河豚板(ふぐいた、FuguIta)は、OpenBSDをベースに作成されたライブシステムである。
概要
河豚板という名称はOpenBSDのマスコットであるハリセンボン(河豚)とDVDなどのディスクメディアを表す「板」に由来する。
配布元からはLive DVD用のISOイメージとLive USB用のディスクイメージの2種類(ダウンロード時間を短縮するため、圧縮されている)が供給されている。
このファイルを伸長した後、メディアに書き込むことでLive DVDやLive USBが作成される。
また、このライブシステムに内蔵されたインストーラを使用し、新たにLive USBシステムを作成することもできる。
特徴
- オリジナルのOpenBSDに近い環境
- 河豚板にはOpenBSD由来のソフトウェア環境が全て収録されており、システムの設定や保守の方法はオリジナルのOpenBSDとほとんど同じである。よって、OpenBSD用に書かれたマニュアルやドキュメントはほぼそのまま利用することができる。
- カスタマイズ性
- パッケージシステムによるソフトウェアの追加、あるいは独自にソフトウェアの独自ビルドやインストールを行える。
- データの保存と復帰
- MFS上に作成されたファイルは独自の管理ツールを使用し記録用メディア(USBメモリなど)に保存し、次回起動時に復帰させることが可能。
- データは名称をつけて保存するようになっているので、一台のハードウェアで複数の環境設定を使い分けることもできる。
- 低スペック機への対応
- メモリリソースをなるべく使わないよう設計されているため、i386アーキテクチャ上で、X Window Systemを起動しない運用であれば、メモリ64MB程度からシステムを起動可能。
- Live USBメディアの管理機能
- 前述のUSBメモリ管理ツールは、USBメモリへのデータ保存を管理する他、インストーラの機能も併せ持つ。このインストーラによりUSBメモリ版の河豚板を作成することが可能。なお、USBメモリ版の河豚板を作成する際、データ保存領域を暗号化することもできる。
- 最新版への対応
- 可能な限り、OpenBSDの最新版に追従している。
- 半年に一回行われるOpenBSDのリリース以外にも、その間に発生するErrata (セキュリティ対応や機能向上のための修正)に対しても対応版を作成し、リリースを行っている。
想定している用途
- 移動作業環境
- 河豚板に用意されているアプリケーションを使用して、どのPC上からでも同一の環境で作業する。
- ハードウェア調査・トラブル対応
- 目的のハードウェアでOpenBSDが正常に動作するかどうかの検証
- 障害発生時の障害箇所切り分け
- 同梱されているネットワーク関連ツールを使用してのLANの監視など
- 臨時運用環境の構築
- ゲートウェイやサーバなどの臨時構築
- 特定のアプリケーションのみを起動させるキオスク端末的な運用
- 河豚板にはこのような用途のため人手による設定を介さず再起動を行う機能を持ち、リモートからのメンテナンスを支援する。
- 教育用途・OpenBSDの紹介
- Unix環境でのオペレーションやシステム管理方法の修得
- プログラミング学習
- OpenBSDやその上で開発された関連プロジェクト(PF、OpenNTPD、OpenBGPD、OpenSMTPDなど)の紹介・デモなど
実装上の特徴
河豚板は、機能別に見ると、以下のように記憶デバイスを使用している;
- 起動デバイス
- ブートローダとカーネルが格納されているデバイス。システム起動の初期の段階でのみ使用される。
- 運用デバイス
- システムのファイルツリー全体が格納されているデバイス。コマンドやアプリケーションはこのデバイスから読み出され、実行される。この運用デバイスは読み出し専用でマウントされる。
- MFS
- ファイルの読み出し・書き込みに使用されるファイルシステムで、システム起動時に自動的に作成されマウントされる。システムの設定ファイル、ユーザの作成したデータ、運用ログなどはこのファイルシステム上に置かれる。
- データ保存デバイス
- MFSはメモリ上に作成されるため、システムを停止するとそれらの上に作成されたデータは消えてしまう。それらのデータは専用のツールを用いてセーブできるが、その時にデータ保存デバイスがマウントされ保存データの書き込みが行われる。
河豚板の特徴として、これらのデバイスは動作上独立しており機能毎に別のデバイスを指定できるという点がある。
例えばDVD-Rを起動デバイスとし、河豚板のインストールされたUSBメモリを運用デバイスとして指定すると、
USBメモリブートの不可能なPCであってもLive USBシステムとして運用できる。
また、起動時に運用デバイスの内容をすべてMFSにコピーした後にそのMFSのみを使用して動作するモードがある。
この機能を使用すると、システム起動完了後に運用デバイスを取り去ることができ、完全にディスクレスな状態での運用が可能となる。
その他、以下のような実装上の特徴がある;
- UnionFSの機能代替
- OpenBSDはUnionFSを持たないため、システムをカスタマイズできるようにするには別の方法で対応を行わなければならない。河豚板ではMFS上にシステムのディレクトリ構造をコピーし、そのディレクトリ内に運用デバイス上の対応するファイルへのシンボリックリンクを作成することでMFSの使用量を低く保ったまま疑似的に読み書き可能な状態を作り出している。
関連項目
脚注
外部リンク
公式サイト
関連情報