伯桜鵬 哲也(はくおうほう てつや、2003年8月22日 - )は、鳥取県倉吉市出身で、伊勢ヶ濱部屋(入門時は宮城野部屋)所属の現役大相撲力士。本名落合 哲也(おちあい てつや)。身長181cm、体重160kg。血液型はO型。最高位は西前頭9枚目(2023年9月場所)。アマチュア時代の華々しい経歴や史上初の幕下付出から所要1場所で十両昇進を果たしたことから、メディアでは「令和の怪物」[4][5]と称される。
53代横綱・琴櫻と同じ倉吉市立成徳小学校出身[6][7]。大相撲入門後に落合本人は「第53代横綱、琴桜関は自分の小学校のスターです。学校の前に銅像があるんです。ぼくは血がつながってないけど、近い存在にいたような感覚があって」と思いを語っている[8]。後述にもあるように幼少期はサッカー少年だったが[9]小学校4年生のときに本格的に相撲を始めた[10]。
鳥取市立西中学校を経て[6]鳥取城北高校に入学し、2年次、3年次の高校総体では高校横綱のタイトルを獲得した[10]。3年次には全日本選手権でベスト8に入り三段目付出資格を得た[11]。
高校卒業後、すぐにはプロ入りせずに右肩の手術を受け、相撲浪人してけがを治すことに専念した[12]。その後、父親の会社である「有限会社野田組」に所属して、全日本実業団相撲選手権大会で優勝し、実業団横綱を獲得[13]。
13代宮城野(元横綱・白鵬)の誘いで大相撲の宮城野部屋に入門した[14]。
2022年度の実業団横綱であるため、2022年12月1日の日本相撲協会理事会で幕下15枚目格付出での入門が承認された[15]。これに伴い、すでにエントリーされていた同4日の第71回全日本選手権は欠場した[16]。
初土俵の場所となる2023年1月場所は、2日目(1番相撲)に関取経験者の王輝が休場し不戦勝での白星デビューとなった[17]。7日目(4番相撲)は大成龍に勝利し4連勝で勝ち越しを決めた[18]。13日目(7番相撲)は風賢央に勝利し、幕下15枚目格付け出し力士としては下田以来となる史上2人目の7戦全勝優勝を決め[19]、場所後の新十両昇進がほぼ確実となった[20]。
1月25日に開かれた番付編成会議で、落合の3月場所の新十両昇進が正式に発表された。過去幕下15枚目格付出制度が出来て以来6力士が2場所で十両昇進していたが、落合はそれらを上回る史上最速昇進記録となった[21]。
3月場所は7日目終了時点で6勝1敗であったが、7日目の取組後に土俵下で左肘を抑える仕草を見せるなど異変を感じさせた[22]。それでもこの場所は10勝5敗の成績を残し、千秋楽の朝乃山戦後には「全てが勉強になりました」と新十両場所の感想を述べた[23]。
2023年5月場所は場所前に左肩を痛め、手術も検討されたが、最終的には大きなテーピングを施した上で出場を選択[24]。西十両8枚目で雅山以来2人目となる新十両から2場所連続での二桁勝利を記録した[25]。12日目に11勝目を挙げた際はこの場所の星取次第で遠藤以来、昭和以降2例目となる初土俵から所要3場所での新入幕が見える状況となった[26]。この場所は14勝1敗同士で豪ノ山と優勝決定戦を演じる極めて高レベルな優勝争いとなり、十両での14勝1敗同士での優勝決定戦は史上初のこととなったが、敗れて十両優勝を逃した。しかしこの好成績により、続く7月場所での新入幕が決定的となった[27]。
同年5月28日に行われた宮城野部屋の千秋楽パーティーで7月場所から四股名を地元・鳥取の旧国名でもある伯耆国の「伯」、倉吉市出身の元横綱・琴櫻をたたえた相撲大会で小学生の頃に参加し相撲を始めたきっかけとなった「桜ずもう」の「桜」、師匠の現役時代の四股名の「鵬」を入れた「伯桜鵬(はくおうほう)」に改名することが発表された[28]。
7月場所では、11日目に勝ち越しを決めるなど好調を示した。勝ち越しを決めた11日目の髙安戦の際には「師匠と対戦された方と相撲がとれるのは、感慨深くてうれしいですが恐怖もあります。プロの伯桜鵬として戦いきりたいと思います。」とコメントしていた[29]。この場所は14日目終了時点で3敗の豊昇龍、北勝富士と共に優勝争いの首位を並走していたが、千秋楽には豊昇龍に敗れて4敗となり、109年ぶりの新入幕優勝は逃した。優勝こそ逃したが、場所での活躍と左四つの相撲が評価され、敢闘賞と技能賞をダブル受賞。初土俵から所要4場所での三賞獲得は史上最速となった[30]。
