その後2細胞が融合して有糸分裂を経て4核の細胞が生じ、これが4細胞からなるパンスポロシストになる。2細胞は外側を覆う体細胞、残りの2細胞は生殖細胞でここでは仮にα・βと呼ぶことにする。生殖細胞は3回分裂して合計16個の配偶子細胞を生じ、これがさらに減数分裂を行って極体を放出する。その後α由来の配偶子細胞とβ由来の配偶子細胞が接合して8つの接合子が生じる。少なくとも M. cerebralis の場合、これが生活環中で見られる唯一の有性生殖である。この間に外側の体細胞は2回分裂するので、最終的にパンスポロシストは8つの接合子を8つの体細胞が包んでいる形になる。
多系統的な属であるが中でも M. cerebralis が最も有名であり、研究もよく進んでいる。これはサケ科魚類の旋回病の病原体で、軟骨組織に胞子を形成するため骨格が曲がりまっすぐ泳ぐことができなくなる。サケ科の様々な魚に感染するが、とくに養殖ニジマスにおいて深刻である。元々ヨーロッパに分布していたが、養殖用に輸出されたニジマスによって北アメリカに分布を広げ猛威をふるっている。釣り人も分布拡大に一役買っていると考えられている。他にコイの筋肉ミクソボルス症を引き起こすダエンシズクムシ(コイ筋肉ミクソボルス[5]) M. artusなどが重要な病原体である。
粘液胞子虫を始めとする原虫の研究者でありアメリカに帰化した工藤六三郎 (Richard R. Kudo) に献名された属。分子系統解析に基づき、胞子に4つ以上の極嚢があるもの全てを Kudoa 属に所属させることになった[6]。筋肉組織にシストを多数形成する場合と、魚の死後にジェリーミートと呼ばれる筋肉融解を引き起こす場合とがある。世界的にはジェリーミートを引き起こすホシガタクドアK. thyrsites が有名である。日本では特に奄美クドア症の病原体 アマミクドア(奄美クドア[5]) K. amamiensis が深刻で、奄美・沖縄水域の一部でブリの養殖をすると高い確率で感染し商品価値が失われる。2010年にヒラメ、マグロに寄生するナナホシクドアK. septempunctataを摂食したことによる食中毒事例が報告され、水産業上のみならず公衆衛生の観点からも注目されるようになっている[7][8]。
脚注
^Wolf, K. & Markiw, M.E. (1984). “Biology contravenes taxonomy in the Myxozoa: new discoveries show alternation of invertebrate and vertebrate hosts”. Science225: 1449-1452. doi:10.1126/science.225.4669.1449.
^Bartholomew, J. L., M. J. Whipple, D. G. Stevens and J. L. Fryer (1997). “The life cycle of Ceratomyxa shasta, a myxosporean parasite of salmonids, requires a freshwater polychaete as an alternate host”. American Journal of Parasitology83: 859-868. PMID9379291.
^Kent, M. L., Margolis, L., Corliss, J. O. (1994). “The demise of a class of protists: taxonomic and nomenclatural revisions proposed for the protist phylum Myxozoa Grasse, 1970”. Canadian Journal of Zoology72 (5): 932-937. doi:10.1139/z94-126.
^Whipps, C. M. et al. (2004). “Phylogeny of the Multivalvulidae (Myxozoa: Myxozporea) based on comparative ribosomal DNA sequence analysis”. Journal of Parasitology90 (3): 618-622. doi:10.1645/GE-153R.