砂原 良徳(すなはら よしのり、1969年9月13日 - )は、日本のテクノミュージシャン、マスタリング・エンジニア。1991年から1999年まで電気グルーヴのメンバーとして活動。「日本プロ音楽録音賞」ベストパフォーマー賞受賞者[1]。2022年よりTESTSETのメンバーとしても活動中[2]。愛称は「まりん」[3]。
略歴
北海道札幌市豊平区出身[4]。小学4年の時、地元のロボット展示会で耳にしたYMOの『中国女』が、自らの音楽的な出発点という[4]。中学生でシンセサイザーを始め、YMOやクラフトワークなどの、テクノポップ・ニューウェーブの影響を強く受ける。1991年には平沢進のコンサートツアー「ヴァーチュアル・ラビット・ツアー」でのサポートメンバーを経て平沢から解凍後のP-MODELへの加入を願われたが、1991年春、かねてから交流のあった石野卓球に渡したデモテープがきっかけとなり石野から電気グルーヴへの加入希望を先に言われていたこともあり、CMJK脱退後の電気グルーヴのメンバーとして同年夏に加入[5]。8年間の活動後、フランスで開催された音楽ビジネスの国際見本市「MIDEM」でのライヴを最後に1999年4月2日付で正式に脱退。
別名義でのリリースやリミックス作品提供など、単発的かつ課外活動的なソロワークは多数あったものの、本格的な本人名義のソロ活動の開始は1995年から。それまではアナログシンセサイザーを多数駆使し、クラフトワークのアルバム『The Mix』の影響が色濃い「往年のテクノポップの要素を取り入れたダンスミュージック以降のテクノ」とも評される作風が特徴だったが、ソロデビュー作『CROSSOVER』ではアナログシンセの使用を制限し、サンプリング主体によるモンド・ラウンジ路線の作品を発表し大きな話題を集めた。その傾向は電気グルーヴ本体の活動にも影響を与えている。だが、バンド脱退後に発表したアルバム『LOVEBEAT』ではよりシンプルなエレクトロニック・サウンドに進化した。日本国内のみならずドイツのBungalowレーベルからは全アルバムがリリースされている。その一方、SUPERCARやACOなど他アーティストのプロデュースでも活躍中。リミキサーとしてはYMO、テイ・トウワ(TOWA TEI)、リップスライム、Fantastic Plastic Machine、福富幸宏、高橋幸宏、ピチカートファイヴ、GREAT3、コーネリアス、テレックス、森若香織、李博士、矢野顕子、Coldcut、DE DE MOUSE、フルカワミキ、サカナクションなど多数の作品を手掛ける。
電気グルーヴのメンバーとして作品への参加は、最大のヒット曲「Shangri-La」を含む『A(エース)』までとなるが、2001年に発売された電気グルーヴのアルバム『The Last Supper』や、2005年に発売された電気グルーヴ×スチャダラパーのアルバム『電気グルーヴとかスチャダラパー』では砂原もサポートとして参加しており、脱退したとはいえ電気グルーヴとの交流は盛んである。実質的には、『J-POP』までは、ライヴツアーを音源化した『イルボン2000』以外のアルバムには何らかのかたちで関わっているということになる。それ以降も、先述のJ-POP発売時のライブや、その年のライジング・サン・ロックフェスティバルでもシークレットゲストとして参加している。2012年8月25日には、卓球主催のテクノフェスティバル「WIRE12」に初めて出演した[6]。趣味のCM映像収集[7]を活かしたローカルCM企画[8]など、『ピエール瀧のしょんないTV』(静岡朝日テレビ)にもたびたび出演している。
また、電気グルーヴに加入した当初の名義は「良徳砂原(よしとく すなはら)」表記を使用していたが、1994年の電気グルーヴのアルバム『DRAGON』以降は「砂原良徳」表記になっている。これに関しては特に改名の意向が示されたわけでもなく、レコード会社との契約上は当初より「砂原良徳」であった。1995年のソロデビュー作『CROSSOVER』がテクノ以外の多方面でも広く話題を集めた結果、単に人気バンドメンバーのソロ作という枠を超え、本名での知名度も広まっていくこととなった。
愛称の「まりん」は電気加入当初にあみだくじで決められた。由来は楳図かずおの漫画『わたしは真悟』に登場するキャラクターから。
小山田圭吾とは1990年代後半より親交が深い。リミックス以外で表立った共演はなかったが、2010年に小山田のアルバム『FANTASMA』のリマスターを担当した。
クイズ番組『カルトQ』のYMO特集で優勝している。序盤は苦戦していたが、点数がランクアップする問題に差し掛かると正解を連発、一気に他の回答者をごぼう抜きにし、最終問題の段階で既に優勝が決まっているほどの点数を獲得した。
2014年から、高橋幸宏、小山田圭吾、テイ・トウワ、ゴンドウトモヒコ、LEO今井らと共にMETAFIVEのメンバーとしても活動している。
