株式会社GAUSS (ガウス)は人工知能 (AI)を扱う日本の企業。競馬予想 を行う「SIVA 」や、アパレルEC 向けの画像認識、タグ付け、編集システム「ATS 」、動画編集システム「Zooom 」、資格試験問題予想AI「未来問 」を展開。AI開発支援プラットフォームのクラウドサービス「GAUSS Foundation Platform」や受託開発も手掛ける。2017年5月に創業したスタートアップ企業(ベンチャー )で、富士通 を退社して創業した宇都宮綱紀[ 注釈 1] が代表取締役 を務める。人工知能学会 賛助会員[ 16] 、日本ディープラーニング協会正会員[ 13] 。
沿革
2016年の秋頃に、富士通 在職の宇都宮綱紀[ 注釈 1] が競馬予測ソフト「SIVA 」の開発を開始[ 17] [ 8] 。富士通で新規事業として提案して採択されるが、1か月後にプロジェクトスタートというの待ち時間に耐え切れず宇都宮は同社を退職。projectSIVAとして2017年2月にサービスを開始する[ 8] 。同年4月の時点では10月に創業予定であったが、結局2017年5月2日に開業した[ 8] 。
知人の紹介をきっかけに、ディップ株式会社がAI 企業を対象に始めたアクセラレータプログラムの支援を受ける[ 11] 。アパレル 会社のANAP と連携し、「ATS 」を開発。ANAPオンラインショップに適用する[ 18] 。12月にはこのディップやANAPら3社から1.7億円の資金調達を果たし[ 10] 、2018年1月10日には、フジテレビ のホンマでっか!?TV にSIVAが取り上げられている[ 19] 。
2018年2月には渋谷区 に本社を移転[ 4] 。3月にピザハット との連携を開始し、5月15日からは広くAIに対する相談に対応する「実証レポートサービス」を開始[ 20] 。8月31日にはATSの技術をもとに動画編集システム「Zooom」をリリース開始し[ 21] 、月には東京大学 発のAIスタートアップ企業 であるBusiness Hubとも、業務提携 も合意が成立した[ 22] 。2018年10月には「Gauss Foundation Platform」を展開し[ 23] 、2019年1月にはMatrixFlow社が「Autoflow」をこのプラットフォームで提供することを発表した[ 24] [ 25] 。
2019年4月に「AI競馬 SIVA」は「スポニチ AI競馬予想 SIVA」に名称変更し、運営は株式会社CYMES[ 注釈 5] に移行。GAUSSは共同開発という立場になる[ 26] [ 27] [ 28] 。また、同年4月には物体検知AI「Grapick」と文字認識AI「G-OCR」の開発を発表し[ 29] [ 30] 、同8月には名古屋テレビ・ベンチャーズ の出資を受けている[ 31] 。また、同年8月末から9月にかけて日本ディープラーニング協会が主催したCDLEハッカソンではメンター やリリーススポンサーを務め、キックオフ時の会場も提供している[ 32] [ 注釈 6] 。
技術・サービス
GAUSSは形態素解析 やチャット・ボット などを用いる自然言語処理 、強化学習 やベイズ推定 などを用いる予想・予測、ディープラーニング やデータ・クラスタリング などを用いた画像認識 の技術を持ち、
Galileo(ガリレオ) - 予測エンジン
Goeth(ゲーテ) - 自然言語エンジン
Gogh(ゴッホ) - 画像認識エンジン
として実装している[ 20] 。これらは後述の製品・サービスに応用するとともに、人工知能 の実証研究レポートや、電力需要予測などの受託開発に活用されている[ 20] 。
また、GAUSSはピザハット とビッグデータ 解析の共同研究に取り組んでおり、宅配ピザ の販売データから待ち時間短縮や売上増につなげことを目指している[ 35] [ 17] 。2018年10月からはAI開発支援プラットフォーム「GAUSS Foundation Platform」というクラウドサービスを開始しており、その基盤技術としてOracle Cloud Infrastructure を採用している[ 36] [ 23] 。
SIVA
SIVAは障害競走 などを除く日本中央競馬会 のレースをカバー[ 37] 。新馬の出始める春頃はデータ不足で的中率が落ちるという[ 37] 。
SIVAは競馬場 の芝 とインド の神様であるシヴァ に由来する[ 38] 。競馬 の勝馬投票券 の予測をするウェブアプリケーション 、モバイルアプリケーション で、言葉で問いかけるインターフェース に特徴がある。以前から馬券をやっていた人よりも、新しく競馬をやってみようという人を増やすことを意図している[ 37] [ 39] 。JRA(日本中央競馬会 )のデータ、およびウェブ上の情報から学習する。また、「SIVA PRESS」というサイトも設けている[ 39] 。
開発のきっかけは創業者である宇都宮の父親 が競馬好きだったこと、AI の応用としてデータが充実してわかりやすかったことがあげられる[ 11] [ 39] 。宇都宮が富士通 に在籍していたときから開発を始め、同社で事業提案して採択されていたが、1か月の待ち時間に宇都宮が耐え切れず、富士通を退職して2017年 2月からサービス開始、GAUSSの創業に至っている[ 11] [ 8] 。2017年のジャパンカップ では3連複(三連勝複式) を的中させたという[ 9] 。
インド競馬を対象とした海外展開も検討しており[ 8] 、2019年2月にはユーザー数が8万人を突破した[ 40] 。2019年4月から運営元を毎日新聞とスポーツニッポンが出資する株式会社CYMESに移行。サービス名を「スポニチ AI競馬予想 SIVA」に変更し、スポニチアネックス の競馬記事も配信するようになった[ 26] [ 27] [ 28] (4月5日から5月9日まではβ版として無料リリース[ 26] )。
ATS(Auto Tagging System)
ATSでは画像中の特定のアイテムにタグ付け、抽出ができる
[ 41] 、Zooomでは動画上で特定のアイテムを拡大し、画像では分からない質感を
ECサイト 上で提示できる
[ 42] [ 43] 。
画像の中からキーワードに対応したファッションアイテムを見つけ出し、タグ付けするシステム。株式会社ANAP の子会社ATLABとの共同研究で開発している。実際にANAPオンラインショップで活用され、業務効率の改善が確認されている[ 41] [ 42] [ 18] 。
アイテムの認識にはディープラーニング の一種である畳み込みニューラルネットワーク (CNN、Convolutional Neural Network)を用いている[ 41] 。さらに背景から特定のアイテムを切り離すために、独自開発の特許出願技術を用いて高精度化を果たしている[ 41] 。
Zooom
ATS の技術の発展形にあたる動画編集システム。動画の中から指定したファッションアイテムの服を抽出し、拡大して表示できる。システムに画像をアップロードし、アイテムを指定すると10秒程度で処理が終わる。アパレル 系のECサイト では画像が多く、編集に手間のかかる動画はあまり用いられていなかったが、Zooomを用いれば簡単かつ安価に動画で「質感」などより多くの情報を伝えることができる[ 21] [ 42] [ 43] 。
未来問
回帰型ニューラルネットワーク の一種であるLSTM を用いた時系列学習で、カテゴリー分けした宅地建物取引士 試験問題を過去の試験問題から予測する。90を超えるカテゴリー分けは連携先の株式会社サイトビジットが行っており、1989年 以降の試験問題データで学習させた。開発段階では2017年度問題を7割的中させた実績を持ち、サイトビジットが運営する「資格スクエア」で2018年の予想問題が同年10月9日から提供されている[ 44] [ 45] 。
脚注
注釈
出典
外部リンク