不法滞在
不法滞在(ふほうたいざい)とは、自らが国籍を有する以外の国に在留許可がない状態で滞在していることを指す。在留許可がそもそもない不法入国と在留許可期間超過による不法滞留がある[1][2][3][4][5]。 概要俯瞰的な観点からみると、世界各国の途上国から先進国への不法入国及び不法滞在が散見され、近年は不法移民の流入によって先進国の社会不安が増大したことから、特に不法移民取締の要請が社会的に強まりつつある。ヨーロッパのように、不法入国者による犯罪、それに伴う移民反対世論に則して、移民全体に厳しい措置や法改正の傾向にある。[要出典] 国難民法を立法化している国では、政治難民は不法滞在にならない。ただし不法滞在の外国人が捕まると、退去強制を逃れる手段として虚偽の難民申請をする場合が多く、難民に対する法的扱いに寛容なヨーロッパを筆頭に、不法滞在で逮捕される者の多くが、引き伸ばしの手段として難民申請を行う。不法入国者の大多数が難民認定を申請し、滞在し続けているという現状があるため、難民申請者は不法移民であるとの考えが先進国で定着してしまった。一方で悪質犯罪や反社会的行為に走るような移民を選別しようとする国も存在する。[要出典]自国民より難民を優遇していると考える国民が増えたことで、難民拒否を訴える政党が議席を増加傾向にある[6][7][8][9]。 移民法可決から長きにわたり、移民受け入れに寛容とされてきたカナダも法改正を行った。移民の流入先は都市部に偏っており、移民は税収増につながらないばかりか、難民制度を悪用した不正移民及び社会不安により、移民や難民受け入れに消極的になっている[10]。 種類不法滞在は滞在許可期間超過による不法残留とそもそも入国許可を受けていない不法入国(密入国)に大別される。EU諸国はシェンゲン協定によって、EU加盟国民のみ加盟国間を自由に往来できる制度がある。その他の国では当該国籍を持たない人(外国人)が合法的に滞在するためには、日本では一部の例外を除き、出入国管理及び難民認定法(入管法)に定める在留資格のいずれかを持たなければならないこととなっている。したがって、日本における不法滞在者とは在留資格(厳密には「在留の資格」)を持たない外国人を指すと言ってもよい。[要出典]
日本の状況日本では不法滞在者が1993年(平成5年)の約30万人をピークに年々減少し、2014年(平成26年)年初には59,061人に激減した。新しい入国審査制度やオンライン情報受付などによる[12]出入国管理及び難民認定法第62条や第66条に規定される報償金に対する認知向上などが効果を上げたと見られた。しかし、2015年(平成27年)~2020年(令和2年)不法滞在の間は増加し、2020年年初は82,892人となった。そして、2019年コロナウイルス感染症流行対策による入国制限により[13]、2021年・2022年は減少して2022年7月時点で58,241人と1989年(平成元年)以降最少を記録した[14]。その後、2022年10月11日に制限緩和されたことにより再び増加し、2024年1月時点で79,113人である[15]。 2015年~2020年の間に増加した原因として、 下記の日本における不法残留者数にあるタイ・フィリピン・ベトナム・マレーシアは2013年7月1日に緩和措置(タイ・マレーシアは査証免除)がなされており、2014年にもフィリピン・ベトナムで2回、2015年は中国で1回、2016年はベトナムで1回、2017年は中国で1回、2018年はフィリピンで1回、2019年で中国で1回が、2024年6月1日時点で確認できた緩和措置である[17]。 2024年1月のベトナム人不法残留者の場合、15,806人の内7,329人(ベトナム人不法残留者全体の約46.4%)が技能実習(その内、受入れ方式が団体監理型である1号ロ[入国1年目]が3,882人、2号ロ[入国2・3年目]が3,437人)で、次いで短期滞在が4,172人(ベトナム人不法残留者全体の約26.4%)であった。 在留資格別でみた場合、技能実習では、ベトナムだけで不法残留技能実習生全体の約65.4%(1号ロは約64.1%、2号ロは約66.6%)で占めており、中国を加えた場合、約81.9%(1号ロは約79.6%、2号ロは約84.4%)となる。