「A面で恋をして / さらばシベリア鉄道 」(Aめんでこいをして さらばシベリアてつどう)は、1981年10月21日 (1981-10-21 ) に発売されたナイアガラ・トライアングル (大滝詠一 、佐野元春 、杉真理 )通算2作目のシングル 。
解説
「A面で恋をして」はアルバム 『NIAGARA TRIANGLE Vol.2 』[ 注釈 1] の先行シングルで、シングル用ミックス。初回プレスは同心円の溝にマシンガン音が入っているほか、値段が印刷ではなくスタンプになっている[ 1] 。
大滝詠一 によれば、後にアルバムへと発展することになる佐野元春 、杉真理 とのトライアングル構想は、大滝のアルバム『A LONG VACATION 』[ 注釈 2] 発売がきっかけだという。大滝は「まぁ、売れるか売れないかはわからないし、期待半分、ダメだろう半分。プロモーションにあたって、周りはみんな<恋するカレン >[ 注釈 3] がいいって言うんだよ。でもリード・トラックとしては<君は天然色 >[ 注釈 4] 以外はダメだ、と。あれが最初にレコーディングしたものだし、これがナイアガラ・サウンドだからって。ソニーは、じゃ<君は天然色>[ 注釈 4] で推します。ただ、シングルが売れないとアルバムは売れないからCM取ってきますって。で、春のキャンペーンの話が来たの。カネボウ から。でも、商品名を入れてくれって言うんだよ。で、やめた。最初から最後まで商品名なら歌わないこともないよ。でも、すでにできあがった曲の歌詞を商品名で歌い替えるなんて、殺されたって出来ない。このアルバムはシングルなんかなくたって売れるんだってスタッフに言ったんだけど、初登場70位だったの。でも、77年の『CMスペシャル』[ 注釈 5] 以来、アルバムは4年間チャート・インなし。70位だってめったにない話だったからうれしいですよ。それで、とりあえず10万枚達成。6月末にみんなでお疲れさん会をして。よかったねぇって。ところがその後、夏にかけて急に売れ始めたんだよ。ロート製薬 が<君は天然色>[ 注釈 4] と<カナリア諸島にて >をCMに使ってくれて。それが功を奏して8〜10月に10万枚ずつ売れた。前にも言ったけど、『ロング・バケイション』[ 注釈 2] は初めて自分を歌手として作ったアルバムなんですね。それまではキーを自分に合わせたことすらなかった。で、歌手として受けたからもういいなと思ったの。3か月くらいで。もしダメだったら、あれがファイナル・アルバムとなった可能性もあったわけですよ。でも、ふと思ったのは、これナイアガラだよな、と。コロムビア 時代には失敗したけれども、ここはレーベル構想を再び生かすところじゃないか。歌手として一般に認知されたから、プロデューサーとしても認知されなければならない。だから、次は歌手は置いておこう、と。そのときに来た仕事が二つ。ひとつは松田聖子 の<白いパラソル >[ 注釈 6] の次のシングル[ 注釈 7] 。もうひとつはONアソシエイツから来た資生堂 の秋のキャンペーン。春にカネボウやってたら秋に資生堂は来ません。これがね、何の因縁か。まぁ、断ったんだけどね」「『ロング・バケイション』[ 注釈 2] は1回チャートで下がったのにまた上がった。ひと月に10万枚ずつ売れている。そんなときに資生堂の秋キャン、大滝詠一のソロ・シングルっていうと、黙ってたって売れるでしょ。シングルは全然売れない。だけど、資生堂のキャンペーンで出たら大滝詠一の決定打になっちゃうじゃない。そうなると歌手として引けなくなるのよ。だから断ったわけ。でも、キャッチ・コピーが出来てるっていうからさ。とりあえず、“キャッチ・コピーなに?”って聞いたのが運の尽き」[ 2] という。
