『マ・メール・ロワ』(仏: Ma Mère l'Oye)は、モーリス・ラヴェルが「マザー・グース」を題材にして作曲したピアノ四手連弾の組曲。また、それをベースとした管弦楽組曲およびバレエ音楽。
ピアノ連弾版
オリジナルの連弾曲は、子供好きの(しかし独身であった)ラヴェルが、友人であるゴデブスキ夫妻[注 1]の2人の子、ミミとジャンのために作曲し、この姉弟に献呈された。
1908年から1910年にかけて作曲され、1910年4月20日、パリ・ガヴォーホールで開かれた独立音楽協会(SMI)の第1回演奏会において初演された。本来はミミとジャンが弾くことを想定して作曲されたが、それでも幼い姉弟が演奏するには難しかったため、マルグリット・ロンの弟子、ジャンヌ・ルルー(英語版)とジュヌヴィエーヴ・デュロニーが演奏した。
「親指小僧」「パゴダの女王レドロネット」「美女と野獣の対話」には、原作から短文が引用・付記されている。
- 第1曲 眠れる森の美女のパヴァーヌ(Pavane de la belle au bois dormant)
- 4分の4拍子 Lent(ゆっくりと)
- シャルル・ペローの童話集『マ・メール・ロワ(マザーグース)』の「眠れる森の美女」から。
- 第2曲 親指小僧(Petit Poucet)
- 4分の2拍子 Très modéré(とても中庸に)
- 『マ・メール・ロワ』から。曲名に関しては「一寸法師」という訳があてられることもある。
- 第3曲 パゴダの女王レドロネット(Laideronnette, impératrice des pagodes)
- 4分の2拍子 Mouvement de marche(マーチのリズムで)
- ドーノワ伯爵夫人マリー・カトリーヌ(1650年頃 - 1705年)の『緑の蛇』から。パゴダとは塔を意味し、そこに住む中国製の首振り陶器人形の物語。
- 第4曲 美女と野獣の対話(Les entretiens de la belle et de la bête)
- 4分の3拍子 Mouvement de Valse très modéré(とても中庸なワルツのリズムで)
- マリー・ルプランス・ド・ボーモン(英語版)(1711年 - 1780年)の『子供の雑誌、道徳的な物語』からの「美女と野獣」に基づく。
- 評論家ロラン・マニュエルは、エリック・サティの「ジムノペディ」の影響を指摘している[1]。
- 第5曲 妖精の園(Le jardin féerique)
- 4分の3拍子 Lent et grave(ゆっくりと荘重に)
- 「眠りの森の美女のパヴァーヌ」と同じくペローの「眠れる森の美女」から。眠りについた王女が王子の口づけで目を覚ますシーン。
管弦楽版
- 編成
- フルート2(ピッコロ1持ち替え)、オーボエ2(コーラングレ1持ち替え)、クラリネット2(B♭管及びA管)、ファゴット2(コントラファゴット持ち替え)
- ホルン(F管)2
- ティンパニ、トライアングル、スネアドラム(バレエ版のみ)、シンバル、バスドラム、タムタム、シロフォン、鍵盤付きグロッケンシュピール
- チェレスタ、ハープ
組曲版
管弦楽組曲版は、連弾組曲をそのまま管弦楽編曲したもので、1911年初頭に編曲された。終曲「妖精の園」はラヴェル一流のオーケストレーションによる壮麗な大団円で全曲が締めくくられる。
演奏時間は約17分。
バレエ版
テアトル・デザール(芸術劇場)の支配人、ジャック・ルーシェ(Jacques Rouché)からの依頼により、1911年から翌1912年初頭にかけて編曲。曲順を入れ替え、新たな曲(前奏曲、紡車の踊り、複数の間奏曲)を付け加える形で編曲された。初演は1912年1月28日、ラヴェル自身の台本、ジャンヌ・ユガール夫人の振付、ガブリエル・グロヴレーズの指揮による。バレエ版は依頼主のジャック・ルーシェに献呈された。
- (間奏)
- 第1場 紡車の踊りと情景(Danse du rouet et scène)
- 「眠れる森の美女」の情景
- 第2場 眠れる森の美女のパヴァーヌ(Pavane de la belle au bois dormant)
- (間奏)
- 第3場 美女と野獣の対話(Les entretiens de la belle et de la bête)
- (間奏)
- (間奏)
- 第5場 パゴダの女王レドロネット(Laideronette, impératrice des pagodes)
- (間奏)
- 終曲 妖精の園(Le jardin féerique)
演奏時間は約27分。
関連作品
メディア
脚注
注釈
出典
- ^ アービー・オレンシュタイン、井上さつき訳『ラヴェル 生涯と作品』音楽之友社、2006年、219ページ
外部リンク