反復法(はんぷくほう、英: iterative method)とは、数値解析分野における手法のうち、反復計算を用いるものの総称。これに対し、有限回の手順で解を得る数値解法は直接法(英: direct method)と呼ばれる[1][2][3]。反復法では、適当な初期点から出発して反復式 によって点列を生成し最終的に最適解に収束させようとする[1][2][3]。アルゴリズムが単純であるために古くから用いられ、これまで様々な関数族が提案されてきた。
アルゴリズム
与えられた関数f についてf (x) = 0 を満たす値x を得ることを目的とする。反復法の一般的なアルゴリズムは以下のようになる:
- 初期値x0 ∈ Rn を定める。i = 0 とおく。
- 漸化式
- によりxi + 1 を求める。ここでg はf より決まる関数である。
- 適当な判断基準
- が成り立てば(このことを収束と表現する)停止し、xi を解とする。そうでなければi → i + 1 とし、ステップ2へ戻る。通常、判断基準には
- などが採られる。
例
関数g の取り方によって種々の方法がある。
ニュートン法
関数f が適当に滑らかな関数ならば、f の零点を求めるための関数g を
ととれば、これはニュートン法となる[2]。これは収束する場合は2次収束 (英: Quadratic convergence) となる[2]。すなわち、根を、とし、
ハレー法
ハレー法(英語版)では
ととる。これは収束する場合は3次の収束となる。すなわち、
その他
不動点反復法
上記アルゴリズムでは、i +1 回目の近似解 xi+1 は直前の近似解 xi のみの関数であるが、これを一般化した不動点反復法[2][6]または l 点反復法は
という形で表される。ニュートン法は l = 1、割線法は l = 2 の場合である。反復関数 g は f (α) = 0 を満たす真の解 α に対し
を満たす。このことから α は g の不動点 (英: Fixed point) と呼ばれる[2][5]。
l = 1 の場合、この反復法の収束性についての十分条件として、次の不動点定理が成り立つ:不動点反復法
は、反復関数 g が以下の条件を満たすとき唯一の不動点 α に収束する。
- g(x) は区間 I = [a, b] で連続。
- すべての x ∈ I に対して g(x) ∈ I。
- すべての x, y ∈ I, x ≠ y に対して
- を満たす、x, y に無関係な定数 L (0 ≦ L < 1) が存在する。
不動点定理の条件が成り立つならば、適当な初期値 x0 ∈ I を選んで反復計算を行うと、xi は区間 I 内に唯一つ存在する不動点 α に収束することが示せる[2][5]。
脚注
出典
参考文献
和文
英文
数値線形代数
- Saad, Y. (2003). Iterative methods for sparse linear systems. SIAM.
- Hageman, L. A., & Young, D. M. (2012). Applied iterative methods. Courier Corporation.
- Traub, J. F. (1982). Iterative methods for the solution of equations. American Mathematical Society.
- Greenbaum, A. (1997). Iterative methods for solving linear systems. SIAM.
求根アルゴリズム
- Kelley, C. T. (1995). Iterative methods for linear and nonlinear equations. SIAM.
- Ortega, J. M., & Rheinboldt, W. C. (1970). Iterative solution of nonlinear equations in several variables. SIAM.
最適化問題
- Kelley, C. T. (1999). Iterative methods for optimization. SIAM.
- Samuel, J. L. S., & Pizzo, K. J. T. (1972). Iterative methods for nonlinear optimization problems. Prentice-Hall, Englewood Cliffs.