2021年、8月20日に相対性理論のギタリストの永井聖一と、GREAT3のドラマーにして高橋幸宏とLEO今井とも縁が深い白根賢一をサポートメンバーに迎え、『METAFIVE(砂原、LEO今井)』でフジロックフェスティバル'21のホワイトステージに出演[9]。
同年の8月22日にはフジロック'21のセトリ最後の出演者として『砂原良徳』名義でレッドマーキーステージにて公演[10]。
2022年2月より、フジロック'21特別編成版のMETAFIVEを『TESTSET(砂原良徳×LEO今井×白根賢一×永井聖一)』と命名し、メンバーの一員として活動を開始[2]。
同年12月6日、『LOVEBEAT 2021 Optimized Re-Master』の360 Reality Audio版の中から「LOVEBEAT」が「日本プロ音楽録音賞」ベストパフォーマー賞を受賞[1]。
作品
ソロ活動
シングル
シングル(アナログ)
2ndアルバム『TAKE OFF AND LANDING』の予告編という扱いにはなっているが、実際は同作冒頭に登場する『新宿都庁跡の地下に建てられた架空の空港』のノベルティとして製作された港内案内レコードという設定で、ひとつの音楽作品というよりは、もはやSF作品ともいうべき内容。豪華なブックレットとステッカー(実在の航空会社のロゴ)のついたピクチャー盤である。全体のデザインも含め、常盤響とのコラボレーション作という趣が強い。砂原自身「こういうものが欲しかった」という物欲を満たすために製作したと発言しており、半ばコスト度外視で、極少数がリリースされたのみの貴重な一枚である。B面にはアルバム「CROSSOVER」のダイジェスト・カットアップを収録。
- JOURNEY BEYOND THE STARS - 1998年
- CRIPPER'S DISCOTIQUE BREAK - 1999年
ドイツの音楽レーベルBungalow(バンガロウ)からのリリース。サンプリングの権利関係の問題で、現在は『hypnotize』というタイトルでカヴァーという扱い。
ドイツBungalowからのリリース。2001年リリースのアルバム『LOVEBEAT』収録の表題曲とは同名異曲で、日本盤には収録されていない。電気グルーヴ脱退後初のリリースとなりファンの話題をあつめたが、実際には電気グルーヴ在籍時にとあるファッションショーのために書き下ろされた曲が後になってリリースされたものである。
ドイツBungalowからのリリース。12インチシングル盤。ドイツにおいてはアルバム『LOVEBEAT』(日本盤は2001年、ドイツ盤は2002年リリース)に先行する形で発売された。A面にはアルバム『LOVEBEAT』表題曲の長尺版「Lovebeat (Not Space) - Deep And Long」を、B面には同アルバムより「In And Out」・「Balance」をそれぞれ収録している。
アルバム
ユニット
メンバークレジットには、田尻智、増田順一、NAOHITO KAWANO、杉森建、久川大志、田中純が記されている。
MIDNIGHT BOWLERS(常盤響とのユニット)によるもの
- LIMITED EDITION NOT FOR SALE - 1995年
『CROSSOVER』とほぼ同時期に制作された、世界各国の音源(電子音楽からエキゾ、ソフトロックなどの、いわゆるモンドミュージック)のコラージュ/カットアップで構成されたCD。TRANSONIC RECORDSよりプレスされるが、(コラージュという作品の性質上)著作権に触れる内容のため、非売品という名目だった(ただし、一部の店舗には流通し、極少数が販売されている)。実際のところレーベルの通販利用者に対するプレゼントや、関連イベントにおいて入場者全員に配布されるなど、ノベルティCDとしての役割も果たしていた。
また、これ以前にプレスミスによりお蔵入りとなったバージョンも存在し、こちらは微妙に音質(イコライザーの設定)が異なっている。再プレス時には後半の一部内容に手直しが施されたため、収録内容も若干異なっている。プレスミス盤はケースもない裸の状態で砂原宅に保管されていたが、小山田圭吾がFM802で担当していたラジオ番組「ラブ・オーバータイム」に砂原がゲスト出演した際にこの話題に触れ、10人の番組リスナーにプレゼントされている。また、この他に砂原宅の来客に配られたり、TRANSONIC RECORDSの福袋に封入されるなどして多数が世間に流出している。なお、これら二種類の盤の外観上の違いは、ジャケットの有無やレーベル面が銀であるか金であるかで見分けることができる。それぞれの総プレス数に関しては明らかにされていないが、件の番組中の発言によれば金盤(プレスミス盤)だけでおよそ三桁ほどが存在した模様。どちらも現在は入手困難である。本作品は電気グルーヴの「A」やコーネリアスの「FANTASMA」など、1990年代後期のいくつかの作品に影響を与えたとされている[要出典]。収録曲の中でもTPOの「sun dog」は、小山田の耳にもとまり、「小山田圭吾の中目黒ラジオ」のエンディング曲に採用され、後のTPO再評価のきっかけとなった。
