ILL BONE(イル・ボーン)は日本のパンクバンド。1979年に前身の造反医学(ぞうはんいがく)結成、1982年の終わりにに改名、1986 – 1987年頃消滅。
概要・来歴
1970年代末、立教大学の学生だった中田潤(なかだ・じゅん)は、同大学の主流派音楽サークルと趣味が合わない学生たちで反主流派の音楽サークル「Walkin' Jap」を立ち上げる。サークルメンバーには初代ギタリストのOがいた。その2人に日本獣医畜産大学(現・日本獣医生命科学大学)の学生・箕輪政博が加わり1979年、造反医学を結成。バンド名は「造反有理って文化大革命だけど、中国の医者までが「造反」して今までの生き方を捨てたら、病人、けが人が死ぬだろ」(中田)という意味[1]。1982年後半、音楽性の変化に伴いバンド名をILL BONEに改称。韓国・朝鮮語で日本・日本人を意味する일본(イルボン)と英語で「病んだ骨」のダブルミーニング。なお、メンバーに在日韓国・朝鮮人はいない。1986 – 1987年頃のバンド消滅後、中田はフリーライターに、箕輪は鍼灸学者に[2]、石川は音楽活動を継続、石黒は消息不明。
音楽性
日本のフォークやローリング・ストーンズ、クリーム 、頭脳警察などの洋邦の初期ロックに影響されていた中田が、セックス・ピストルズ[3][4]に衝撃を受けてパンクに目覚める。そこに音楽サークル「Walkin' Jap」のメンバーであり中田の一学年下の後輩・石黒浩孝が、音楽的には保守的・ロックンロール回帰的だったパンクに見切りを付けて美的・観念的な急進性を示していたポストパンク(たとえばパブリック・イメージ・リミテッド、スリッツ[5]、レインコーツ[6]、ザ・ポップ・グループ[7][8]、XTC [9]、スクリッティ・ポリッティ[10]など)の革新性を持ち込んだことにより、造反医学はUKポストパンク勢と呼応するような音楽性を獲得。さらにCAN[11]、ブリジット・フォンテーヌ[12][13]、エルヴィン・ジョーンズ[14]の影響が決定的となって、ジョン・コルトレーンが言う「音楽はコードではなく、モード」を実践[15]することにより、「抒情派パンクス」と呼ばれる[16][17]独自の音楽性へと発展した。
バンドコンセプト・歌詞
「パンクバンドに日本語の屈折した世界を、現代詩とかの世界をのっけたいと思った」(中田)[18]というところから始まる。その歌詞は「政治的」と言われることが多い。実際、造反医学時代の歌詞には政治的アジテーションの要素も濃かったが、アジや明瞭なメッセージ性が後退していくことで、現代詩的なILL BONEの詩世界へと至った。メッセージソングを歌うパンクバンドから、自分たちが投げ込まれている現実=日本を問うものへと変化していった[19]。造反医学時代から一貫しているテーマは「戦後というものへの居心地の悪さ」「祖国、日の丸、天皇、日本共産党、中核派に対する違和感」[20]。中田が影響を受けた詩人は萩原朔太郎、寺山修司など[21]。
メンバー
「造反医学」時代
(1979 – 1982)
- 中田JUN – ボーカル、ベース
- O – ギター[22][23][24]
- Lym – ギター(Oの後任)
- 箕輪攻機 – ドラムス
- TSURU – サックス(『青空』録音に参加)
Lymは石黒浩孝の初期名。箕輪には攻機、政博、扇太郎などいくつか異なる表記があるがいずれも同一人物。
第一期 ILL BONE
(1982 – 1983)
- 中田潤 – ボーカル、ベース
- 石黒浩孝 – ギター
- 箕輪攻機 – ドラムス
第二期 ILL BONE
(1983 – 1984)
- 中田潤 – ボーカル
- 石黒浩孝 – ギター
- 石川佳世子 – ベース
- 箕輪扇太郎 – ドラムス
このメンバーでEP『死者』が録音された。この録音を最後にギターの石黒が脱退。「扇太郎」の命名者は町田町蔵。石川は元ラビッツ。
第三期 ILL BONE
(1984)
- 中田潤 – ボーカル
- 大熊ワタル – ギター
- 石川佳世子 – ベース
- 箕輪扇太郎 – ドラムス
第四期 ILL BONE
(1985 – 1986)
- 中田潤 – ボーカル
- 弓削聰 – ギター
- 石川佳世子 – ベース
- 箕輪扇太郎 – ドラムス
再稼働 ILL BONE
(2015年3月 – 2018?)
- 中田潤 – ボーカル
- タカダハルミ – ギター(2015 – 2017)
- 川上啓之 – ギター(2017 – )
- 石川佳世子 – ベース
- 富田俊幸 – ドラムス
オリジナルメンバーの石黒は音信不通、箕輪は鍼灸学者になっていたため代打として、石川のブルースバンドRumble Fishからタカダと富田が加入。
再結成 ILL BONE
(2022年3月 –)
- 中田潤 – ボーカル
- 川上啓之 – ギター(2017 – 2024)
- ヴァイオラ伊藤 – ギター(2023 – 2024)
- 山崎怠雅 – ベース
- 箕輪政博 – ドラムス
2022年9月に無観客ライブを行うが、その後沈黙。2023年12月に本格始動。
未発表曲・未スタジオ録音曲
- 住所
- 光州
- 日本晴れ
- 二月
- Jinta
- ダンシング・デイ
- 一人の男が殺された
- さようなら昭和
- Christine
- Spera
- 霧
「再稼働」後の新曲(未スタジオ録音)
ディスコグラフィ
アルバム、EP
- 造反医学『青空』(1982年、植民地音楽)自主制作カセットLP
- ILL BONE『日本』(2024年、SUPER FUJI DISCS)CD
- ILL BONE『LIVE』(2015年、自主制作)CD-R
- ファンによる2つのオーディエンス録音、1986年7月4日渋谷Live Inn「『NG』発売記念Live」と1984年12月30日渋谷La Mama「ノンセクトラジカル・パーティー」をカップリングしたもの。「再稼働ILL BONE」のライブ会場限定販売。
- ILL BONE『LIVE II. Our February』(2016年、自主制作)CD-R
- ファンによる4つのオーディエンス録音「造反医学 – 1982年10月10日法政大学学生会館大ホール」「1983年4月29日京都大学西部講堂」「1983年11月12日横浜国立大学野外ステージ」「第四期ILL BONE – 録音日時場所不明」から中田潤が選曲し構成したもの[25]。「再稼働ILL BONE」のライブ会場限定販売。
参加作品
- V.A. – NG(1986年、トランスレコード)LP
- 第四期メンバーによる「ナンバーレスランド」を収録。
- V.A. – UGX II(1993年、SSE)CD
脚注
外部リンク