ATF6(Activating transcription factor 6)は、ATFファミリーに属する転写因子であり、小胞体ストレスに応答して小胞体タンパク質の発現を誘導する。
折りたたみ不全のタンパク質が小胞体に蓄積すると、ATF6の切断が起こる。切断された細胞質部分は核へ移行し、小胞体シャペロンなどの転写を促進する。
機能
ATF6は、小胞体膜に局在する1回膜貫通タンパク質として合成される(II型であり、細胞質側にN末端、小胞体内腔側にC末端がある)[1]。
ATF6は、通常の状態では小胞体内腔部分に分子シャペロンであるBiPが結合しており不活性な状態に保たれているが、小胞体ストレスが生じるとBiPが異常タンパク質の修復に向かうために外れる[2]。これによりゴルジ局在シグナルが露出したATF6はゴルジ体に送られ[3]、S1P(site 1 protease)、S2P(site 2 protease)という2つのプロテアーゼにより切断され転写因子部分が放出され核内に移行する[4][5]。また、切断された転写因子部分はMAPキナーゼであるp38にリン酸化されることでその機能が亢進する[6]
転写因子の部分は、塩基性ロイシンジッパー構造をとっており[7]、ATF/CREBファミリーに属している[8]。核内では、DNAのER stress response element(ERSE)と呼ばれる領域に結合する[9]。ATF6が転写する標的遺伝子として、転写因子であるCHOP[10]やXBP1[11]、BiP[12]、小胞体関連分解 (Endoplasmic Reticulum(ER)-associated degradation; ERAD)に関わるタンパク質、糖鎖修飾酵素などの小胞体タンパク質など[13]がある。
放出された転写因子は、その後ユビキチン-プロテアソームシステムにおいて分解される[14]。
アイソフォーム
ATF6はATF6遺伝子にコードされたATF6[15][16](またはATF6α)とG13(またはATF6B)遺伝子にコードされたATF6βの2種類のタンパク質が存在する[9]。ATF6βはATF6αに比べて、遅くまた弱く作用する[17]。
相互作用
ATF6は、ATF6同士のホモダイマーやXBP1とのヘテロダイマーを形成しうる[18]。また、YY1[19]やNF-Y[19][20]、TFII-I[21]、血清応答因子[22]と相互作用する。
疾患への関与
肝細胞癌では、ATF6や、他の小胞体ストレスタンパク質であるXBP1、BiPの発現上昇・活性化が見られた[23]。また、C型肝炎ウイルスのレプリコンはATF6の活性化を促進する[24]。
出典
外部リンク