1996年、野外音楽イベント「ナチュラルハイ」の砂原のライブでは、常盤響がサポートで参加している。
『NOT FOR SALE』以降「MIDNIGHT BOWLERS」を名乗り、TRANSONIC RECORDSのオムニバスやリミックスに参加した際の音源をまとめたもの。
公式にはカウントされていないが、CROSSOVER〜THE SOUND OF 70'sまで音の変換を垣間見ることが出来る。96年頃、MIDNIGHT BOWLERSのオリジナルアルバム発売予定もあったがお蔵入りになった。
FROM TIME TO TIME (田中純とのユニット)によるもの
唯一の12インチシングル。半透明カラービニール。「BEAT BOX」「DRIVER'S EYE」「THROUGH TRAFFIC」収録。
佐久間英夫主催のレーベルSUBVOICEの第一弾リリースだった。また、お蔵入りとなったが、SUBVOICEからリミックス12インチシングルのリリース予定もあった。
FROM TIME TO TIME/1。
唯一のアルバム。当時、覆面ユニットだったためか砂原のクレジットはないが PRODUCED BY JUN TANAKA,YOSHISUNA と表記されている。また、ライナーの内側に「TIME TO TIME WORKS」として作品一覧が記載されている。当時、FROM TIME TO TIMEは名義に通し番号をつけており、一覧の番号と照らし合わせることが出来た。例えば、 3.TRANSONIC(970-1450km/h) における名義は、FROM TIME TO TIME/3 となっていた。
THROUGH TRAFFICというレーベル?からリリースされており、そのコンタクト先は、当時テクノ雑誌「ele-king」を発行していたELE-MENTSが請け負っていた模様。
FROM TIME TO TIME/6
ゲームミュージック
劇伴
- テレビドラマの劇伴を担当。同番組のDVD・Blu-rayボックスには、オリジナルサウンドトラックCDが同梱されている。また、砂原は第6話にカメオ出演している。
使用機材
最初に購入したシンセサイザーはCASIOのCZ-5000で、理由はシーケンサー内蔵のシンセサイザーで一番安かったため。CASIOのRZ-1とカセットMTRを購入して高校2年生の時に楽曲制作を始める。
その後、 RolandのサンプラーS-330を購入するが、内蔵シーケンサーのシーケンスが止まってしまうためRolandのMC-50を購入し、80年代後半から電気グルーヴのDRAGONまでメインのシーケンサーとして使用。
DRAGON制作時にはシンセサイザーの物量が凄まじく増えており、「こんなにある意味が分からない」として反動から音源類をAKAIのサンプラーS3200、S3000XL、RolandのシンセサイザーJUNO-106などに絞り、1stソロアルバムの制作がきっかけとなりコンピューターベースのシーケンサーへと移行する。
最初のシーケンスソフトはOpcodeのVision。理由としてソフトに関する相談をしていたHiroshi Watanabeやテイ・トウワが使用していたことを挙げている。
1995年に1stソロアルバム『CROSSOVER』を制作してから電気グルーヴの活動に戻ると、同じタイミングでシーケンスソフトに移行していた石野卓球がCubaseを使用していたため、それに合わせる形でCubaseに移行し、『A(エース)』までを制作。
電気グルーヴを脱退した後、2000年頃にシーケンスソフトをLogicに移行して4thアルバム『LOVEBEAT』、5thアルバム『liminal』などを制作し2013年頃まで使用するが、反応の鈍さや音質のクセなど不満点が多かったためずっと他のソフトに移ろうと思っていたという。
その後agraphに勧められてStudio Oneに移行し、『ノーコン・キッド 〜ぼくらのゲーム史〜』の劇伴制作から使用し始める。Studio Oneを選んだ理由については「反応が早くてタイムラグが少なく、音質がフラットで信頼できる」としている。Studio One4へのバージョンアップ時には標準装備されているサンプラー『Sample One XT』について「これだけ単体で売っていても欲しいぐらいのもの」「このアップデートを見てこれよりすごいのは当分来なさそう」と評価している。