そして「(コピーが“A面で恋をして”で)言われたときパッとできちゃった。あぁ、できちゃったなぁ。大滝詠一で<A面で恋をして>、売れそうだなぁ、と。でも待てよ、レーベル構想として、プロデューサーとして、何かいいアイデアはないか。その時、松田聖子のシングルってのも言われているわけでしょ。聖子はずーっとシングル1位を続けている。<A面…>と松田聖子、同時に出たら片方はベスト10確実、もう一方は間違いなく1位。話題になっちゃう。じゃ、ここで大滝詠一という名前を使わないですむ手はないか。で、思いついたのが『ナイアガラ・トライアングルVol.2』しかない、と。まだ“A面で恋をして”の部分しか出来てなかったけど、これをトライアングルでやるんだと思った瞬間、バディ・ホリー のスペクター・サウンド っていうイメージができちゃった。そうすると、あと二人いないと成立しない」[ 2] ということで、佐野と杉の二人に決まったという。佐野とは『NIAGARA TRIANGLE Vol.1 』[ 注釈 8] のメンバーだった伊藤銀次 が佐野のバンド“ザ・ハートランド”に参加していたことから1980年8月24日 (1980-08-24 ) 、『A LONG VACATION』[ 注釈 2] 収録曲「さらばシベリア鉄道」のレコーディング・スタジオに伊藤と見学に来たことで、一方の杉とは1979年11月 (1979-11 ) 、かつて杉のソロ・デビュー以前のバンド“マリ & レッド・ストライプス”を手がけたビクター のディレクター(当時)川原伸司 の結婚式で出会うなど、既に二人とは面識があった。
「A面で恋をして」のアイデアは1975年 (1975 ) に沢田研二へ提供した「あの娘にご用心」[ 注釈 9] と関係があり、この曲は音楽ライター相倉久人 が雑誌『週刊ポスト 』で書いた大滝のアルバム『NIAGARA MOON 』[ 注釈 10] の紹介コラムを読んだ渡辺プロダクション のスタッフから依頼を受けて書かれたが、大瀧は「あのアルバムの中で沢田さんに合いそうな曲は<シャックリ・ママさん>しかない。聞けば分かるとおり構造はバディ・ホリーの<ペギー・スー>。当時のファンキー・サウンドに乗せてやっているから元がわかりにくいけど。しゃっくり唱法がバディ・ホリーの得意とするもので。これを元に沢田さんに<あの娘にご用心>を書いた。アレンジは同じ。バディ・ホリーの曲の要素を入れながらバディ・ホリー・オリエンテッドなものを書いた。後ろで歌っているのは僕と山下 。沢田研二がメインのトライアングルなんですよ。で、後の<A面で恋をして>も僕が沢田研二で、僕と山下の役が杉くんと佐野くん。そう考えると<あの娘にご用心>が“『トライアングル』0号”と言えなくもない。<A面…>がバディ・ホリーをスペクター・サウンドにしたらどうなるかという曲になったのは、これを踏まえているんですよ。シンメトリーになってる」[ 2] という。シングルはCMタイアップの後押しもあって好チャート・アクションを示したが、CM出演タレント のスキャンダルが原因で、CMが約1週間で打ち切りとなったため最高順位14位にとどまった。それでも、ナイアガラ・レーベル としては過去にないヒット・シングルとなり、アルバムに向けた最高のアピールとなった。
後に45回転盤LP『NIAGARA CM SPECIAL Vol.2 』[ 注釈 11] にCM用にレコーディングされた“CM Version”[ 注釈 12] 、ヴォーカルだけを取り出した“A Cappella”、カラオケの“Tracks Only”が収録された。2022年3月21日 (2022-03-21 ) リリースの『NIAGARA TRIANGLE Vol.2 40th Anniversary Edition 』[ 注釈 13] にボーナス・トラック として、大滝が1981年12月3日 (1981-12-03 ) に渋谷公会堂 で開催した「HEADPHONE CONCERT」より、同曲唯一のライブ音源が“1981/12/3 Headphone Concert Version”として収録された[ 3] 。
大滝のパートを伊藤が歌うという佐野、杉、伊藤による変則スタイルのナイアガラ・トライアングルにて、杉のライヴ“魔法の中心”[ 注釈 14] 、佐野の30周年アニバーサリーツアー・ファイナル“ALL FLOWERS IN TIME 大阪”[ 注釈 15] と松本隆 作詞活動45周年記念ライヴ“風街レジェンド2015”[ 注釈 16] で演奏された。
