Hop(Hsp70-Hsp90 organizing protein)またはSTIP1(stress induced phosphoprotein 1)は、シャペロンタンパク質Hsp70とHsp90を可逆的に連結するコシャペロンである[5]。
コシャペロンは、シャペロン(主に熱ショックタンパク質)を調節し、補助する。HopはHsp70/Hsp90複合体のコシャペロンとして最もよく研究されている。Hopのホモログは酵母で最初に発見され、後にヒト、マウス、ラット、昆虫、植物、寄生虫、そしてウイルスにも同定されている。これらのタンパク質から構成されるファミリーはSTI(stress inducible protein)と呼ばれ、植物型、酵母型、動物型へと分類される場合もある。
シノニム
- Hop
- Hsc70/Hsp90-organizing protein
- NY-REN-11 antigen
- P60
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- STI1
- STI1L
- STIP1
- Transformation-sensitive protein IEF-SSP-3521
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遺伝子
ヒトのHopをコードするSTIP1遺伝子は11番染色体(英語版)(11q13.1)に位置し、14個のエクソンから構成される。
構造
STIタンパク質は、いくつかの共通した構造的特徴を有する。全てのホモログは9個のTPRモチーフ(英語版)を持ち、これらは3つのドメイン(TPR1、TPR2A、TPR2B)へとクラスタリングされる。TPRモチーフは多くのタンパク質に広くみられる構造的特徴であり、タンパク質間相互作用を担うことが多い。N末端のTPR1ドメインとHsp70のC末端ペプチドの複合体、中心部のTPR2AドメインとHsp90のC末端ペプチドの複合体の結晶構造が得られている[6]。
Hopは、Hsp70とHsp90の間でのクライアントタンパク質の移行を担うコシャペロンである。Hopは真核生物の間で進化的に保存されており、核と細胞質の双方に存在する[7]。ショウジョウバエのHopは、3つのTPRドメイン(TPR1、TPR2A、TPR2B)と1つのアスパラギン酸-プロリンリピート(DP)ドメインから構成される単量体タンパク質である。TPRドメインはHsp90やHsp70のC末端領域と相互作用し、TPR1とTPR2BはHsp70、TPR2AはHsp90に対して選択的に結合する。シャペロンの機能は一過的かつ急速であるという性質を持つため、こうした熱ショックタンパク質からなるシャペロン装置の中間体構造の完全な特性解析は困難を伴う[8]。
機能
Hopの主な機能は、Hsp70とHsp90を連結することである。また、連結されたタンパク質のシャペロン活性を調節し、また他のシャペロンやタンパク質と相互作用している可能性も示唆されている。HopはHsp70/Hsp90シャペロン装置における役割以外にも、他のタンパク質複合体に加わっているようである(昆虫の脱皮ホルモン受容体であるEcR/USP複合体や、ウイルス転写を可能にするB型肝炎ウイルスの逆転写酵素複合体など)。また、プリオンタンパク質の受容体としても機能している[9][10]。Hopは多様な細胞区画に存在し、また細胞質と核の間を移行する。
ショウジョウバエのRNAi経路においては、HopはsiRNAのためのpre-RISC複合体の重要な部分をなしていることが示されている[11]。またショウジョウバエでトランスポゾンの抑制を担うRNAi経路であるpiRNA(英語版)経路ではHopはPiwiと相互作用し[12]、Hopが存在しない場合にはトランスポゾンの抑制が解除されて重度のゲノム不安定性と不妊が引き起こされる[13]。
相互作用
ヒトのHop(STIP1)は、PRNP(英語版)[14]、HSP90AA1[15][16]と相互作用することが示されている。
出典
関連文献