2009年時点でスタジオに常設してあるシンセサイザー類は KORG MS2000、TR-Rack、TRITON-Rack、Clavia Nord Lead3、Dave Smith Instruments Prophet'08、Roland JUNO-106、JV-1080、XV-3080、ARMEN 1200 Sound、AKAI S6000などで、他にもRoland VP-330、YAMAHA Reface CSなども所有しているが、2017年のインタビュー記事に掲載された写真ではラックに収められた機材類は激減している。2021年の『LOVEBEAT 2021 Optimized Re-Master』リリース時のインタビューによるとXV-3080、S3000XLなどはまだ所有しており、いくつかのトラックは当時の音色データを同じMIDIデータで鳴らして録音し直している。また『LOVEBEAT』はYAMAHA 02Rのディレイやフランジャーなどの内蔵エフェクトを使用してミックスを行っており、リマスターをするにあたってディレイはStudio One純正のAnalog DelayとBeat Delayで代用できたが、02Rを手放していたため独特のフランジャーが再現できず、同じくYAMAHA 01V96のフランジャーで代用している。
METAFIVEのステージにおいてはNektarのMIDIキーボードであるPanorama P4でAppleのソフトシンセサイザーMain Stageを鳴らし、KORG R3をサイドに設置していたが、2016年7月13日のリキッドルームでのライブからKORG Minilogueを使用。同年のWinter Liveのパンフレット内においてもお気に入りのシンセサイザーとしてMinilogueを挙げており、THE BEATNIKSのサポートでも使用している。2021年のMETAFIVE特別編成として出演したFUJI ROCK FESTIVALからPanorama P4に代わってPanorama T4を使用しており、2022年4月14日にリキッドルームにて行われたTESTSETのライブにおいても同様のセッティングとなっている。2023年6月28日にDOMMUNEで行われたCornelius『夢中夢 - Dream in Dream-』Release ProgramでのDJにおいてKORG Minilogue XDを使用しており、同年7月13日にリキッドルームにて行われたTESTSETのワンマンライブからPanorama T4とMinilogue XDのセッティングとなっている。シンセサイザー専門誌『FILTER』でのインタビューにおいて、「Minilogue XDの方が金属音系が得意」と述べている。
ソフトシンセサイザーに関してはUVIのものを使用する場合が多く、Fairlight CMIをソフト化したDarklightⅡxやFalcon、他にはreFX NEXUS2、Native Instruments Batteryなどを使用している。Studio Oneを起動させた際にはこれらのインストゥルメンツが立ち上がるようにソングテンプレートを組んでいる。
モニタースピーカーはFostex NF-01AとYAMAHA NS-10Mを使用。モニタースピーカーに求めるポイントとしては原音に忠実な正確性と再生のスピードを挙げており、「入力に対するレスポンスが大事」と述べている。
「楽曲製作において最も重要なのはビートメイクと音色」としており、サンプリングCDやレコードからサンプリングした音、アナログシンセで作った音など気に入った音色を自分のオリジナルサンプルのライブラリーに入れており、それを使用している。例を挙げると、コンプレッサーが強くかかったようなキック、高校生の時にテープに録音したRoland TR-606のスネアをサンプリングした音(『liminal』の2曲目『Physical Music』で聴ける)、Pollard Syndrumの音をサンプリングしたハイハット、JUNO-106で作成したフランジャーがかかったようなノイズ(METAFIVEの『Luv U Tokio』や『Disaster Baby』などで聴ける)、Urban Danceの『Wisper of my Love』からサンプリングした残響音の長いキック(『liminal』の6曲目『Beat It』で聴ける)、YMOの『Expected Way』のイントロをサンプリングしたノイズ((((さらうんど)))の『君はNew Age』など砂原によるアレンジやリミックスで聴ける)などである。
ライブではDAWで再生したトラックをオーディオインターフェースでパラアウトしてMackieのミキサーである1202 vlz3に送り、センドリターンにBOSS SE-70を繋いでリアルタイムでディレイやリバーブなどのエフェクトをかけている。これについては「全てをパソコン内で完結させてしまうとトラブルが起きた際に対応できないため」としている。
関連項目
出典
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