 - インポートとエクスポートの両方に対応[ 52] 。またUSDZ形式のエクスポートにも対応[ 52] 。
Modo 14.1以降 - 14.1でインポートに[ 53] 、14.2でエクスポートに対応[ 54] 。
Unity 2019.1以降[ 注 6] - パッケージマネージャーからインストール可能[ 55] 。インポートだけでなくエクスポートにも対応している[ 55] 。
Unreal Engine 4.16以降[ 56] (Epic Games) - USDインポータ/エクスポータが内蔵されている[ 57] 。4.24以降はライブ編集に対応するUSD Stageも搭載された[ 58] 。
Gaffer - オープンソースのライティングソフトウェア。シーンリーダー及びシーンライターがUSDに対応している[ 59] [ 60] 。
Clarisse 4.0以降 (Isotropix) - ライティングソフトウェア。4.0でUSDインポートに[ 28] 、5.0でUSDエクスポートに標準対応した[ 61] 。開発終了[ 62] 。
KeyShot 10.0以降 - 10.0でエクスポートに[ 63] 、10.1でインポートに対応[ 64] 。
CityEngine 2020.0以降 - 2020.0でエクスポートに、2020.1でインポートに対応[ 65] 。
ZBrush 2021.6以降 - インポートとエクスポートの両方に対応[ 66]
USD形式のインポートのみ可能なソフトウェア
Mari 4.6v4以降 - Mari USD CAPI pluginは元々Pixarの開発したプラグインであったが、その後Foundryが開発を管理するようになった[ 67] 。インポートに対応している[ 67] 。エクスポートは開発中[ 67] 。
採用例
以下の映画の製作に使われている:
また以下のゲームの製作にも使われている:
注釈
^ Luma Pictures製のUSD-Arnoldプラグイン及びRodeo FX製のOpenWalterプラグインの後継
^ Katana USD Plug-insは元々USDの公式プラグインであったが、その後Foundryが開発を管理するようになっている
^ USDの公式プラグインも存在したが、プラグインはUSD 20.05で削除された
^ Maya USD拡張(USD for Maya)はオープンソースとなっている。USDに付属していたMayaプラグイン (19.11で非推奨となり、20.02で削除された) とAnimal Logic管理のオープンソースプラグインであったAL_USDMayaの後継に当たる。
^ 4.0より前はAMD製のBlender USD Hydra Addonが必要であった。
^ 以前はUnity Technologies Japan製のUSD For Unityプラグイン[1] も存在した。
出典
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外部リンク
3Dファイル形式
レガシー
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現行
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