9月場所は8枚上昇の西前頭9枚目まで最高位を更新。ところが7月場所後は左肩関節亜脱臼の為に夏巡業を全休し、9月場所出場が危ぶまれることとなった。伯桜鵬によれば両肩の関節が小さく宮城野部屋への入門前に右肩の手術を受けていたという。こうしたこともあり8月31日に左肩の古傷の手術を受け、9月4日の宮城野部屋での稽古の後、師匠の宮城野と揃って記者団に対応して「9月場所については全休します」と発言した。この手術及びリハビリテーションにより年内の土俵復帰は難しい状況となった。伯桜鵬自身は「番付が落ちても構わない。しっかりと(傷を)治して横綱という目標に向かってまた上がりたい」と語った[31]。そして伯桜鵬は9月場所前に日本相撲協会に対して休場を届け出た際に「左肩関節脱臼術後により復帰まで3ヶ月以上を要する見込み」などとする診断書を提出、師匠の宮城野はこうした状況を受けて「まだ若いので完治を優先させたい」とするコメントを発し、伯桜鵬について2024年1月場所以降で土俵復帰を目指して故障箇所の治療に専念させる方針を示した[32]。本人が相撲教習所を卒業した際の話によると、中学1年生の頃から左肩が悪く、7月場所中も3回程度肩が外れることがあったが、注目されていた新入幕場所で休場してすぐにファンから存在を忘れ去られることが怖くて休場に踏み切るのが遅れたという[33]。宮城野の発言通り、西十両6枚目に番付を落とした11月場所も全休し、令和6年1月場所の幕下陥落が不可避となる。2024年1月場所番付発表により西幕下5枚目に名前が載り、正式に幕下に陥落した。宮城野親方は「医師は『良くなった』と言っている。(初場所は)間に合うでしょう」と語りつつも「焦っても仕方ない。しっかり治す。(番付が)どこまで落ちてもいいと思っている。幕内にいることが目標ではない。今は半年後の姿が見えている。今よりも強くなって帰ってくる」と1月場所の出場には慎重を期す立場を示した[34]。2024年1月4日から相撲を取る実戦的な稽古を再開した。部屋の若い衆との28番の精力的な稽古で復調を示した[35]。熟慮の末、場所直前の12日に出場を決定[36]。1月場所は6勝1敗で終えた[37]。場所を総括して「相撲内容は0点」と厳しい自己評価で「7戦全勝優勝が目標だったので、ダメでしたね」と続けた[38]。3月場所から初めて髷を結って土俵に上がることとなった。部屋の師匠問題に揺れる中での本場所となったが「僕はやることをやるだけですから。頑張ります」とコメント[39]。師匠代行の玉垣(元小結・智ノ花)によると、29日は部屋の大阪場所稽古場で40番から50番相撲を取ったとのことで、順調な仕上がりが報じられた[40]。
2024年3月28日、日本相撲協会の理事会で宮城野部屋は同年4月以降無期限で伊勢ヶ濱一門預かりとなり、宮城野部屋に所属する全員が同一門の伊勢ヶ濱部屋に転籍することを決定した[41]。西十両8枚目の地位で迎えた同年5月場所は中日から新型コロナ感染により休場したが、そこまで3勝である千秋楽まで休場すると幕下陥落が確定的となる状況であったため、13日目から再出場。千秋楽に勝って5勝6敗4休とし、十両残留を決定的とした。
基本的に組んで良し、離れて良しのオールラウンダーだが、どちらかというと四つ相撲の方を好む。新入幕時点では「相撲技術に関してはベテラン並み」との声もある一方、「並以下」と酷評される立合いの威力などのパワー不足が課題で、立合いに失敗すると一気に後退してしまう傾向がある。この辺は同時新入幕で立合いの当たりが強力なパワー型として認知されている豪ノ山と対照的である[42]。
15代武蔵川は(元横綱・武蔵丸)は2023年5月場所後に「19歳と若い割には、『受けてからなんとかしよう』『まわしを取ってからどうにかしよう』という守りの相撲なんだ」と注文を付けていた[43]。
左肩は中学生の頃からの古傷であり、2023年7月場所前には「もともと、中学校の時から悪かったので。悪化させないようにして、相撲を取れる状態でいることが一番」と古傷を気にする発言を行っていた[44]。
2023年7月場所12日目の阿炎戦では3度の立合い不成立により、阿炎と共に打ち出し後に審判部から注意を受けた[45]。初土俵から4場所目で立合いを巡って審判部から注意を受けるのは極めて異例で、その新弟子離れした老獪さから浅香山親方は「こんなに怒られるヤツは少ないと思う。待ったをしないで当たって堂々と勝負をして、それでも勝てると思う」と期待を込めつつ改心を願った[46]。その後も立合いの合わなさは変わらず、2024年3月場所には初日、2日目と異例となる2日連続での審判部からの注意を受けている[47]。
兄弟子で鳥取城北高の先輩でもある23代間垣(元幕内・石浦)は、高校生の頃から高校生離れした修正能力を持っており、今(2023年7月場所時点)の大相撲でも屈指だと思うと発言している。また、2023年7月場所14日目には、優勝争い単独トップの北勝富士戦の前でも平然としているなどメンタル面の強さを見せつけた[48]。
2023年7月場所中時点の伯桜鵬を13代二所ノ関(元横綱・稀勢の里)は「現状は、通信簿でいえば5段階評価で『オール4』といったところでしょうか。そこからトップレベルの『5』になるもの、出足とかさばきの良さなど何か飛び抜けたものを習得すると、上位を脅かす存在になるでしょう」と評価した[49]。
2024年11月場所終了現在
伊勢ヶ濱
陸奥北海
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