四酸化キセノン (しさんかキセノン、英 : xenon tetroxide )は、化学式 が XeO4 と表されるキセノン の酸化物 である。ある報告では、−35.9 °C より低温では黄色の固体として安定に存在する。それ以上の温度では四酸化キセノンは不安定で、爆発して酸素 とキセノンの気体に分解した[ 2] [ 3] 。SO2 ClF などの溶液中では -30 °C まで安定であったことが Xe NMR の結果とともに報告されている[ 4] 。キセノンの8個の価電子 がすべて酸素との結合に使われていることが不安定さの原因である。赤外分光法 により、四酸化キセノンは四面体形 構造と報告されている。
四酸化キセノンではキセノンの酸化数 は+8、酸素は-2となっている。酸素は、キセノンの酸化数を最高値の+8へ上げられる唯一の元素である。立体障害 のため、フッ素 だけでは六フッ化キセノン の+6までにしかキセノンの酸化数をとらせられない。
キセノンの酸化物には他に二酸化キセノン や三酸化キセノン が知られている。XeOO+ イオンは、固体のアルゴン 中で赤外分光法 により確認されている[ 5] 。
反応
四酸化キセノンは-35.9 °C より高い温度で下式のように爆発し、そのときの反応エンタルピー変化は-643 kJ/molである。
XeO
4
⟶ ⟶ -->
Xe
+
2
O
2
{\displaystyle {\ce {XeO4 -> Xe\ + 2 O2}}}
(
Δ Δ -->
r
H
=
− − -->
643
k
J
/
m
o
l
)
{\displaystyle \quad (\Delta _{\mathrm {r} }H=-643\mathrm {kJ/mol} )}
四酸化キセノンと六フッ化キセノンの反応で、キセノンの酸化数が+8のXeO3 F2 と XeO2 F4 が発生することが、質量分析法 により観測されている。前者はアルゴンマトリクスを用いた赤外分光法で観測されている[ 6] 。
合成
四酸化キセノンは、過キセノン酸 イオンから合成することができる。過キセノン酸イオンを合成するには2つの方法がある。
2
XeO
4
2
− − -->
⟶ ⟶ -->
XeO
6
4
− − -->
+
Xe
+
O
2
{\displaystyle {\ce {2XeO4^2- -> XeO6^4- + Xe + O2}}}
2
XeO
4
2
− − -->
+
4
e
− − -->
+
2
O
3
⟶ ⟶ -->
2
XeO
6
4
− − -->
+
2
O
2
{\displaystyle {\ce {2XeO4^2- + 4e^- + 2O3 -> 2XeO6^4- + 2O2}}}
Na
4
XeO
6
+
2
H
2
SO
4
⟶ ⟶ -->
2
Na
2
SO
4
+
(
H
4
XeO
6
⟶ ⟶ -->
2
H
2
O
+
XeO
4
)
{\displaystyle {\ce {Na4XeO6 + 2H2SO4 -> 2Na2SO4 + (H4XeO6 -> 2H2O + XeO4)}}}
脚注
^ G. Gundersen, K. Hedberg, J. L.Huston (1970). “Molecular Structure of Xenon Tetroxide, XeO4 ”. J. Chem. Phys. 52 : 812–815. doi :10.1063/1.1673060 .
^ H.Selig , J. G. Malm , H. H. Claassen , C. L. Chernick , J. L. Huston (1964). “Xenon tetroxide -Preparation + Some Properties” . Science 143 : 1322. doi :10.1126/science.143.3612.1322 . PMID 17799234 . http://links.jstor.org/sici?sici=0036-8075%2819640320%293%3A143%3A3612%3C1322%3AXTPASP%3E2.0.CO%3B2-C .
^ J. L. Huston, M. H. Studier, E.N. Sloth (1964). “Xenon tetroxide - Mass Spectrum” . Science 143 : 1162. doi :10.1126/science.143.3611.1161-a . PMID 17833897 . http://links.jstor.org/sici?sici=0036-8075%2819640313%293%3A143%3A3611%3C1161%3AXTMS%3E2.0.CO%3B2-L .
^ a b Gerken, M.; Schrobilgen, G. J. Inorg. Chem. 2002 , 41 , 198-204. DOI: 10.1021/ic010627y
^ M. Zhou, Y. Zhao, Y. Gong, J. Li (2006). “Formation and Characterization of the XeOO+ Cation in Solid Argon”. J. Am. Chem. Soc. 128 : 2504–2505. doi :10.1021/ja055650n .
^ Claassen, H. H.; Huston, J. L. J. Chem. Phys. 1971 , 55 , 1505-1507. doi :10.1063/1.1676271 10.1063/1.1676271
Xe(0) Xe(II) Xe(IV) Xe(VI) Xe(VIII)