留学の場合はベトナムだけで不法残留留学生全体の約37.8%を占めており、中国が加わった場合、約72.8%となる[15]。 また、新型コロナウイルス感染症流行前の2019年の新規入国の技能実習生(技能実習1号ロ)は、167,405人であり、2015年の90,307人と比べ、約1.85倍増加していたが、前述のコロナウイルス感染症2019流行対策による入国制限により、2021年は21,899人と流行前の約8分の1となっている。国籍別では、ベトナム16,392人(技能実習生[技能実習1号ロ]全体に占める割合:約74.9%)、中国3,420人(技能実習生[技能実習1号ロ]全体に占める割合:約15.6%)、ミャンマーは821人(技能実習生[技能実習1号ロ]全体に占める割合:約3.7 %)、フィリピンは494人(技能実習生[技能実習1号ロ]全体に占める割合:約2.3%)であり、ベトナムと中国で約9割を占め、ミャンマーとインドネシアを加えると全体の約96.5%を占める[19][20]。 かつては中国からの入国者だけで7割以上を占めたが、近年は中国国内の賃金上昇(製造業一般工の場合 上海:249ドル[2008年]→832ドル[2023年] 深圳:204ドル[2008年]→415ドル[2023年][21][22])により、2019年コロナウイルス感染症流行前の傾向であるが、技能実習生としての来日希望者が46,636人(2012年)から33,093人(2019年)と約3割減少した。一方でベトナムからの入国者が6,768人(2012年)から90,150人(2019年)と約13.3倍になっており、急増している[19][20]。 失踪者は、2022年は9,006人であり、2013年の3,566人と比べて2.5倍と急増している。国別の内訳で見た場合、その多くを占めるのがベトナム(6,016人)であり、失踪者全体の約66.8%を占める。2015年までは中国の方が多かったが、ベトナム人技能実習者の失踪者数の増加(496人[2012年]→6,016人[2022年])と中国人技能実習者の失踪者数が2015年のピークを境に減少(1,177人[2012年]→3,116人[2015年]→922人[2022年] )したことにより、2016年以降はベトナムが最多となった[25][26]。更に、2015年~2018年の間に、技能実習生全体の約2%前後が毎年失踪している[27]。 野党7党派は2018年12月3日、失踪した技能実習生に対して法務省が2017年に実施した聞き取り調査の「聴取票」を独自に分析した結果を公表した所、全体の約67%にあたる1,939人が最低賃金(時給714円=2016年の沖縄県、宮崎県)未満で、約10%にあたる292人が月の残業時間が「過労死ライン」とされる80時間を超えていたとしている。聴取票は、失踪後に入管法違反などで摘発された実習生から入国警備官が聞き取って記入するもの。国籍・性別、失踪動機、月給、労働時間などを尋ねる項目がある。法務省は昨年、2,870人を対象に実施。失踪動機(複数回答)の最多は「低賃金」の1,929人(67.2%)で、このうち144人(5.0%)が「契約賃金以下」、22人(0.8%)は「最低賃金以下」だった。月給は「10万円以下」1,627人(56.7%)、「10万円超~15万円以下」1,037人(36.1%)などとなった。 調査対象者は2,870人だったが、聴取票は22人分の重複があり、法務省は2,892人分として開示。野党が開示データをもとに算定したところ、月給は平均10万8,000円、光熱費などの名目による控除額は平均3万2,000円だった[28]。 また、2019年3月29日、法務省の発表より、2017年1月~18年9月に不法残留等により入国警備官の聴取を受けて聴取票が作成された失踪技能実習生5,218人のうち少なくとも759人(延べ937人)に、最低賃金法違反など実習先による不正行為の疑いがあった。その内訳は、
となっている。更に、2012年~2017年(6年分)の技能実習生の死亡事案171件の内、監理団体等の報告漏れ、入管局の記載漏れ等の43件あり、入管当局における死亡事案の把握が不十分であることが露見された。[27] 上記の理由による背景があると考えられる。
