ラスクルーセス市全景
ラスクルーセス (西 : Las Cruces )は、アメリカ合衆国 ニューメキシコ州 南部に位置する都市。同州ドニャアナ郡 の郡庁所在地 である。人口は11万1385人(2020年国勢調査)でアルバカーキ に次ぐ州第2の都市である。
概要
ラスクルーセスはニューメキシコ州唯一のランドグラント大学 であるニューメキシコ州立大学 が本部キャンパスを置く学園都市である。同大学はラスクルーセスのほか州内の4ヶ所に分校を置いており、総学生数は23,000人に達する。また、ラスクルーセス市はシティ・マネージャーを持ちながらも市長制 を採っている。
ラスクルーセスは砂漠 地帯にあるが、市の西を流れるリオグランデ川 の水を利用した、ニューメキシコ州南部における灌漑 農業の中心地である。市の東にはオルガン山地の山が連なっている。
ラスクルーセスは年中行事の1つであるホール・エンチラダ・フィエスタでも知られている。これは地元のレストランのシェフが直径10mに達する巨大なフラット・エンチラダ(トルティーヤ を巻かずに円形のままにしておく作り方のエンチラダ )を作って振舞うものである。2004年 のフィエスタのときに作られたエンチラダは、世界で最も大きいフラット・エンチラダとしてギネスブック に登録された。通常、ホール・エンチラダ・フィエスタの数日後には南ニューメキシコ・ステート・フェアが執り行われる。
歴史
スペイン語 で「十字架 」を意味する市名の由来については諸説あるが、最も有力なのは、1830年 にメキシコ軍将軍、僧侶、4-5人の少年僧を含む9人組の旅行者がアパッチ族 に襲われた事件に由来しているという説である。このとき、ただ1人生き残った少年僧はこの地に十字架を立てた墓を作り、仲間を埋葬した。この故事によって、次第にこの地はEl Pueblo del Jardín de Las Cruces (十字架の園の村)として知られていくようになり、のちに単にラスクルーセスと呼ばれるようになったというものである。
ラスクルーセスの西に隣接するメシーラの村はドニャアナからの入植者によって1848年 に創設された。アメリカ=メキシコ国境 のすぐ北にあったドニャアナの村はグアダルーペ・イダルゴ条約 が結ばれてからもメキシコ 領への残留を希望していた。1853年 、この一帯はアメリカ合衆国 領に編入された。ラスクルーセスが正式な町となったのはそれから50年以上後の1907年 のことであった。
1916年 にホットスプリングス(現トゥルース・オア・コンシクエンシーズ )の近くに重力式のダム が完成すると、貯めた水や水力発電 で生成される電力を利用して、下流にあるラスクルーセスでは灌漑農業や都市開発が進んだ。第二次世界大戦 後には近隣のミサイル基地やアメリカ航空宇宙局 の施設の存在が地元経済を潤すようになった。現在においてもラスクルーセスは高い成長を続けている。1990年 から2000年 までの10年間において、ラスクルーセスの人口は63,124人から74,267人へと17.7%増加した。
地理
ニューメキシコ州内の位置
ラスクルーセスは北緯32度19分11秒 西経106度45分55秒 / 北緯32.31972度 西経106.76528度 / 32.31972; -106.76528 に位置している。市はエルパソ から北北西へ約70km、アルバカーキ から南へ約360kmに位置している。市の標高は1,191mで、全米で見ればかなりの高所であるが、アルバカーキより約500m、州都サンタフェ より約940m低く、ニューメキシコ州の主要都市の中では標高の低い部類に入る。アメリカ合衆国統計局 によると、ラスクルーセス市は総面積135.2km²(52.2mi²)である。このうち134.9km²(52.1 mi²)が陸地で0.3km²(0.1mi²)が水域である。総面積の0.25%が水域となっている。
ラスクルーセスの気候は冬にわずかな降雪があるものの1年を通じて乾燥しており、温暖な冬と暑い夏に特徴付けられる。冬でも氷点下に下がることは少なく、夏の日中は摂氏 35度を越える。年間降水量は200mm程度である。ケッペンの気候区分 では砂漠気候 (BW )に属し、ステップ気候 に属するサンタフェなど、ラスクルーセスよりも標高が高く、平均気温が低い州の北部よりもさらに乾燥の度合いが高い。