ミュージック・ビデオ
2022年 (2022 ) 、『NIAGARA TRIANGLE Vol.2』[ 注釈 1] の発売40周年を記念して、「A面で恋をして」のオフィシャル・ミュージックビデオが3月16日12:00にYouTube で公開された。MVにはナイアガラ・レーベル のファンである江口寿史 のイラストが使用され、江口のマンガ「ストップ!! ひばりくん! 」のキャラクターなども登場する。MV制作は日本のポップミュージックに造詣が深く、大滝作品のファンである、シンガポール在住インドネシア人の映像クリエイター・Ardhira Putraが担当し、海外からの視点で1980年代のジャパニーズカルチャーをオマージュした、エキゾチックな映像となっている[ 4] [ 5] 。
収録曲
SIDE A
A面で恋をして / ナイアガラ・トライアングル – (3:15) NT-2
Words by 松本隆 , Music by 大瀧詠一 , Arr. by 多羅尾伴内 資生堂 バランシングゼリーCF曲
SIDE B
さらばシベリア鉄道 / 大滝詠一 – (3:47) OT-9
Words by 松本隆, Music by 大瀧詠一, Arr. by 多羅尾伴内
クレジット
カヴァー
アーティスト
収録作品(初出のみ)
発売日
規格
品番
ライジング・チャート・バンド
ジューク・ボックス'81
1981年12月16日 (1981-12-16 )
7"シングルレコード
07SH 1116
RONNIE SPECTOR
CANARY ISLANDS 大瀧詠一作品集[ 注釈 17]
1992年6月30日 (1992-06-30 )
CD
VJCA-00017
小滝詠一
冷麺で恋をして[ 注釈 18]
2001年2月21日 (2001-02-21 )
CD
HGCB-1023
BARGAINS
ナイアガラで恋をして Tribute to EIICHI OHTAKI
2002年11月20日 (2002-11-20 )
CD
WPC6-10237
曽我部恵一 with 川上つよし・茂木欣一 ・沖祐市
Niagara Summer〜Niagara Cover Special
2006年8月30日 (2006-08-30 )
CD
TOWER-1014
原田知世
恋愛小説3〜You & Me
2020年10月14日 (2020-10-14 )
CD
UCCJ-2182
リリース日一覧
脚注
注釈
出典
外部リンク
KING (1971年 (1971 ) -1972年 (1972 ) )
Bellwood / KING
(1972年 (1972 ) -1973年 (1973 ) )
シングル
空飛ぶくじら (1972年6月25日 (1972-06-25 ) )
スタジオ・アルバム
大瀧詠一 (1972年11月25日 (1972-11-25 ) )
NIAGARA ⁄
COLUMBIA (1976年 (1976 ) -1980年 (1980 ) )
NIAGARA /
CBS/SONY (1981年 (1981 ) -1991年 (1991 ) )
シングル スタジオ・アルバム その他 (CM集・ インストゥルメンタル・ 編集盤等) ボックス・セット
その他(プロデュース作品・提供曲・作品集・編集盤等)
カテゴリ
楽曲
アルバム
オリジナル ミニ ベスト ライブ セルフカバー コンピレーション トリビュート カセットブック 企画盤
出演番組
関連人物 関連項目
^ オンライン販売のみでの発売。
^ 佐野元春MusicUnited.名義。
^ 佐野元春 & 雪村いづみ 名義。
^ 桑田佳祐 feat. 佐野元春, 世良公則 , Char , 野口五郎 名義。
^ 渡辺美里 とのデュエット。
^ 雪村いづみとのデュエット。
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