日本における不法残留者数1995年(平成7年)~2019年(平成31年)1月までは韓国人の不法滞在者数が1位となっていたが、2019年(令和元年)7月~2021年(令和3年)1月はベトナム人が1位となった。その後、2021年(令和3年)下半期~2022年(令和4年)の間は、2019年コロナウイルス感染症流行対策による入国制限による大幅な外国人の流入減少により、再び韓国人が1位となった。その後、2022年10月11日に制限緩和されたことにより再び増加し、2023年に再びベトナムが1位となっている。また、タイと韓国、フィリピン、マレーシアでは女性の方が男性よりも多い。
入国者収容所等に収容されている不法滞在者の状況査証の有効期限を過ぎても日本にとどまるなどして不法滞在となり、入国者収容所等に6カ月以上長期収容されている外国人が増えている。長期化している主な理由として
2016年末に収容されていた1,133人中、6カ月以上の「長期収容者」は313人(約28%)だったが、2017年末は1,351人中576人(約43%)と人数、割合がともに増加した。2018年に入ってからも急増し、7月末時点で1,309人中709人(約54%)だった。収容が5年を超える人もいる。[31] 医療面に関しては、全国にある17の入管施設で常勤医がいるのは東日本入国管理センターのみである。しかし、常勤医は日勤で、医師のいない夜間は朝まで待つか、職員の判断で救急搬送するしかない。いずれも、近隣の民間医療機関などの医師が輪番で勤務しているが、入管当局の幹部は「土日や夜間でも相談できる常勤医師がいないと困る。救急の場合など、外部医療機関への搬送が増える」とこぼす。外部へ搬送するには、逃走防止のため職員数人が交代制で付き添わなければならない上、健康保険が適用されず高額の医療費がかかってしまう。そのため、隣接の医師会へ呼びかけるなどして常勤医の募集をしているが、一向に集まらない。背景には、民間医療機関の医師と比較した給料の低さや最先端の医療から取り残される不安があるためである。[32][33] また、少なくとも東日本入国管理センターでは、かつてはシャワー室前に監視カメラが設置されていたが、プライバシー権の侵害だと問題視され、2018年10月12日に撤去された。更に、居室外に出られるのが午前・午後の3時間ずつだけで、運動場には金網の天井が張り巡らされている。[33] 不法滞在者による犯罪2022年(令和4年)の 外国人犯罪者の日本全体の刑法犯検挙件数に占める割合は、約3.4%であり、総検挙人員は約3.0%であった。 外国人犯罪者の約39.0%(刑法犯:約6.5%、特別法犯:約54.1%)が不法滞在者であり、2015年~2020年において検挙人員に占める不法滞在者の割合が増加していたが、コロナウイルス2019感染症流行対策による入国制限により割合が減少し、2022年は約29.1%となっている。 2022年(令和4年)の 外国人犯罪者の総検挙者数の内訳では、正規滞在は6,766人(内 刑法犯:4,687人、特別法犯:2,079人)、不法滞在の犯罪者2,782人(内 刑法犯:327人、特別法犯:2,455人)である。
扇動2015年7月8日、それまでの外国人登録証から新たな在留カードへ移行する期限を迎えたが、このとき「この移行に伴い、同年7月9日以降在日は全員不法滞在者になり、強制送還される」という噂が、インターネット上に広がった[40]。この結果、法務省入国管理局に寄せられる不法滞在の通報メールが、7月から9月までで1万件程度に及び、在日朝鮮人らに関する根拠のない情報が大幅に増えた[40]。 入国管理局は受け付けを一時停止し、業務妨害等に当たらないか警察に相談し「外国人を中傷する電子メールは、通報システムの目的にそぐわず、まったく遺憾だ」としている[40]。通報メールは2004年に導入され、日本弁護士連合会は、2005年「一般市民に、不法滞在者ではないかという注意を向けさせ、外国人への偏見や差別を助長する」などと、中止を求める意見書を法務大臣宛てに提出、2015年11月、移住者と連帯する全国ネットワークが法務省に対し「差別の扇動につながる」と主張した[40]。 特別永住者が在留カードの切り替えを行わなかった場合でも在留資格の喪失はない、ただしみなし再入国許可の適応はない[41]。 脚注
関連項目
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