10階建てのウェルズ・ファーゴ・タワー。高層ビルの少ないラスクルーセスでは、このくらいの高さのビルでも「タワー」と呼ばれ得る。
ラスクルーセスの中心部には明確なビジネス街 が存在しない。これは1970年代 の再開発により、もとのダウンタウンの大部分を取り壊したためである。メイン・ストリート周辺の歴史的なダウンタウンは歩行者専用の野外ショッピング・エリア、ダウンタウン・モール造成のため、1973年 に6ブロックにわたって車両通行止めとなった。ダウンタウン・モールでは毎週水曜日と土曜日に地元の農家、芸術家、工芸家による朝市が開かれる。また、ダウンタウン・モールには商業施設、教会、ギャラリー 、劇場が集中している。
メイン・ストリートに車道を復活させる計画も持ち上がったが、コストや美観を重視する地元住民の非難に遭い、一旦は白紙撤回となった。しかし、ダウンタウン・モールの南北の門はそのときに取り壊された。さらに2005年 8月には、メイン・ストリートに対面通行の車道を復活させることを盛り込んだマスタープランが採択された。
教育
ニューメキシコ州立大学のスタジアム
ニューメキシコ州立大学 は市の南に本部キャンパスを構えている。同校はニューメキシコ州唯一のランドグラント大学 であり、アルバカーキ にキャンパスを置くニューメキシコ大学 と並んでニューメキシコ州を代表する州立大学である。同校は特に工学 と農学 の分野に力を入れている。
ラスクルーセスの公教育はラスクルーセス公立学区[1] の下にある公立学校によって支ええられている。このほか、ラスクルーセスには私立学校2校、私立幼稚園1園がある。
交通
ラスクルーセスの玄関口となる空港は西テキサスの中心都市エルパソ にあるエルパソ国際空港 である。ラスクルーセス国際空港は2005年 7月25日を最後に定期旅客便がなくなり、ゼネラル・アビエーション と呼ばれる、自家用機やチャーター機の離着陸のための空港になっている。
ラスクルーセス市の南、ニューメキシコ州立大学の近くでは2本の州間高速道路 、I-10 とI-25 が合流する。I-25はこの合流点を起点としてアルバカーキ へ通じ、ロッキー山脈 の東麓を南北に縦断する幹線である。I-10はサンベルト 地帯を横切り、大陸を東西に横断する幹線である。これらの高速道路上にはグレイハウンド のバスが走っており、ラスクルーセスからエルパソ、アルバカーキ、フェニックス 、ダラス などへのバスの便がある。
ラスクルーセスの公共交通はロードランナー・トランジットと呼ばれる路線バス でまかなわれている。ロードランナー・トランジットはラスクルーセス市内および周辺に9系統の路線を有している。
人口動態
以下は2000年 の国勢調査による人口統計データである。
基礎データ
人口: 74,267人
世帯数: 29,184世帯
家族数: 18,123家族
人口密度 : 550.5人/km²(1,425.7人/mi²)
住居数: 31,682軒
住居密度: 234.8軒/km²(608.2軒/mi²)
人種別人口構成
年齢別人口構成
18歳未満: 25.1%
18-24歳: 16.0%
25-44歳: 26.9%
45-64歳: 19.0%
65歳以上: 13.1%
年齢の中央値: 31歳
性比(女性100人あたり男性の人口)
世帯と家族 (対世帯数)
18歳未満の子供がいる: 30.4%
結婚・同居している夫婦: 42.3%
未婚・離婚・死別女性が世帯主: 15.1%
非家族世帯: 37.9%
単身世帯: 27.9%
65歳以上の老人1人暮らし: 8.9%
平均構成人数
収入と家計
収入の中央値
世帯: 30,375米ドル
家族: 37,670米ドル
性別
男性: 30,923米ドル
女性: 21,759米ドル
人口1人あたり収入: 15,704米ドル
貧困線 以下
対人口: 23.3%
対世帯数: 17.2%
18歳未満: 30.7%
65歳以上: 9.7%
出身人物
姉妹都市
ラスクルーセスは以下の4都市と姉妹都市 提携を結んでいる。
外部リンク