推力重量比
推力重量比(すいりょくじゅうりょうひ)とは、瞬間推力の(地球の表面での)重量(=重力)に対する比率である。推重比(すいじゅうひ)ともいう。ロケットエンジンやジェットエンジンや、それらのエンジンで推進する乗り物(ペイロードを含めた打ち上げ機全体やジェット機)などの特性を示す無次元のパラメータである。エンジンや乗り物の設計において、定量比較するための性能指数として使われる。
エンジン単体の推力重量比の方が、打ち上げ機全体での推力重量比よりも大きい。あるエンジンと付属構造物と最小限の推進剤からなる機体が理論的に達成しうる最大の加速度を、そのエンジン単体の推力重量比から求めることができる。
翼を使わない純粋な推力だけでの離昇では、その機体の推力重量比は1以上でなければならない(地上からの打ち上げの場合。月面からでは0.1654以上である)。一般に、推力重量比は機体が発生できる加速度 (G) と等しく、加速度がその場所の重力を上回っていれば、そこから垂直に離昇することができる。
推力重量比はさまざまな要因に影響され、一般的には飛行中にもわずかに変化する。確かな比較を行なうには、管理された状態で推力を測定しなければならない。推力に影響を及ぼす主な要因には、自由流の気温、圧力、密度、組成などがある。エンジンや機体にもよるが、実際の性能は、燃料消費の進行(推力重量比が大きくなる)や浮力やそこでの重力の強さに影響されることが多い。
例
ロッキード・マーティンのアトラスVロケットで使われているロシア製のRD-180ロケットエンジンは、海面での推力が3,820kNで乾燥重量が5,307kgである。重力加速度を9.80665m/s²とすると、海面での推力重量比は次のように求めることができる(1kN = 1000N = 1000kg•m/s²)。
航空機の場合
- 燃料密度の計算: 0.803 kg/l
- 内部のブラケット数はエンジンの数
- メートル法の表では推力重量比は推力で燃料満載時の機体重量と重力加速度を割った
- F-15Kのエンジンはプラット & ホイットニー製
- MiG-29Kの空虚重量は推定
- JF-17のエンジンはRD-93に準拠
- JF-17はWS-13を搭載するなら推力は18,969 lb で推力重量比は 0.97
- J-10の空虚重量と燃料満載時の重量は推定
- J-10のエンジンは AL-31FNに準拠
- J-10はWS-10Aを搭載するなら推力は132 kN (29,674 lbf)で推力重量比は1.03
なお、エンジンのダクトが上にある航空機は推力重量比が最大離陸重量での離陸時に大きくなる。ロケットの場合はそのようなことはない。
表 b: 推力重量比、燃料重量と異なる戦闘機の重量 (メートル単位)
国際的な表記
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F-15K
|
F-15C
|
MiG-29K
|
MiG-29B
|
JF-17
|
J-10
|
F-35A
|
F-35B
|
F-35C
|
F-22
|
エンジンの最大推力 (N)
|
259,420 (2)
|
208,622 (2)
|
176,514 (2)
|
162,805 (2)
|
81,402 (1)
|
122,580 (1)
|
177,484 (1)
|
177,484 (1)
|
177,484 (1)
|
311,376 (2)
|
機体空虚重量 (kg)
|
17,010
|
14,379
|
12,723
|
10,900
|
06,586
|
09,250
|
13,290
|
14,515
|
15,785
|
19,673
|
機体重量燃料満載時 (kg)
|
23,143
|
20,671
|
17,963
|
14,405
|
08,886
|
13,044
|
21,672
|
20,867
|
24,403
|
27,836
|
機体重量、最大積載離陸時(kg)
|
36,741
|
30,845
|
22,400
|
18,500
|
12,700
|
19,277
|
31,752
|
27,216
|
31,752
|
37,869
|
燃料総重量 (kg)
|
06,133
|
06,292
|
05,240
|
03,505
|
02,300
|
03,794
|
08,382
|
06,352
|
08,618
|
08,163
|
推力重量比 (燃料満載時)
|
1.14
|
1.03
|
1.00
|
1.15
|
0.93
|
0.96
|
0.84
|
0.87
|
0.74
|
1.14
|
表 a: 推力重量比、燃料重量と異なる戦闘機の重量
仕様諸元 / 戦闘機
|
F-15K
|
F-15C
|
MiG-29K
|
MiG-29B
|
JF-17
|
J-10
|
F-35A
|
F-35B
|
F-35C
|
F-22
|
エンジンの最大推力 (lbf)
|
58,320 (2)
|
46,900 (2)
|
39,682 (2)
|
36,600 (2)
|
18,300 (1)
|
27,557 (1)
|
39,900 (1)
|
39,900 (1)
|
39,900 (1)
|
70,000 (2)
|
機体空虚重量 (lb)
|
37,500
|
31,700
|
28,050
|
24,030
|
14,520
|
20,394
|
29,300
|
32,000
|
34,800[3]
|
43,340
|
機体重量、燃料満載時 (lb)
|
51,023
|
45,574
|
39,602
|
31,757
|
19,650
|
28,760
|
47,780
|
46,003
|
53,800
|
61,340
|
機体重量最大積載離陸時 (lb)
|
81,000
|
68,000
|
49,383
|
40,785
|
28,000
|
42,500
|
70,000
|
60,000
|
70,000
|
83,500
|
燃料総重量 (lb)
|
13,523
|
13,874
|
11,552
|
07,727
|
05,130
|
08,366
|
18,480
|
14,003
|
19,000[3]
|
18,000
|
推力重量比 (燃料満載時)
|
1.14
|
1.03
|
1.00
|
1.15
|
0.93
|
0.96
|
0.84
|
0.87
|
0.74
|
1.14
|
エンジンの場合
特記しない限り、ロケットの推力は真空時の推力である。上記の式に従い、重力加速度を9.807とする。
脚注
- ^ F-15 Eagle Aircraf
- ^ Thrust: 6.781 million lbf, Weight: 4.5 million lb [1]
- ^ a b “Lockheed Martin Website”. 2008年4月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年2月10日閲覧。
- ^ Wade, Mark. “RD-0410”. Encyclopedia Astronautica. 2009年4月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年9月25日閲覧。
- ^ “«Konstruktorskoe Buro Khimavtomatiky» - Scientific-Research Complex / RD0410. Nuclear Rocket Engine. Advanced launch vehicles”. KBKhA - キマフトマティキ. 2009年9月25日閲覧。
- ^ “Factsheets : Pratt & Whitney J58 Turbojet”. National Museum of the United States Air Force. 2010年4月15日閲覧。
- ^ “ROLLS-ROYCE SNECMA OLYMPUS - Jane's Transport News”. 2009年9月25日閲覧。 “With afterburner, reverser and nozzle ... 3,175 kg ... Afterburner ... 169.2 kN”
- ^ “«Konstruktorskoe Buro Khimavtomatiky» - Scientific-Research Complex / RD0750.”. KBKhA - キマフトマティキ. 2009年9月25日閲覧。
- ^ Wade, Mark. “RD-0146”. Encyclopedia Astronautica. 2007年8月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年9月25日閲覧。
- ^ “RD-180”. 2009年9月25日閲覧。
- ^ “アーカイブされたコピー”. 2013年11月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年11月2日閲覧。
- ^ Astronautix NK-33 entry
関連項目
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